目にも口にもおいしい豊かな褐色の秋
シュー、ボコボコッ。後生掛(ごしょうがけ)自然研究路を歩くと、あちこちで煙が噴き、泥湯の湧く音が聞こえる。
「秋田と岩手を横断する山岳道路が八幡平アスピーテライン。アスピーテとは、楯を伏せたような形の火山という意味で、このあたりは火山地帯なんです」と『後生掛温泉』の女将・阿部愛恵さん。
こちらの宿の湯は、後生掛自然研究路の噴気孔、オナメ・モトメから源泉を引く。「湧出量は測定不能」らしいが、大浴場の火山風呂や打たせ湯でドバドバと流れる温泉に、その湧出量のすごさを想像できる。
地熱や蒸気で床を温め、その上のゴザに寝転ぶことで温浴効果を得られるのがオンドルもえぎ。30度以上の部屋に入っただけで汗が噴き、寝転ぶとじわじわと温まる感覚に、火山のパワーを実感!
鹿角の人のパワーとやさしさに惹かれて定住を決めた、大阪府出身で『燻製屋猫松』の松村託磨さん。
「最初は地域おこし協力隊として3年間のつもりでした。ただ鹿角は元鉱山の町でむかしから人の往来が多く、よそから来た人にもやさしいし、他地域の文化にも寛容。ずっと住みたいと思いました」
坑内員たちの晩酌酒を醸造していた場所が、『旧関善酒店(せきぜんしゅてん)』。尾去沢(おさりざわ)鉱山の閉山とともに酒蔵も閉業したが、いまも主屋は見学できる。
「最盛期は350万坪の土地を所有する大商家でした。主屋は明治38年(1905)に焼失してしまったのですが、その年の酒造りに間に合わせるため11月に再建。それだけ山や木材を持っていたということですね」と管理・運営を務めるNPO法人関善賑わい屋敷の勝山さゆりさん。
『ホルモン幸楽』の、安くて栄養価の高いホルモンもまた坑内員たちに愛され、市民のソウルフードに。会長の中島聖恵(きよえ)さんは「プルコギをヒントに、ジンギスカン鍋でホルモンを焼く方法を祖母が考案。鍋の縁に溜まるピリ辛ダレをご飯にかけてもおいしいし、うどんに絡めても抜群ですよ」と笑う。
喜寿を過ぎ、地元果実を使うジェラート店の『フルフルッタ』を開業した米田敦子さんは、クラウドファンディングにも挑戦した。
「鹿角は農産物が本当に豊か。農業に携わる若い世代がもっと増えるよう、今後も活動を続けていきたいです!」
『旧関善酒店』2階から見ても美しい圧巻の木組み
高さ10m以上ある主屋の吹き抜けは木組みが壮観。豪雪時も歩きやすい軒下通路“こもせ”では、花輪朝市や週末フリマを開催する。カフェスペースもあり、各種スイーツに加え、市日限定で比内地鶏だしのうどん・そば各500円も!
☎0186-23-7799
10:00~17:00(11~3月は~16:00)
木(3と8が付く「花輪朝市」開催日の場合は翌日)休
500円
秋田県鹿角市花輪上花輪85
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩11分
『とうふ処 奈良亀』ひと口目は醤油をつけず濃厚な風味を
創業は大正4年(1915)。2022年からすべての豆腐を手作りに切り替えた。それによって濃い豆乳を作れるようになり、甘みと大豆の風味が豊かな豆腐に。その場でおいしさを堪能できる食堂も、2023年にオープン!
☎0186-23-2516
10:00~18:00(食堂は11:30〜14:00)
木休
秋田県鹿角市花輪下花輪76
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩13分
『後生掛温泉』山の力を浴びるような湯でポッカポカ
後生掛自然研究路の噴気孔から引いた源泉をかけ流し。気泡が噴き出す火山風呂や、美肌効果を期待できる泥湯で湯力を実感! 夕食はきりたんぽ鍋などの郷土料理のほか、旬の野菜のジュレといった彩り豊かな料理も。
☎0186-31-2221
1泊2食1万9000円~
23室
泉質/単純硫黄泉
日帰り入浴/10:30~14:00受付、不定休。800円
秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林内
JR花輪線鹿角花輪駅から完全予約型送迎車ドラゴン号(※)57分の後生掛温泉下車すぐ
(※)ドラゴン号はHP(https://www.con-vigore.jp)または電話(☎090-2449-2419)で利用2日前の16時までに要予約。鹿角花輪駅〜後生掛温泉は2500円
『ホルモン幸楽 花輪本店』坑内員たちが愛したスタミナ食
毎朝さばく新鮮な豚・牛のホルモンを味噌ベースのタレに絡め、ジンギスカン鍋で焼く。「昭和26年(1951)の開業時に祖母が作ったタレのレシピは一切変えていません」と会長の中島聖恵さん。旨味を吸った豆腐やキャベツも絶品!
☎0186-23-3736
9:00~21:30LO
無休
秋田県鹿角市花輪堰向5
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩6分
『フルフルッタ』かぶりつけば完熟果実そのもの
代表の米田敦子さんは直売会の代表経験が20年以上あり、誰が何をいつ作っているかを知りつくす。「だからこそ農家さんの作った旬の果実を大切にしたい」と、名産のリンゴや“かづの北限の桃”を使ったジェラートも味わい濃厚。
9:00~16:00
不定休
秋田県鹿角市花輪新田町11-4 道の駅かづのあんとらあ内
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩14分
「後生掛自然研究路」火山のエネルギーを散策路から間近に
後生掛温泉の源泉でもあるオナメ・モトメや、噴煙が沸き上がる紺屋地獄、周囲約1㎞の大湯沼など、舗装された散策路から“活きている”火山活動を観察できる。10月中旬まで補修工事のため一部通路は通行止め。
散策自由
11月中旬~5月中旬休
秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林内
JR花輪線鹿角花輪駅からドラゴン号(※)57分の後生掛温泉下車すぐ
(※)ドラゴン号はHP(https://www.con-vigore.jp)または電話(☎090-2449-2419)で利用2日前の16時までに要予約。鹿角花輪駅〜後生掛温泉は2500円
取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年10月号より







