「こんなに好きになることは二度とない」。特別な存在だった彼が、幸せだったことを願った
ようやく書けそうな心境になったので書くが、昨年(2023年)の春、ある友人が癌で亡くなった。その友人・祐樹(仮名)は2歳年上で、私が17歳のとき、全身全霊で惚れた相手だ。当時は祐樹のことが好きで好きで感情がおかしくなり、恋心を通り越して彼のことを神格化していた。彼は特別な存在で、それに気づけた私もまた、彼のそばにいていい存在なのだと思い込んでいた。「こんなに好きになることは二度とない」とJ-POPの歌詞のようなことを思ったが、実際、その後はゆるやかに信頼関係を築くような恋愛が多く、あれほどまでに恋に狂ったのは祐樹が最初で最後だ(今のところ)。とは言え、それは20年以上前の話だ。喉元過ぎれば熱さを忘れるというが、祐樹に恋していた事実は覚えているものの、当時の感情はもう鮮明ではない。だからか、彼が亡くなったと聞いてもさほど痛みはなかった。ただ、彼が自分の人生に満足していたらいいな、と思った。