自律神経がジェットコースターのようになる旅?

東京出身、大阪住み2年半。ここ2年この時期に「旅の手帖WEB」で原稿を書かせてもらっているが、2026年もその機会が訪れた。今回誘われたのは関西近隣ではなく、北信州と妙高への旅。

私にとって大阪から信州へ、のアプローチが新鮮であり、即決で参加申し込み。

行程をチラリ確認すると、私の頭には「クラフトビール→ジン→日本酒→朝風呂→座禅→精進料理……」と間違ってはいないが、正確でもない情報がインプット。交感神経⇔副交感神経がジェットコースター、な旅になりそうだ、と当日を楽しみに待ったのであった。

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クラフトビールとエコパーク【長野県山ノ内町】

ビールと温泉の素敵なマリアージュ

信州牛スノーバーガー(ポテトフライ付き)1380円。
信州牛スノーバーガー(ポテトフライ付き)1380円。

大阪駅からサンダーバードと北陸新幹線を乗り継いで4時間弱、飯山駅に降り立った。

大阪より季節が一歩先へと進んだ清涼な空気に迎えられる。そして、敦賀駅での30分ほどの乗り継ぎ時間がいいクッションとなってお尻も痛くない。

さっそく、最初の目的地に向かう。『YUDANAKA BREWERY(ブルワリー)』で昼食だ。いただいたのは信州牛スノーバーガー。肉厚のパテにシャキシャキ食感のりんごスライスがいいアクセント。実に食べごたえある一品。

そうか。長野といえばリンゴだよな。酒のことばかり考えていて忘れてた。

食後、醸造所内を見学した際に、タンク内で発酵1日目のビールを飲ませてもらう。甘苦い味。少しだけアルコールが含まれている、らしい。とりあえずのアルコール欲は満たした。

ちなみにこの醸造所は、温泉旅館が「湯上がりを楽しむ」をテーマに立ち上げたもの。敷地内地下から汲み上げた雪解け水を使用。ほかの素材にも地元のものを取り入れているそうだ。

次回訪ねるときは、この地に根差した「完成品」のビールを温泉と組み合わせて楽しみたい。

醸造見学・試飲は1500円。申し込みは『YUDANAKA BREWERY』へ。
醸造見学・試飲は1500円。申し込みは『YUDANAKA BREWERY』へ。

YUDANAKA BREWERY
☎0269-33-4511
10:00~18:00(フードは~17:00LO、ドリンクは~17:30LO)
休みはHPで要確認
長野県山ノ内町佐野2578-1
長野電鉄湯田中駅から徒歩10分
https://yudanaka-u.jp

 

ユネスコエコパークに登録されている理由

次に向かったのは『志賀高原ビジターセンター』。2026年4月にリニューアルされたこの施設では志賀高原の自然環境や歴史、文化についての展示とともに、公認ガイドによるトレッキングやクラフト体験など多彩なプログラムが用意されている。

展示のなかで興味を引かれたのは「人と自然のかかわり」。この地は国立公園でありながら一部が入会山(いりあいやま)であるということ。

入会山とは地域の人たちが約束事を設けて共同で利用する山。江戸時代から続き、紆余曲折を経て現在は2つの地元財団法人が山を開発・管理しているという。

おかげで無秩序な開発がされることなく、人と自然が共生。これが認められ、昭和55年(1980)にユネスコエコパークに登録されている。よし、少し頭の体操をしたので夜の酒がうまくなりそうだ。

シアター「志賀高原ものがたり」で四季の豊かな表情を鑑賞。
シアター「志賀高原ものがたり」で四季の豊かな表情を鑑賞。

志賀高原ビジターセンター
☎0269-34-2133
9:00~16:00、無休。無料
長野県山ノ内町志賀高原 蓮池総合会館98内
長野電鉄湯田中駅からバス31分の志賀高原山の駅下車すぐ

