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武田憲人
Webメディア「さんたつ」編集長。妻が埼玉県西部の出で、狭山茶と四里餠(飯能名物の大福)の味を刷り込まれ現在に至る。毎年ヨモギの時季に一家5人で草餠を手作りする。
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高野ひろし
本誌屈指の爺ライター。幼少期よりどら焼きと煎餠を交互に食べ、渋茶をすすって育った(らしい)。あんパンのあんことパンの比率には一家言あるが、あんドーナツはやや苦手。
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土屋広道
本誌編集長。いがまんじゅうなど独特なあんこ文化が残る埼玉県北部出身。幼いころから自家製あんこのぼたもちで育った。シュー皮やパイ生地を使ったあんこ菓子が好き。

あんこのごとき漆黒のある夜、あんこおやじの前に、ずらりと食品が並んだ。

土屋(以下、土): 今日はあんこトッピングの可能性を追求すべく、あんこ好きに集まってもらいまして。
高野(以下、高): 可能性は無限大!
武田(以下、武): そこまで無理に広げなくていいんじゃないの?
高 : こじ開けてでも広げて、あんこの力を見せつけましょう!
土 : (揃って) 誰に?
高 : そりゃあんた、全世界のあんこ好きの人々にですよ!
武 : 読者の皆さんじゃないの?
高 : 賢明な読者は知ってるんです。またやってるよ。バレンタインチョコの会議で(2014年2月号)、懲りてないのかって……。
土 : まぁまぁ、固いこと言わずに食べましょう。こんなにたくさん用意したんですから。
武: 用意し過ぎだと思うよ。

左から『たいやきわかば』あんこ 600g 980円。『とらや』あんペースト[こしあん]レギュラー1080円。『あんみつみはし』おしるこ餡(つぶ餡、こし餡)各470円、あんみつ餡(こし餡)470円。
左から『たいやきわかば』あんこ 600g 980円。『とらや』あんペースト[こしあん]レギュラー1080円。『あんみつみはし』おしるこ餡(つぶ餡、こし餡)各470円、あんみつ餡(こし餡)470円。

互いを牽制しつつ、試食大会がスタート!

ハッピーターンは意外と微妙

高 : ところで武田さんは、本当にあんこ好きなんですか?
武 : うちは毎年、草餅作るからね。
高 : そうなんだ! 本格派だ。で土屋さんはどうなの?
土 : いやぁ、あの、好きですよ。
高 : 怪しいなぁ。ケーキやクッキーや、おしゃれな洋菓子食べてそうだ。
土 : まぁまぁ、その話は置いといて、何からいきましょうか?
高 : まずは安全策を。最初からへこみたくないんで、しょっぱい系からスタートしましょう。
武 : さっぱり塩っていう揚げ煎餅。おいしいねぇ。このくぼみはつぶあんをのせるためにあるんだ。
土 : ハッピーターンは意外と微妙です。本来おいしいはずの粉が、あんことバッティングしてます。

ポテチにはあんペーストで、間違いなし!

高 : ポテチは完璧。だってチョコ付きの商品もあるからね。あんペーストが合うな。マスカルポーネチーズをのせると、さらに旨味が昇華します。
武 : チーズとあんこは意外と相性いいんだね。味のアクセントにもなる。
高 : チーズとつぶあんを海苔で巻いてもいい感じだなぁ。そこに黒コショウを振ると、酒の肴にもなりそう。
土 : 高野さんはコショウ好きですね。
高 : 困った時の黒コショウ。でもわさびはダメだなぁ。ラー油もいかん!

あんポテチは間違いない。販売可!
あんポテチは間違いない。販売可!
ラー油よりゴマ油だろうよ。
ラー油よりゴマ油だろうよ。

韓国海苔はダメ、じゃがりこはな~んか違う

武 : 塩は合うけど、醤油が合わない。
高 : お汁粉には塩、入れるもんね。甘いしょっぱい攻撃は最強です。
土 : ピンク色の岩塩をパラパラっとかけて、シェフの仕上げって感じ。
武 : ポテチはうまいのに、じゃがりこはな~んか違うね。
高 : なんでだろう? 野菜スティック感覚でいけると思ったんだけど。
土 : いっそポッキーみたいになってりゃいいんでしょうけど。
高 : 海苔はいいのに、韓国海苔はダメだね。油と塩で味を主張し過ぎなんだ。海苔は磯の香りだけでいい。オードブルにおけるクラッカー的な縁の下の力持ちって存在。そういやクラッカーはなかったね。
土 : だって高野さん、クラッカーは合うに決まってるでしょ?
武 : たまには合うに決まってるものも欲しくなると思うけどねぇ。

サバの水煮よりアボカドの方が合うな。
サバの水煮よりアボカドの方が合うな。

味覚の急上昇と急降下が満腹中枢を狂わす

サブレ+あんこ+マスカルポーネ=絶品!

