羽ばたくツルに見守られて過ごす『愛花夢(あいかむ)』【六町】
喫茶店でアルバイトをしながら腕を磨いた、マスターの髙井邦克さん。1983年の開業時は高校を卒業したばかりだった。「学生服のまま友達とよく集まっていた喫茶店があって、そこのナポリタンが好きだった」そうで、「自分も店を開くと話したら厨房を見せてくれたんです」。思い出の味をもとに独自に工夫したナポリタン850円は、炒めたケチャップの香ばしさと酸味、タマネギの甘みが鍵。ちなみに、店の規模に対して照明が多いのは「電気関係の会社を営んでいた父が張り切っちゃって」。ツルのオブジェも以前は後ろに電気があり、後光が差しているみたいだったとか。
『愛花夢』店舗詳細
誰もがくつろげる実家のような安心感『蘭蝶』【綾瀬】
1987年に改装された当時の雰囲気を保ち、趣あふれる店内。アイドルのMVやドラマのロケ地にも頻繁に選ばれ、聖地巡礼の若者に「写真、撮ってあげるよ!」と率先して声を掛けているのは、長年通う常連客だ。「新しいお客さんを、地元の人たちが一緒に歓迎してくれる。両親から引き継いで長年やってきたけど、自分の店がこんなに愛されていたんだと最近になって実感していますよ」とうれしそうな、2代目の岡田辰夫さん。定食メニューに焼魚定食(納豆付き)950円を加えたのは「肉ばっかりじゃなくて、魚も食べてもらいたいから」と、お客思いな一面もステキ。
『蘭蝶』店舗詳細
常連客にとってまるで生活の一部『千住宿 珈琲物語』【北千住】
自家焙煎の豆を使い、ハンドドリップでコーヒーを淹(い)れるマスターの望月章雄さん。背後には色とりどりのカップが並び、そのうち40客以上は、陶芸教室に通う望月さんの力作だ。23歳のころ、喫茶店をオープンするために家族と共に浅草から北千住へ。マスターとしてはまだ若く、「手伝ってくれていた母が店主だと間違われたものです」と照れ笑いする。酸味が少なく深みのある一杯を求め、「毎日、朝と夕方に来てくれる常連さんもいます」。プラムのレアチーズケーキなど、望月さんが手作りするスイーツはマイルドブレンドと相性バッチリ。ケーキセット1100円。
『千住宿 珈琲物語』店舗詳細
今も昔もお客への愛情たっぷり『喫茶智恵』【綾瀬】
「母の名前が智恵子でした」と現店主の関根一明さん。「1968年に母が始めて、数年後には近くで銭湯をしていた父が夕方から蝶ネクタイを締めてスナックをやるようになりました」。両親亡き後「常連さんが来てくれるから」と、一明さんが自分の仕事を続けつつ日曜日に店を開けるように。「ママにしょっちゅう叱られた」と懐かしむ、古参客の声が温かく染みる。調理師でもある一明さんが腕を振るう本日のカレー980円は、カボチャとレンコンのカレー、モツカレーなどアイデアがユニークだと評判。「一部の方にはカレー屋だと思われてるみたいです」とにっこり。
『喫茶智恵』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2026年9月号より






