ビジネス街の神田を選んだ理由は家族愛
コンクリート打ちっぱなしの3階建てビルで、白い暖簾(のれん)が目印のコーヒースタンド。神田駅西口からは多町大通りを3分ほど歩き、神田セントラルホテルの先の細い路地を左に曲がると、突き当たりに店がある。
店主の滝本祐未(ゆみ)さんは無類のコーヒー好き。大学卒業後、自家焙煎のコーヒー豆専門店に就職し、コーヒーに関する知識や店舗運営のノウハウを習得。2017年11月にオープンした。
「私は三姉妹の末っ子で、姉二人と母親に手伝ってもらい、みんなで店を切り盛りしてます。それぞれ家庭がありますから、土・日を休みにしたくて」と祐未さん。そこで、注目したのが神田だった。ビジネス街だけに平日は多忙を極めるが、週末は人出がぐっと減る。週末に休んでも影響は少ないという判断だった。
「結局、第2・4土曜も営業してますが……」と祐未さんは苦笑いするが、深い家族愛が伝わってくる。
店の広さは約4坪。暖簾をくぐると正面にカウンターがあり、その奥がキッチン。窓辺には小型の直火式焙煎機が置いてあり、限られたスペースを上手に使いこなしている。2階に4席ほどのイートインもあるが、基本的にはテイクアウトが多いようだ。
テイクアウト豆はブレンドと週替わりなど6種前後
この店の焙煎機は1度に最大1kgのコーヒー豆を焙煎できる。「少なすぎるのもよくないですが、半分の500gで焙煎しています」と祐未さん。1日10回前後と焙煎回数は増えるが、納得の一杯のためには妥協できない。
コーヒーの生豆は、南米、アフリカ、アジアのスペシャリティコーヒーを商社から仕入れている。スペシャリティコーヒーとは生産国や農園が特定でき、栽培から収穫、選別までの品質管理が徹底され、欠点豆が極めて少ないものをさす。
こうした豆から毎週1つを選んだものが店主おおすめのコーヒーで、さっぱり(中炒り)とちょっと濃いめ(中深炒り)に焙煎する。これに定番の瀧本珈琲ブレンドとシングルオリジン豆(単一農園で生産された豆)2~3種が、テイクアウトできるメニューだ。
この日のシングルオリジン豆はミナス・カタリーナ(ブラジル)、バラオラ・ボロ(ドミニカ)、ウエウエ・スニル(グァテマラ)の3種類だった。
こむすび、スープ、限定カレーは品切れ御免で
コーヒースタンドなので、注文後に豆を挽きドリップするコーヒーはもちろん、抹茶ラテ、ほうじ茶ラテ、ココア、紅茶なども扱っている。
ユニークなのはフードメニューだ。祐未さんの「コーヒースタンドにおむすびがあってもいいかな」というアイデアから、手作りこむすびセットを始めた。
こむすびはヘルシーな新潟県産の15穀米を使用。高菜、ウメ、ワカメなど、日替わりで2種類を用意する。これに月・火曜はすいとん汁、水・木曜はとん汁、金・土曜はわんたんスープが付く。
このほか、木曜はカレーの日。野菜たっぷりのピリ辛味で、副菜2品にサラダも付く。フードは祐未さんの母親が担当するため、いずれも個数限定になる。瀧本珈琲ブレンドとのセットで1人前800円。ぜひ味わってみたい。
取材・文・撮影=内田 晃