森下『山利喜』~継ぎ足し続けられる煮込み大鍋に、フレンチの隠し味~
北千住『大はし』、月島『岸田屋』、そして森下の『山利喜』が「東京三大煮込み」と呼ばれていることは、酒場好きの間では有名だ。居酒屋研究家、太田和彦さんが提唱した説が定番化したもので、ここに立石『宇ち多゛』と門前仲町『大坂屋』を加えると「東京五大煮込み」となる。30代になり、それまでの「酔えればいい」という飲みかたから、徐々に酒場自体の味わいに目が向きだした頃から、少しずつではあるけれど、名店へ巡礼のような気持ちで訪れる飲みかたもするようになった。とはいえ、当時はまだ会社員だったから、人気店の口開けに合わせて気ままに飲みに行くようなことはできない。一店一店を大切に、数年をかけてついに五大煮込みをすべて味わえた時は、大きな達成感と感動があった。