いきものとの距離の近さが魅力!

緑豊かな元渕江公園。その一角にいきものパラダイスが口を開けている。中に飛び込めば、大水槽に目が釘(くぎ)付け。ゆらゆら泳ぐ、きらびやかな金魚たちは、綾瀬川流域が養殖の産地だった歴史に由来。水槽の端に16種の金魚が紹介されているものの「本当は35種ほどいます」と、副園長の大川尚(しょう)さんから、ハラホロヒレハレな答えが返ってきた。さらに見上げれば、トンネル網が吹き抜けの空中を渡り、運が良ければニホンリスが走り回る姿を、運が悪ければフンのお見舞いを受けるという。「うちの基本は、いのち・ふれあい・共生。いきものとの距離の近さが魅力ですから」と、大川さんはにこやかに胸を張った。

金魚の大水槽はクールスポット。
金魚の大水槽はクールスポット。
水槽の下に潜れば、魚たちのおなかも見られる。
水槽の下に潜れば、魚たちのおなかも見られる。
体長2m越えのピラルク2頭が優雅に泳ぐ。
体長2m越えのピラルク2頭が優雅に泳ぐ。

園内に暮らすのは、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類、そして昆虫。なかでも注目は、国内で2施設でしかお目にかかれぬ“グンディ”だ。サハラ砂漠北側周辺に暮らす小動物だが、その生態は分からないことだらけ。日々観察と記録を続け、昨年後半には見事赤ちゃんグンディも誕生。石山を元気に走り回る。繁殖も園の大きな使命の一つで、室内飼育のニホンリスを屋外展示してみたり、オスのカンガルーに繁殖の自信を持たせるため、空手師範代の飼育員がケンカして負けるフリをしたり。生態観察から導きだした試行錯誤の末、成功にこぎつけた例は少なくない。

だんご状態に重なる砂漠の妖精・グンディ。
だんご状態に重なる砂漠の妖精・グンディ。

大温室も見逃せない。熱帯植物がうっそうと茂るなか、無数のチョウが目の前をひらひら。楽園感炸裂(さくれつ)だ。さらに、ところどころ食草の鉢を置き、産み付けられた卵を孵化前にスタッフが回収。区民サポーターの協力を得て、成虫になるまで毎日欠かさず飼育しているという。しかも、この抜け殻をショップで販売中。まじまじと見れば、透け感あるフォルムの美しいこと。チョウの中には、長崎県対馬市の絶滅危惧種・ツシマウラボシシジミの姿も。環境省の保護増殖事業に参加し、絶滅から救うとともに、5、7、9月に大温室で特別公開。希少な姿が拝めるチャンスだ。

大温室は一年を通してチョウの楽園だ。
大温室は一年を通してチョウの楽園だ。
約50種のチョウを卵から成虫まで飼育する。
約50種のチョウを卵から成虫まで飼育する。

他にも「かわいいのその先へ」を掲げて開催されるモルモット総選挙、ゴキブリ展など意外性高き企画展も随時開催。庭園に出れば、タカの仲間のツミが庭園で水浴びしたり、昆虫ドームで小さな虫を見つけたり、ヒキガエルがのそのそ歩いていたり。「解説員がどんな質問にも答えてくれますよ」というから頼もしい。身近な愛玩動物と触れ合い、希少ないきものに出会い、訪れるたび、いきものの神秘と生命力に驚かされる。

観察眼が生きる手作り展示

13時からのテッポウウオのエサやりは必見だ。
13時からのテッポウウオのエサやりは必見だ。

展示はスタッフのアイデアが満載。元渕江公園で採取した枝打ちの老木をニホンリスの屋外施設に取り入れ、グンディの空間にモルタルで固めた石山を据えるなど、手作り。「設置した滑り台で一度も遊んでくれず、泣く泣く撤去したこともあります」と話すが、「いきものの幸せが一番ですから」と、よりよい生活空間へのアップデートを重ねている。テッポウウオやリクガメのエサやり時に行う生態解説も楽しい。

岩山や枯れ木などの資材は元渕江公園から。
岩山や枯れ木などの資材は元渕江公園から。
ゆらゆらぷかぷかのミズクラゲの世界は幽玄。
ゆらゆらぷかぷかのミズクラゲの世界は幽玄。

生物園らしいユニークさに胸ズキュン

グンディのぬいぐるみ1650円は実物サイズ(下)、ボールチェーン付き(上)は1100円。
グンディのぬいぐるみ1650円は実物サイズ(下)、ボールチェーン付き(上)は1100円。

2階ショップは1000種を超えるアイテムが満載。「生物園お土産研究会」を区内のモノづくり企業と立ち上げ、生物園職員の独創的アイデアを形にしたオリジナルもあって売り切れゴメンも続出だ。人気はグンディのぬいぐるみで、岩を俊敏に走る筋肉の筋、平たくて丸い耳、尻尾のパヤパヤまで見事に再現。食草と共にスタッフが描いたいもむしハンカチも愛らしや。ぬけがらシリーズにはヘビもある。

ハンカチいもむしコレクション450円。
ハンカチいもむしコレクション450円。
チョウ(オオゴマダラ)のサナギのぬけがら400円。
チョウ(オオゴマダラ)のサナギのぬけがら400円。

『足立区生物園』詳細

住所:東京都足立区保木間2-17-1/営業時間:9:30~17:00(夏休み期間中は~17:30、11~1月は~16:30、最終入場は閉園30分前)/定休日:月/アクセス:東武鉄道スカイツリーライン竹ノ塚駅東口から徒歩20分

取材・文=林さゆり 撮影=山出高士
『散歩の達人』2026年9月号より