見上げても見下ろしても、ヴィンテージが並ぶ店内
“所狭し”を絵に描いたようだ。
店頭には何段にも何重にも並べられた靴。店の中にも靴はさらに壁一面にディスプレイされていて、ジャケット類は天井からも吊り下げられているし、シャツ、ネクタイ、スカーフ、セーター……とびっしり。
店の奥まで進んでみると、人がひとりギリギリ通れる通路を確保してアイテムが並ぶ。種類ごとに並べられたり、積み重ねられていたり。こんなにもアイテムが並んでいると、洋服やヴィンテージの特別なファンではなくても、ついつい手に取ってみたくなる。
2001年にオープンした『WHISTLER』。しばらくのちに、同じビル内に『chart(チャート)』という名前をつけたお店を開いて、実質的に拡張した。
入り口同士は数メートル離れているが、どちらも店頭に靴を並べていること、店内の物量がものすごいことは共通している。
『WHISTLER』は主にメンズのジャケットやボタンダウンシャツのようなジャンルとしてはトラッドが目に付く。『chart』は1階には“オールドコーチ”と呼ばれる1980年代前後に作られた「コーチ」のバッグのほか、2階にはレディースを含めアランニットセーターやワークパンツ類など『WHISTLER』よりカジュアル度が高い商品が多い。
毎月のように届く新アイテム。幅広い層が楽しめる店
扱うアイテムは1800年代のものから2000年代のものまでと幅広い。訪れる人も男女を問わず、年齢層も着こなしのテイストも様々。
「ヴィンテージや古着にあまり興味がない人も興味を持ってもらえるようなお店作りをしています」と店長さん。
買い付けを担当しているオーナーは、オープン以来、年に何度もアメリカ・東海岸に足を運んでは仕入れを行ってきた。2020年以降は渡米する機会こそ減ったものの、今もひと月に一度はかなりの量の入荷がある。
入ってきた大量のアイテムは、必要に応じて修理に出したり、ボタンをつけたり、アイロンをかけたりしてから、ジャンルやアイテムごとに整理されて店頭に並ぶ。
入り口付近にある小物類の中でも、気になるのはボックスいっぱいに入っているバンダナだ。
「どのアイテムもそれぞれコレクターがいますが、バンダナも熱心なコレクターがいるんですよ」。ブランドや年代、模様など、個性がそれぞれにあるのだとか。
シャツやジャケットなら、『ブルックス・ブラザーズ』や『ラルフローレン』などブランドごとに分かれて陳列されているものもある。
店長さん曰く「この店に来たら何かあるだろうと思って来る方も多いので、少しでも探しやすいように置いています」とのこと。スタッフさんたちはどんな特徴のあるアイテムが店内にあるか概ね把握しているというから、びっくりしてしまう。
洋服のプロやコレクターのお眼鏡にも叶う希少アイテムも
訪れる人は、性別も年齢層も様々だが、自分で着用するための服を買いに来る人から、違う目的で訪れる、いわば洋服のプロもいる。
「海外からファッションブランドのデザイナーがデザインソースとして、古着を探しにくることもよくあります」
有名ブランドのデザイナーがインタビューされている写真に『WHISTLER』で購入したアイテムが写り込んでいることも1回や2回ではないそうだ。
ヴィンテージアイテムが好きで探しにくる人もいるが、新品では手が出しにくい高級ブランドの品を、割安だからと買いに来る人もいる。新品だと10万円以上という価格が付くものもある英国製高級靴の『オールデン』や『トリッカーズ』なども3万円から5万円台が主流だ。使い込んだ靴の表情にプラスして、店がきちんとメンテナンスしていることを考えると、いい買い物になるのだろう。
最近は、パートナーの男性に連れられてきたことをきっかけに、自分用にヴィンテージアイテムを購入する女性も増えているという。
「女性でもメンズの洋服を着るようになった方もいますし、以前から探していたバッグを買う方もいますね。バッグは最高9つ同時に買った方がいましたよ」
この店を訪れたことをきっかけにヴィンテージの魅力に目覚める人がいるのも納得。高円寺でヴィンテージを探すなら、必ず訪れたい店のひとつだ。
取材・撮影・文=野崎さおり