NPO法人山村エンタープライズ
岡山県山間部にあるひきこもり支援施設「人おこしシェアハウス」で、地域通貨を活用した支援プログラムが効果を発揮している。就労に悩む若者の「身近なやりがい喚起」をねらった取り組みだ。

ひきこもり支援に活用されている地域通貨「HOPE」。人気のブレックファスト・カフェは、4HOPE。
生きづらさを抱える若者が自分らしく人生を謳歌できるコミュニティ作りを目指す、ひきこもり支援施設「人おこしシェアハウス」(所在地:岡山県美作市田殿2921/運営:NPO法人山村エンタープライズ/代表理事:能登大次)では、「身近なやりがい」を喚起するための支援プログラムの一環として2023年4月より地域通貨を導入。約2年間の運用を経て見えてきた「ひきこもり支援 x 地域通貨」の成果を報告したい。
*「人おこしシェアハウス」ウェブサイト:https://hito.sanson.asia/
(1)ひきこもり支援施設で流通する地域通貨「HOPE」とは

シェアハウスで流通する地域通貨「HOPEコイン」
シェアハウス入居者に配布される「HOPEウォレット」
人おこしシェアハウスで流通する地域通貨「HOPE(Hito Okoshi Petit Economy=人おこしプチ・エコノミー)」は、直径3cmの木製コイン。
2023年4月から支援プログラムの一つとして導入してから約2年間、シェアハウス内で流通し、入居者の間で活用されている。
HOPEは、料理当番などシェアハウス内の役割を果たすことで手に入れることができ、
- ちょっと豪華な朝食を食べる
- スイーツやカフェラテを楽しむ
- 体調不良で料理当番を交代してくれたシェアメイトにお礼を
など、施設内で様々な用途に使用可能だ。
*地域通貨「HOPE」は、当施設に入居している若者のモチベーション喚起を目的とする「活動記録」であり、収益性のあるものではありません。
(2)「就労」に悩むひきこもり当事者
シェアハウスにやってくる多くの当事者にとって、
「働きたいけど働けない・・」
「アルバイトを始めても、どうしても続かない・・」
など、就労は極めて大きなハードルである。
にもかかわらず、実際には、無理な就職活動を続けたり、就労生活を続けることで、心身に取り返しのつかない支障をきたしてしまうようなケースも少なくない。
そのため、ひきこもりの若者に対する就労支援は、本人の心身の状態や体力、経験値などを鑑みて、慎重に進める必要があり、高いハードルに無理な挑戦をさせることは、禁物である。
(3)生活の中に「身近なやりがい」を

約20人分の食事を作る責任ある仕事(1 HOPE)
清潔で快適な住環境をキープする大切な仕事(1 HOPE)
そこで、共同生活の中で発生する身近なタスクに、小さな見返りがもらえる仕組みを作ることで、社会での本番(=アルバイト、就職)の一歩手前に、「小さなやりがい」を喚起しようと考えた取り組みが、地域通貨「HOPE」だ。
具体的には、下記のタスクを果たすことで「HOPE」を受け取ることができる。
- 料理当番(週2回) 1HOPE
- 掃除当番(週1回) 1HOPE
- 朝の清掃活動(毎朝) 1HOPE
(4)共同生活を「楽しく」「豊かに」する使い道

事務局長が毎週木曜日の朝、腕を振るう。コンセプトは「テンションの上がる朝メシ」
おしゃれ好きの女性スタッフによるネイル・サービス。メイクやヘアアレンジのアドバイスも。

