旧朝香宮邸内の照明に焦点を当て、アール・デコの様式美に迫る

『東京都庭園美術館本館』大広間照明。
『東京都庭園美術館本館』大広間照明。

国の重要文化財に指定されている旧朝香宮邸(現・『東京都庭園美術館』本館)。その邸宅空間を、意匠や技法、素材など、毎年異なるテーマで紹介する建物公開展が開催されている。

1920年代に滞在中のフランス・パリで当時全盛期だったアール・デコの様式美に触れ、魅せられた朝香宮夫妻。帰国後に最先端の技術と最高級の素材を用い、アール・デコの精華を積極的に取り入れて建設した自邸が朝香宮邸である。フランスの装飾美術家アンリ・ラパンが主要な部屋の室内装飾を手がけ、宮内省内匠寮の技師らが全体の設計を担い、日仏のデザインが融合する形で完成した。

天井や壁面に据えられた照明は、旧朝香宮邸の室内空間において特に印象的な要素。こだわりの材質やディティールがあしらわれた照明器具の多くは、この邸宅のために制作された。

2024年の建物公開展はこの照明がテーマ。各室の照明に関する解説、資料を通して旧朝香宮邸の魅力に迫るとともに、同時代のランプ類を展示する。

また、普段は作品保護のため閉じられている本館窓のカーテンを開け放ち、自然光を感じる空間で宮邸時代の家具や調度を用いて当時の様子を再現し、タイムトリップ気分を味わえる。

広報担当者は、「昭和8年(1933)に竣工した旧朝香宮邸の魅力を紹介する、年に一度の建物公開展です。本展では、各室の照明に関する解説、資料を通して旧朝香宮の魅力に迫るとともに、同時代のテーブルランプやフロア・ランプなどを展示。秋の季節、やわらかな光を放つ灯りのもとで心に染み入るひと時をご堪能ください」と語った。

竣工時からの改変はわずかで、当時の様子を良好な状態で伝える建物内をじっくり見学できる貴重な機会。普段はできない写真撮影を楽しめるのもうれしい。

『東京都庭園美術館本館』次室 香水塔。
『東京都庭園美術館本館』次室 香水塔。
『東京都庭園美術館本館』 姫宮寝室前廊下照明。
『東京都庭園美術館本館』 姫宮寝室前廊下照明。
『東京都庭園美術館本館』大客室シャンデリア ルネ・ラリック『ブカレスト』。
『東京都庭園美術館本館』大客室シャンデリア ルネ・ラリック『ブカレスト』。

だれもが気兼ねなく来館できるプログラム、フラットデーも

「ゆったり鑑賞日」や「ベビーアワー」を設定

全体の入館人数を制限し、普段よりも空いた環境で鑑賞できる一日「ゆったり鑑賞日」を10月9日(水)10~18時に設定。車椅子の人や介助が必要な人も安心して過ごすことができる。また普段はベビーカーを使うことができない本館も、ベビーカーのまま入館できる「ベビーアワー」を10月23日(水)10~15時に設けている。観覧には事前のオンラインチケット予約・購入が必要。当日販売なし(ただし障害者手帳をお持ちの人、小学生以下の子供、各種割引が適用される人、無料対象の人は予約不要)。

詳細はHP内の「フラットデーのご案内 」 (teien-art-museum.ne.jp)へ。

展覧会関連ワークショップ たてもの文様でつくる「あかり」

講師に造形作家の下中菜穂氏を迎え、館内に潜むさまざまな文様を切り紙にして「あかり」を作るワークショップが10月13日(日)に10時30分~13時、14時30分~17時の2回開催。お手製の小さなランタンを持って館内を巡ってはいかがだろう。『東京都庭園美術館』新館ギャラリーにて。定員各回30名(公式HPより事前申し込みが必要)。参加費無料(ただし当日有効の展覧会チケットが必要)。

開催概要

「建物公開2024 あかり、ともるとき」

開催期間:2024年9月14日(土)~11月10日(日)
開催時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
休館日:月(9月16・23日・10月14日・11月4日を除く)・9月17日(火)・24日(火)・10月15日(火)・11月5日(火)
会場:東京都庭園美術館(東京都港区白金台5-21-9)
アクセス:JR・私鉄・地下鉄目黒駅から徒歩7分、地下鉄南北線・三田線白金台駅から徒歩6分
入場料:一般1000円、大学生・専門学校生800円、中学生・高校生・65歳以上500円
※小学生以下および都内在住中学生は無料。障害者手帳をお持ちの方とその介護者2名は無料。第3水曜日は65歳以上無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏ 050-5541-8600
公式HP https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/240914-1110_lookingatarchitecture/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=東京都庭園美術館