◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 5~11月
  • 最高地点 1400m(滝の上展望台)
  • 歩行開始地点 1100m(西沢渓谷入口バス停)
  • 歩行時間 3時間55分
  • 歩行距離 約10km
スタート
西沢渓谷入口バス停
ドライブイン不動小屋の前のバス停から西沢ゲートを抜けて林道を進むとネトリ広場。

ネトリ広場
進むと右手に休業中の西沢山荘。右手に甲武信ヶ岳に登る徳ちゃん新道の入口。田部重治の文学碑あり。

三重の滝
二俣吊り橋を渡ると東沢の分岐。この先から遊歩道沿いに数々の滝や淵などを見て最奥の七ツ釜五段の滝まで1時間30分ほど。

七ツ釜五段の滝
滝から不動滝を過ぎて木道を上がって行けば滝の上展望台へ。森林軌道があったところでレールも残っている。

滝の上展望台(森林軌道跡)
右手にも森林軌道が残っているが危険なので通行止め。廃道好きが危険を顧みずに行く道。よい子は左へ。

大展望台
歩きやすい軌道跡を30分も行けば大展望台。ここから鶏冠山が望める。ネトリ広場に出てバス停へ。

ゴール
西沢渓谷入口バス停

アクセス:
[行き]新宿駅からJR中央本線特急で山梨市駅へ。山梨市駅から山梨市営バスで西沢渓谷入口バス停へ。
[帰り]西沢渓谷入口バス停から山梨市営バスで山梨市駅へ。山梨市駅からJR中央本線特急で新宿駅へ。各片道約2時間40分

山梨交通が運行しているJR塩山駅から西沢渓谷へ行くバスも出ている。9月までは土休日だけ、10月~10月下旬は毎日運行という季節運行になる。午前中の便数は2便と少ないが、時間帯によっては塩山駅から乗ったほうがいい場合もある。塩山駅か山梨駅か。予定に合わせて選ぼう。

笛吹川の上流部にある西沢と東沢は、ともに景観の優れた渓谷である。西沢渓谷は甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)の登山口にもなっている。

1960年代半ばまでは、西沢は滝や淵などが連続する険悪な渓谷だったようだが、地元の岡部重雄らが、なんと人力でこつこつと工事をして、3年がかりで遊歩道を造ったという。それから西沢は、一般の人が立ち入ることができる西沢渓谷として知られるようになった。一方、東沢には遊歩道もなく、今も原生の沢が残り、沢登りの場所として人気がある。

ちなみに明治、大正の時代にここ東沢や奥秩父を丹念に訪れた英文学者の田部重治(たなべじゅうじ)は、渓谷について「其間に湛へる流れの紺碧の色は汲めども盡きぬ深い色をもって上へ上へと続いて居る」(「笛吹川を遡る」)と書いている。

彼は東沢を何度か遡上しているのでその印象だと思うが、西沢を流れる水の色も同じく、今でいうコバルトブルー。びっくりするほどきれいなこの色には、少し説明が必要で、30年前ほどのガイドブックには「西沢の上流部で鉱毒を含むために藍色に白色が混じった独特な色をしている」と書かれている。西沢の奥には銅が採れた鉱山があったという話もあるので、あながちウソではないかも。

前置きが少々長くなった。さっそくバス停から西沢渓谷へ突入である。ネトリ広場から今は営業していない西沢山荘を過ぎて二股吊り橋を渡る。ここの右手の沢が東沢。鶏冠山(とさかやま)や甲武信ヶ岳へと通じるルートだ。一般客というか、観光でも訪れる西沢渓谷だが、こちらは進入禁止となっている。

吊り橋を渡ると道は狭くなり、階段を上がると最初の滝が現れる。大久保の滝だ。そして次は滝を正面から見られる観瀑台のある三重の滝の前に立った。最初の衝撃が押し寄せた。

「なんという色なんだ、これは」

川底の花崗岩と光の性質で、このコバルトブルーに。そして味付けに少々の鉱毒か。しかしこの色を見ると、鉱毒なんか多少混じっていてもくそくらえだ。

西沢渓谷前半部に現れる3段に落ちる三重の滝。遊歩道を下りた観瀑台から。最初に、この水の色にびっくりする。
西沢渓谷前半部に現れる3段に落ちる三重の滝。遊歩道を下りた観瀑台から。最初に、この水の色にびっくりする。

西沢の澄んだコバルトブルーに衝撃を受けて、さらに上流へと向かう。途中にクサリ場なども出てくるので注意しよう。なにせ西沢の景観が美しいものだから、つい見とれてしまい滑落する人もいるそうだ。

