ADF
犠牲の上に成り立つ果てしない饗宴、なぜ私たちはそれを「美しい」と感じるのか?
Yuqi Shinohara《0 degrees Celsius》2017
ADF(NPO青山デザインフォーラム)は、アート展「ADF Art Gallery Project」の29回目として、動物と人間の関係をモチーフに、私たちの感性に問いを投げかけるアーティスト篠原唯紀(Yuqi Shinohara)の個展「FROZEN SUPERMARKETS」を2024年9月28日(土)から10月12日(土)まで開催いたします。
Yuqi Shinohara《ブロイラールーム / Broiler Room》2024
篠原唯紀は、私たちの生活が他の生物(とくに食物としての動物)を犠牲にして成り立っていることをテーマに作品を制作してきました。「FROZEN SUPERMARKETS」というタイトルも、人間が動物を消費し続ける構造が止められないことを象徴しています。本展で発表される作品は、篠原が音楽活動を通じてクラブカルチャーと密接に関わりながら得た感覚を、自身のテーマと重ね合わせることで制作されました。「音止めなし」のDJやバレエのピルエットなどが回り続けるのを良しとするように、何度でも再生される音楽は、くり返される輪廻転生をも連想させます。
Yuqi Shinohara《無題》2024
Yuqi Shinohara《round and round》2024
篠原の作品は、一見すると「美しく」仕上げられていながら、動物由来の素材が使用されているなど、残酷な一面を併せもちます。それは、「美」という漢字の成り立ちが「大きく肥えた羊」だと言われているように、あるいは「美」という概念や感覚の背後に、犠牲にされる動物の姿が潜んでいる可能性を示唆するようでもあります。
Yuqi Shinohara《All behind the scenes》2014
Yuqi Shinohara《All behind the scenes》2014
Yuqi Shinohara《Banquet》2016
Yuqi Shinohara《The Lonely Funeral on Thanksgiving》2015
本展は、美術批評家・飯盛希をゲストキュレーターとして迎え、篠原の作品を論理的な思考を脱却する新しい感性の可能性として提示します。「美」と「醜」の矛盾する要素を結びつけた表現方法は、「右」や「左」といった両極端を二項対立とするのではなく、むしろ表裏一体のものとして括り直す回路になりえるのではないでしょうか。
近年、私たち人間と動物との関係については、食の問題にとどまらず、ウールや毛皮などをつかった装飾品や皮革製品の使用、ペットショップや動物園のありかたに至るまで、様々な議論が行われています。「ヴィーガン」など、動物を消費しないライフスタイルを表す様々な概念も生まれていますが、篠原は、作品を通じて特定の立場を賛美することはせず、むしろ言葉にしないために作品を制作しているのかもしれません。
展示初日には、井波吉太郎(アーツ前橋学芸員)をゲストとして迎え、トークイベントも行われます(28日17:00~)。本展は入場無料ですので、是非お気軽にお立ち寄り下さい。
篠原唯紀 / Yuqi Shinohara プロフィール
篠原唯紀 / Yuqi Shinohara
1991年生まれ。2014年、広島市立大学芸術学部を卒業後、渡米。ニューヨーク・ブルックリンを拠点に制作。Q.i の名義でミュージシャンとしても活動し、自身のインディーズバンド Milk Talk は、2023年11月にフルアルバムをリリース。花澤香菜《タイムマシーンは突然に》や、オンラインゲームFortnite、Maison Kitsune 秋冬コレクションへの楽曲提供を行うなど、時代の感性を反映したレトロなエレクトロファンクの作風は、国やジャンルの境界を超えて親しまれている。
音楽関連のアートディレクターとしても活躍しており、Mili《Grown-up's Paradise》、バンドじゃないもん!《ゴッドソング》、ポップしなないで《魔法使いのマキちゃん》などのMV監督、でんぱ組.inc《商売繁盛!元祖電波屋!》や King & Prince《なにもの》、SKY-HI《To the First》などの美術を担当したほか、キズナアイの作詞・衣装デザイン、ウタの「NHK紅白歌合戦」ステージデザインや『ONE PIECE FILM RED』ワールドプレミアで行われた「UTA LIVE in 日本武道館」の演出などを手がけている。
Instagram: https://www.instagram.com/q.imusic
篠原唯紀 個展「FROZEN SUPERMARKETS」開催概要
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