四半世紀近くぶりの野沢温泉再訪【長野県野沢温泉村】

この旅の宿泊地は野沢温泉。スキー初心者にしてコブだらけの急斜面に慄(おのの)いた高校時代、一人旅で訪れ民宿の方と夜中まで日本酒を飲み交わした(調子にのって飲みすぎた)独身時代、それ以来20数年ぶり3度目の野沢温泉。

あの頃は若かったなぁ、勢いあったなぁ、今にも増してアホやったなぁ、と思いをめぐらせながら温泉街を歩いていくと、あの時泊まった民宿が目の前に。そしてその隣の建物が、今宵宿へ入る前の、本日最後の目的地なのだった。

満を持してのシングルモルトウイスキーが発売間近

夕闇のなか浮かび上がる『野沢温泉蒸留所』。
夕闇のなか浮かび上がる『野沢温泉蒸留所』。
ジン4種の試飲(水・氷・炭酸水込み)が1000円で楽しめる。
ジン4種の試飲(水・氷・炭酸水込み)が1000円で楽しめる。

『野沢温泉蒸留所』は、かつて山菜や根曲がり竹を加工していた缶詰工場の建物をリノベーションして2022年にオープン。

スキーと温泉が好きなオーストラリア人オーナーが、雪解けから50年の時を経てこの地に湧き出す超軟水に惚れ込み、蒸留所を始める。オープンからこれまでは、できる限り村近隣や国内で採れる素材を使用したジンを世に送り出してきた。

毎年1月に村で行われる道祖神火祭り(個人的に、死ぬまで一度は見に行きたい!)を讃えるために毎年限定販売される「DOSO GIN」は、アメリカの『Rolling Stone』誌でベストジンの一つとして紹介されるなど、世界的評価も得ているのだ。

そして2026年11月、満を持してシングルモルトウイスキーが発売される。試飲すると丸くやさしい飲み口。私も角の取れた人間になりたいものだ、そんな想いとともに味わった。

2026年11月6日発売のシングルモルトウイスキー「Barrel Hall Series(バレル ホール シリーズ)」。700ml 1万3200円。
2026年11月6日発売のシングルモルトウイスキー「Barrel Hall Series(バレル ホール シリーズ)」。700ml 1万3200円。

野沢温泉蒸留所
☎0269-67-0270
12:00~19:00(日曜は10:00~18:00、ジンの試飲とカクテルバーは~18:30LO〈日曜は~17:30LO〉)
火・水休
長野県野沢温泉村豊郷9394
北陸新幹線飯山駅からバス25分の野沢温泉[中央ターミナル]下車、徒歩7分
https://nozawaonsendistillery.jp

 

結局最後は“飲ミュニケーション”

今宵の宿は、中央ターミナル横にある『くつろぎの宿 池元』。源泉かけ流しの内湯を24時間楽しめる。

夕食は野沢菜ときのこづくし。地元観光局が商品企画し、雪が消えた頃から初雪が降るまでの期間、コスパよく季節ごとの地元の味覚を味わえる「旬を食べつくす“ケの日”宿泊プラン」の夕食を特別に用意してもらった。次々と料理が並べられる。

これだけ食べれば、いくら飲んでも酔わない自信がある。地元の方から差し入れられた地酒。なかでもお気に入りは飯山の「水尾」辛口吟醸。すっきりフルーティーな味が野沢菜をはじめとした料理と必然の好相性。ガッツリ飲ませていただきました!