「ばえる」お菓子作りが趣味の常勤事務スタッフが不定期開催する人気のカフェ
事務所に常設。手土産でいただく全国のお菓子を、いつでも気軽に購入できる
一方で、HOPEの使い道は、
・「わしのブレックファスト・カフェ」(事務局長担当) 4 HOPE
・「森のスイーツ・カフェ」(常勤スタッフ担当) 1~2 HOPE
・「Total Beauty Salon de 美代」(パートスタッフ担当のネイルやヘアメイクのアドバイス) 4 HOPE
・「The Guitar Work Shop」(パートスタッフ担当のギター教室) 3 HOPE
・「Aya's Head Spa Salon」(パートスタッフ担当) 4 HOPE
・「ワンコイン菓子屋」(無人販売) 1 HOPE
など、スタッフが特技を生かしてサービスを提供する。
女性入居者に人気なのが、気心知れたスタッフとネイルを楽しんだり、ヘアアレンジやメイクのアドバイスをしてもらえるサービス。
長年ひきこもりを経験してきた女性には、メイクやファッションなどの外観にコンプレックスを抱いている当事者が多く、それが一歩を踏み出すことをためらわせる障壁の一つになっていることも少なくない。その長年のコンプレックスを、身近なスタッフと一緒に楽しく克服できるサービスだ。
また朝食は「食べない」「パンを焼くだけ」など、適当に済ませる入居者が多い中、本格的なイタリアンが朝から食べられる「ブレックファスト・カフェ」も人気だ。
さらに、最寄りのコンビニまで徒歩1時間のシェアハウスにおいて、気軽に手に入るスイーツ類は大変重宝され、スタッフが手作りの焼き菓子を持参すると、入居者がHOPEを握りしめて次々に事務所に顔を出す。
上記以外の用途では、仲間同士でのちょっとした「お礼」として利用することもできる。
・体調不良で当番を交代してくれたシェアメイトへのお礼としてHOPEを
・バス停まで車で送迎してくれたシェアメイトへのお礼としてHOPEを
などが活用事例だ。
*飲食物は施設の住人にのみ提供されるものであって、施設外の不特定多数に対して提供されるものではありません。
*入居者によって使用されたHOPEは、事務局が回収し、スタッフ個人の報酬になるものではありません。また回収されたHOPEを換金することや金銭的価値のあるものに交換することはできません。
(5)「ごっこ」で社会参加のハードルを下げる

「ごっこ」だからこそのハードルの低さがねらい。
ただし、これらすべてにおいて金銭の授受はない。あくまでも「ごっこ」の範囲に過ぎないが、そのハードルの低さこそが地域通貨導入の狙いでもある。
低いハードルで、
・自分にできる役割で、小さな見返りを手に入れる
・その見返りで、ちょっとだけ生活が楽しくなる
という「ぷち社会参加」の経験を積むことができるからだ。
「ごっこ」までハードルを下げることで、社会参加を身近なところに引き寄せようという試みだ。
(6)シェアハウスの日常に根付くHOPE
地域通貨導入から約2年。
今や入居者たちからは、
「ブレックファスト食べたいけどHOPEが足りないので、今週あと1回はがんばって朝の清掃に参加します」
「来週帰省するので、火曜日の当番、HOPEで交代お願いできますか」
といった会話が日常的に聞こえてくる。
NPO事務所の片隅にオープンしている「ワンコイン菓子屋」に、毎日通う入居者もいる。
ただそれは、スタッフから「厚意でいただいたお菓子」ではない。
「HOPE」という木製のコインを経たことで、「自分が果たしたタスクの対価として」彼らが堂々と手にすることができる立派な「報酬」となったのだ。
(7)現役の若者が過疎地域に約40人定住

40人弱の若者が、少子高齢化の美作地域に移り住み、生活している。
生きづらさを抱えた若者たちが、自分らしく人生を謳歌できる、そんなコミュニティづくりを目指す「人おこしシェアハウス」の取り組みは、2025年で10年目となる。
歴代の入居者(1ヶ月以上滞在者)は100名を超え、その多くは市外・県外からの移住だ。そしてシェアハウス卒業後もこの美作地域に留まって生活しているOB・OGは、いまや19名を数える。現入居者を加えると、約40名のコミュニティだ。
少子高齢化の影響が顕著な当地域では、地域企業の若手人材不足が年を追って深刻化している。
そんな中、若者約40名が地域で暮らし、そして少なくともその半数以上が、いまや自らの課題を乗り越え、地域企業の戦力として活躍している。
若者は「居場所」を見つけ、地域は「担い手」を確保する。
岡山の山間部で始まった、地域と若者のWin-Winの関係。
今後も、地域通貨「HOPE」を始めとした様々な取り組みを通じて、若者たちが自分らしく人生を謳歌できるコミュニティの実現を目指す、「人おこしシェアハウス」の取り組みに期待していただきたい。
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