三重の滝の先、渓谷に沿って遊歩道がつけられているが、岩場なので要注意。沢に見とれすぎて落ちる人もいる。
三重の滝の先、渓谷に沿って遊歩道がつけられているが、岩場なので要注意。沢に見とれすぎて落ちる人もいる。

フグ岩、人面洞、竜神の滝などを過ぎてクサリのついた岩場の道を上がりきると、下方に貞泉の滝。これがまたすごい。スケールでは七ツ釜五段の滝にはかなわないが、上方から見える角度がいいのか、素晴らしいというしかない。西沢では一番のお気に入り。見とれすぎて滝壺に落ちないようにクサリをつかみながら下りる。

有名な七ツ釜五段の滝手前にある貞泉の滝。一枚岩を落ちる滝で、滝壺が素晴らしい。
有名な七ツ釜五段の滝手前にある貞泉の滝。一枚岩を落ちる滝で、滝壺が素晴らしい。
貞泉の滝の上部の景観。
貞泉の滝の上部の景観。
後半部にあるカエル岩を手前から。岩が3匹の親子ガエルに見えるというが、かなりの想像力が必要かもしれない。
後半部にあるカエル岩を手前から。岩が3匹の親子ガエルに見えるというが、かなりの想像力が必要かもしれない。

西沢の最奥部、最後に見える七ツ釜五段の滝へと着いた。滝壺が連続してある、これまた素晴らしい滝というか滝壺である。ちょっと似ていると思ったのが奥多摩にある海沢渓谷の三ツ釜の滝だが、こちらはスケールがまるで違う。渓谷から急坂を上がり、上部の森林軌道跡へ出るまでに何度も振り返った。

渓谷の一番奥にある滝が、この七ツ釜五段の滝。西沢渓谷のシンボルのような圧巻の滝だ。 七つの滝壺が珍しい。
渓谷の一番奥にある滝が、この七ツ釜五段の滝。西沢渓谷のシンボルのような圧巻の滝だ。 七つの滝壺が珍しい。

森林軌道跡は1933年から1968年まで活躍した森林鉄道の跡。全長36km、塩山駅まで木材を運んでいた軌道だ。塩山への下りはブレーキ操作だけ、登りは馬でトロッコ2台を引き上げたという。現在もレールが残っている箇所もある。右手は通行止めで、左手の軌道跡沿いの道を辿ってスタート地点に向かった。

森林軌道跡のコース上に大展望台があるが、そこから見える鶏冠山。東沢からルートがあるが、難度の高い岩峰。
森林軌道跡のコース上に大展望台があるが、そこから見える鶏冠山。東沢からルートがあるが、難度の高い岩峰。

※現在、滝見橋本橋手前から黒金山登山道入口展望台まで、令和3年6月14日の大雨による落石等のため通行止めの状態。損壊している滝見橋本橋を迂回する、仮設歩道の利用が可能だ。(2022年5月現在)

山歩きメモ

5月のシャクナゲの時季や10月中旬から11月上旬の紅葉の時季はかなり賑わう西沢渓谷だが、冬季は一転危険な道となる。遊歩道が凍結するので、12月から4月の後半までは冬季閉鎖となる。観光レベルなら立ち入らないほうが無難。

アドバイス

遊歩道にはクサリやロープが随所につけられているので、それほど心配はないが、滑りやすい箇所もあるので、それなりの靴を履きたい。景色に見とれて滑落する人もいるので十分注意したい。

みとみ笛吹の湯

途中下車して帰りのひと風呂を

西沢渓谷から山梨駅に向かう途中にある市営の温泉施設。時間があれば途中下車して寄ってみては。広い露天風呂が気持ちよい。泉質は高アルカリ性の天然温泉。施設内に食事処などはないが、休憩所で持ち込みの物を飲食できる。

●10:00~19:30、510円(市内在住者は300円)。火曜休、笛吹の湯バス停すぐ。☏0553-39-2610

ドライブイン不動小屋

西沢渓谷の玄関口に美味しいよもぎ餅あり

標高1400m付近の高地で採った安心安全なよもぎで作られている。
標高1400m付近の高地で採った安心安全なよもぎで作られている。

西沢渓谷の玄関口にみやげ物屋&食堂がある。ドライブインという名称だけで歴史が感じられるが、渓谷の奥にあった不動小屋がこちらのほうへ移転してきたという。名物は、写真の自家製よもぎ餅。弁当なども売っているのでハイキング前に。

 

●9:00~17:00、不定休。西沢渓谷入口バス停すぐ。☏0553-39-2256

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ』より