さらに、これで終わらないのが野沢温泉。“飲ミュニケーション”健在の野沢温泉。食後は地元の方に誘われ、温泉街のラーメン屋で二次会。生ピーマンかじりながらの生大2杯でこの日を締めた。

「旬を食べつくす“ケの日”宿泊プラン」の夕食。さらに数品追加された。
「旬を食べつくす“ケの日”宿泊プラン」の夕食。さらに数品追加された。

くつろぎの宿 池元
☎0269-85-2209
1泊2食(1名)1万1000円~
泉質/単純硫黄泉
長野県野沢温泉村豊郷9603
北陸新幹線飯山駅からバス25分の野沢温泉[中央ターミナル]下車すぐ
https://nozawa-ikemoto.com

※「旬を食べつくす“ケの日”宿泊プラン」(1万3000円)は『くつろぎの宿 池元』では実施なし。ほかの複数の宿(民宿・ペンション)で提供中。問い合わせ・申し込みは、野沢温泉マウンテンリゾート観光局へ。
☎0269-85-3353
https://nozawakanko.jp

湯の中でひとりつぶやく

威風堂々な『松葉の湯』。1階階段前には玉子用の温泉もあり。
威風堂々な『松葉の湯』。1階階段前には玉子用の温泉もあり。

翌朝は6時起床。二日酔いもなし、絶好調!

前夜宿に帰り、内湯で軽く湯を浴びてから寝たのだが、せっかくの野沢温泉、外湯も楽しみたい。温泉街には13の外湯がある。そして、温泉街のシンボル「大湯」以外のそれらには、それぞれ干支(えと)がふってある。

前日に「どこに入ろうか迷ったら、自分の干支の湯へ」と教えられていたので、「子(ね)」の『松葉の湯』へ。

早朝の男湯は貸し切り状態。周辺の住民が当番制で掃除をしてくださっているため、脱衣所も浴室も清潔に保たれている。

源泉かけ流しの湯は目が覚める熱さ。まずは遠慮せずに水道の蛇口をひねり、風呂桶で湯と水1:1に割ったものを十数回かけ湯する。そして片足ずつ……。

数回トライしたあと、全身浸かることができた。肌がピリつく。関西の温泉ではあまり出会わない硫黄のにおいに包まれる。懐かしい。湯の中で一人「ただいま」とつぶやく。

『松葉の湯』の浴室。源泉の温度は90度だ。
『松葉の湯』の浴室。源泉の温度は90度だ。

松葉の湯
5:00~23:00(12~3月は6:00~)
無休、無料
泉質/単純硫黄泉
長野県野沢温泉村豊郷9477
北陸新幹線飯山駅からバス25分の野沢温泉[中央ターミナル]下車、徒歩5分

寺町歩きと豪雪地ならではの手しごと【長野県飯山市】

白さは雪のプレゼント

2日目最初の目的地は飯山だ。まず立ち寄ったのが『飯山手すき和紙体験工房』。

300年を超えてこの地に受け継がれる伝統工芸品の内山紙。原料の楮(こうぞ)を雪上にさらすことで、自然な白さと色褪せしない紙ができる。これも雪国の知恵だ。はがきサイズ1枚210円で紙すき体験もできるのだそう。

一日200枚作るのが限界という内山紙の紙漉き。
一日200枚作るのが限界という内山紙の紙漉き。

飯山手すき和紙体験工房
☎0269-67-2794
9:00~17:00
月(祝の場合は翌日)と年末年始休
長野県飯山市飯山1439-1
北陸新幹線飯山駅から徒歩10分

※体験の問い合わせ・申し込みは、信州いいやま観光局へ。
☎0269-62-3133
https://www.iiyama-ouendan.net

寺町で精神世界にととのう

続いては「飯山ふるさと案内人」と寺町歩き。

飯山は中心市街地西側の丘陵地に20もの寺が並ぶ寺町。江戸期に飯山城を守るためのクッションとして時の藩主が寺を普請したのだとか。現在はそれらを結ぶ寺めぐり遊歩道が整備されている。