高 : おっ、すごいのが出てきた。丸めたこしあんにグラノーラがまぶしてある! すでに商品としてありそうな。
武 : うん。これはいけるね。
土 : シナモンパウダーをかけたら……。
武 : ずるい! うますぎる。
武 : 柿ピーを砕いてまぶしてもうまそうだな。ナッツがポイントです。
高 : ココナッツサブレとマスカルポーネとあんペースト。欠点がない。
武 : お店で売ってそうな味だね。
高 : ここに黒コショウをね……。
土 : もう黒コショウ依存症ですねぇ。でもせっかく持ってきた味噌に、誰も手を出さないんですけど。
武 : 味噌をどうすりゃいいんだよ。
高 : 色は似てるけどね。白味噌ならチャレンジしてもいいけどさ。

グラノーラあんこ玉はほぼ完成形。
グラノーラあんこ玉はほぼ完成形。
美味を増幅するマスカルポーネ。
美味を増幅するマスカルポーネ。

一口で2種制覇。あんこのせ肉まんをぜひ

土 : 僕は高野さんが言ってた肉まんあんまんにチャレンジしてますが、これもいいですよ。チーズの力も借りて。
高 : 中華あんだから、ゴマっぽいものと和えたらどうかな?
武 : しないほうが幸せだと思う。
高 : とりあえずマヨネーズはダメ。
武 : でしょうね。だったらオイル漬けの青唐辛子のがよさそう。
土 : 肉まんは好きだなぁ。今回は小さめな肉まんだけど、普通サイズの肉まんを割って、中にあんこ入れて食べてみたいです。青唐辛子もありで。

そのまま食えばいいのにねぇ(笑)
そのまま食えばいいのにねぇ(笑)

高 : 次は油揚げの中にあんこかぁ。これはもうほぼたい焼きの世界だね。見た目も美しいし、たい焼き用あんこがあるから鬼に金棒だな。
武 : トースターで焼いたから、油揚げが香ばしいんだ。チーズも偉い!
土 : 青唐辛子は……。
武 : いらないよ!

マヨネーズはあんこの天敵かもしれぬ。
マヨネーズはあんこの天敵かもしれぬ。
油揚げに入れて焼くとたい焼きに。
油揚げに入れて焼くとたい焼きに。

あんこピザはあん巻き。普通にうまい!

土 : ではいよいよピザを焼きましょう。せっかくあんこの種類もあるから、クアトロ・フォルマッジみたいに。
高 : これはね、ほぼあん巻きだから絶対おいしい。あんペースト、こしあん、つぶあん、たい焼きあんこと、味と食感の違いがちゃんと出てる。
武 : おいしいね。溶けるチーズのせたら、デザートピザだよ。
高 : ピザにはビール……と言いたいけど、あんビールはダメだ、見た目以上に。麦はよくてもホップには天敵。炭酸は厳しいのかなぁ。
土 : いや、あんこハイはいけますよ。個性がない甲類の焼酎と炭酸で。

クワトロフォルマッジあんこ版。
クワトロフォルマッジあんこ版。
コロナはライムに限る!
コロナはライムに限る!

真打ち登場。あんこそばはどーだ!?

武 : 僕は微妙。だったらおとなしくあんカルピスでいい。つぶあんかな。
高 : カルピスは懐が深い。バラエティ豊かな味の商品が出るわけだ。
土 :  真打ち、あんこそばの登場です。お湯で溶いたあんこでざるそばをいただく。めんつゆは使いません。
武 : ダメだぁ~っ!
高 : さっきのグラノーラ方式ならいけるかもね。あんこを丸めて、短く切ったそばで包んで食べる。
土 : やってみますか?
高 : やってみない。

練乳アレンジ系としてのカルピス。
練乳アレンジ系としてのカルピス。
あんかけじゃなくて〝あんだけ〞そば。
あんかけじゃなくて〝あんだけ〞そば。

ご飯とあんこは合うはず! ……だが

武 : でさ、あんこ茶漬けもやるの?
土 : だっておはぎがあるんですよ。ご飯とあんこは合うはずなんです。茨城県南部には、「ぼためし(=ぼたもち)」っていうのがあるんです。

高 : おぉ~っうまい! お茶漬けの素の味だけんとこが……。
土 : ダメです。ちゃんとつぶあんを交ぜて食べてみないと。
高 : 言い忘れたけど、僕はあんこ大好きだけど、おはぎが苦手なんだ。半殺しのごはん(糯米)が嫌いなの。餠になってればいいんだけど……。
武 : それじゃあ、ただのお汁粉じゃない?
高 : んじゃ、どうぞ召し上がれ。
土 : ……。

うまい! あんこのないとこが……。
うまい! あんこのないとこが……。
ウインナーだけ食べた方がいい。
ウインナーだけ食べた方がいい。

高 : というわけで、ひと通りトッピングしてみたけど、どうかな?
武 : 思いのほかチーズが合うね。
高 : 総じてしょっぱい系がいい。お茶漬けは別として。
土 : あんペーストの守備範囲の広さにもビックリしました。
武 : でも、もういいや。
土 : これ以上食べたら危ないかも。
高 : まさに"あん殺"ですなぁ。

※使った食材は各自がちゃんと持ち帰り、必死の形相でいただきました。

 

取材・文・構成=高野ひろし 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2019年12月号より