散歩日和の空
「統計的に“散歩日和”が多いのは初夏(5・6月)と秋(9・10月)。今の時季はおすすめです」と佐々木さん。まずはその際に見られる代表的な雲を挙げてくれた。ちなみに天気予報で耳にする「雲一つない青空」が見られるのは年間たったの30日ほどで、それも冬場に多いという。今後夏にかけては雲を楽しむのが吉、のようだ。
状況にもよるが、雲は概して移ろいやすく、ほんの数十分で、“○○に見える”雲もその姿を変えてしまう。おだやかな空に浮かぶかわいらしい綿雲、青空に浮かぶ海の上ならではの細長い雲など、時と場所に応じて、その刹那的な姿を探し、愛でてみるのもいいかもしれない。
すじ雲
うろこ雲
ひつじ雲
西の空の観察眼を鍛え、雨を味方につけるべし
初夏から夏にかけて、東京を含む関東では降水量が増える時季。攻略法はというと、「まずは西の空を見ることです。次の天気がわかります」。目視できる範囲の天気は、明日、いや数十分、数時間の我が身。「空は西から東へと移り変わる」という大前提をわきまえることが重要だ。晴天時、西にかなとこ雲と呼ばれる積乱雲を見つけたら豪雨の知らせ。一旦退避を。しかし雨の前兆は、彩雲やハロ(太陽や月を中心とした光の輪。暈か さ)などレア空が現れるチャンスでもある。
一方で悪天候時、西が明るくなれば、晴れは間もなく。虹やグラデーションの美しい夕焼けが狙えて……。と、目まぐるしく変わる空は、いつだって見どころだらけ。西の空の観察眼を鍛え、雨を味方につければ、さまざまな空に出合うことができるだろう。
夏の季節に注目の空
かなとこ雲
彩雲(さいうん)
虹
夕焼け
探してみたい空
層雲
ハート型の雲(積雲)
わた雲
「地震雲など科学的な根拠のない名前がつき恐れられているものもありますが、そもそも“雲”という字は空に浮かぶモヤモヤしたものを表した象形文字。変わった雲を見つけたらラッキーという感覚で、身近にポジティブに感じてほしいです」と佐々木さん。
季節や空の移ろいを感じ、自分の好きな雲を探しに外へ出る。そんな時間もいいかもしれない。さあ、見上げてごらん、今の空を。
取材・文=町田紗季子(編集部) 写真提供=佐々木聡美
『散歩の達人』2020年6月号より