そして、寺町歩きの最後には「ととのいの時間」。寺町北端近くに位置する大聖寺(だいしょうじ)での座禅体験だ。住職が指導してくれる。

体の硬い私は両足を腿の上にのせる正式なスタイルは無理。「片足だけでもいいですよ。それもつらい方はイスを用意しますよ」

やさしい、住職! お言葉に甘えて片足腿のせスタイルに半眼で、15分間の座禅。3回ほど意識が飛びかける。反省を込めて警策で叩いていただき終了。ととのいました。

座禅後のご褒美は住職お手製の精進料理を試食。料理もできるんですね、住職! 車麩の唐揚げが美味だった。

座禅後にいただいた精進料理。通常メニューは料理9品で4000円。座禅体験は1000円。
座禅後にいただいた精進料理。通常メニューは料理9品で4000円。座禅体験は1000円。

大聖寺
☎0269-62-2598
長野県飯山市飯山神明町3177
JR飯山線北飯山駅から徒歩5分

※各種体験の問い合わせ・申し込みは信州いいやま観光局へ。
☎0269-62-3133
https://www.iiyama-ouendan.net

 

地響きとマイナスイオンを浴びる【新潟県妙高市】

旅も終盤に入り、新潟県の妙高市へ。

日本の滝百選の「苗名滝(なえなたき)」を見学。遊歩道に沿って吊り橋を2つ渡り滝へ近づく。落差55m、雨が続いたあとのため、この日の水量は多いそう。別名、地震滝。その名のとおり、水音が地響きのようだ。

紅葉にはちと早かったが、大量のマイナスイオンを浴び、ここでもととのう。

苗名滝の壮大な景色。
苗名滝の壮大な景色。

苗名滝
新潟県妙高市杉野沢
えちごトキめき鉄道妙高高原駅からバス27分の杉野沢西野下車、徒歩40分

地元風味の新食感

写真は黒・赤・緑にプレーンのtamamenを加えた特別メニュー。現在メニューをリニューアル中のため、tamamenを食べたい方は要問い合わせ。
写真は黒・赤・緑にプレーンのtamamenを加えた特別メニュー。現在メニューをリニューアル中のため、tamamenを食べたい方は要問い合わせ。

昼食は『寿し芳』で、上越妙高の自然を練り込んだ麺をいただく。その名は「妙高うどんtamamen」。

黒は野草炭、赤はかんずり、緑は青のりと色彩豊かな一品。食感はうどん、そば、冷麺の中間くらいか。オンラインショップでも購入できる。

寿し芳
☎0255-72-0124
11:30~13:30・17:30~21:00LO
月休
新潟県妙高市田町1-5-1
えちごトキめき鉄道新井駅から徒歩7分
https://www.niigata-sushiyoshi.com

 

晩酌の友をゲット

いよいよ最後の目的地は、上越が誇る郷土発酵食のかんずり本社売店。巨大「唐辛子像」が迎えてくれた。

かんずりとは、妙高産の唐辛子と糀(こうじ)、柚子、食塩を原料に3年以上熟成・発酵させた旨辛味調味料。冬期に塩漬けの唐辛子を雪ざらししてアクを抜く。ここでも豪雪を巧みに利用しているのだ。

鍋やおでんのおともにした経験はあったが、ワサビ代わりとして刺身にも合うらしい。日々の晩酌を豊かにしてくれる一瓶を購入した。

カップラーメンの味さえ、ふくよかにしてくれる。かんずり小47g648円。
カップラーメンの味さえ、ふくよかにしてくれる。かんずり小47g648円。

かんずり本社売店
☎0255-72-3813
8:30~17:30
日・祝休(土不定休)
新潟県妙高市西条437-1
えちごトキめき鉄道新井駅から徒歩15分
https://www.kanzuri.com

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自然と共生する地で、そのさまざまな恵みを五感で味わわせてもらった2日間。

地元の方々が言っていた「温泉だけじゃないんだよ」が、よく理解できた。いろんな意味で、ととのいました!

酒は飲んでも飲まれるな、も実践できた。私も大人になりました!

2027年夏には、JRグループと地元が共催の「信州デスティネーションキャンペーン」が開催される。キャッチフレーズは「知ってほ信州」。その呼びかけに、ひと足先にこたえることもできました!

取材・文・撮影=前川ツルコフ