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旅の手帖 2026年10月号
旅の手帖 2026年10月号
いい山の近くには、いい温泉がある。紅葉も温泉もハイキングも、さらにおいしいものまで、全部楽しむよくばり旅へ。特集2は、旅先の自由度を大きく広げてくれるサイクリング♪

目にも口にもおいしい豊かな褐色の秋

後生掛自然研究路から八幡平の山並みを遠望。
後生掛自然研究路から八幡平の山並みを遠望。

シュー、ボコボコッ。後生掛(ごしょうがけ)自然研究路を歩くと、あちこちで煙が噴き、泥湯の湧く音が聞こえる。

「秋田と岩手を横断する山岳道路が八幡平アスピーテライン。アスピーテとは、楯を伏せたような形の火山という意味で、このあたりは火山地帯なんです」と『後生掛温泉』の女将・阿部愛恵さん。

こちらの宿の湯は、後生掛自然研究路の噴気孔、オナメ・モトメから源泉を引く。「湧出量は測定不能」らしいが、大浴場の火山風呂や打たせ湯でドバドバと流れる温泉に、その湧出量のすごさを想像できる。

地熱や蒸気で床を温め、その上のゴザに寝転ぶことで温浴効果を得られるのがオンドルもえぎ。30度以上の部屋に入っただけで汗が噴き、寝転ぶとじわじわと温まる感覚に、火山のパワーを実感!

10月上~中旬、後生掛自然研究路の紅葉が見頃に。
10月上~中旬、後生掛自然研究路の紅葉が見頃に。
泥を肌になじませることで温湿布と美肌効果を期待できる『後生掛温泉』の泥湯。
泥を肌になじませることで温湿布と美肌効果を期待できる『後生掛温泉』の泥湯。

鹿角の人のパワーとやさしさに惹かれて定住を決めた、大阪府出身で『燻製屋猫松』の松村託磨さん。

「最初は地域おこし協力隊として3年間のつもりでした。ただ鹿角は元鉱山の町でむかしから人の往来が多く、よそから来た人にもやさしいし、他地域の文化にも寛容。ずっと住みたいと思いました」

坑内員たちの晩酌酒を醸造していた場所が、『旧関善酒店(せきぜんしゅてん)』。尾去沢(おさりざわ)鉱山の閉山とともに酒蔵も閉業したが、いまも主屋は見学できる。

「最盛期は350万坪の土地を所有する大商家でした。主屋は明治38年(1905)に焼失してしまったのですが、その年の酒造りに間に合わせるため11月に再建。それだけ山や木材を持っていたということですね」と管理・運営を務めるNPO法人関善賑わい屋敷の勝山さゆりさん。

専用の小屋で4日間も燻いぶした『燻製屋猫松』の燻り大根漬け600円、燻りナッツ850円など。鹿角市内の道の駅などで販売。
専用の小屋で4日間も燻いぶした『燻製屋猫松』の燻り大根漬け600円、燻りナッツ850円など。鹿角市内の道の駅などで販売。
『燻製屋猫松』代表の松村託磨さん。「香りが芳醇で日本人にもなじみ深い桜のチップで燻製しています」。
『燻製屋猫松』代表の松村託磨さん。「香りが芳醇で日本人にもなじみ深い桜のチップで燻製しています」。

『ホルモン幸楽』の、安くて栄養価の高いホルモンもまた坑内員たちに愛され、市民のソウルフードに。会長の中島聖恵(きよえ)さんは「プルコギをヒントに、ジンギスカン鍋でホルモンを焼く方法を祖母が考案。鍋の縁に溜まるピリ辛ダレをご飯にかけてもおいしいし、うどんに絡めても抜群ですよ」と笑う。

喜寿を過ぎ、地元果実を使うジェラート店の『フルフルッタ』を開業した米田敦子さんは、クラウドファンディングにも挑戦した。

「鹿角は農産物が本当に豊か。農業に携わる若い世代がもっと増えるよう、今後も活動を続けていきたいです!」

大日堂の名前で親しまれる大日靈貴(おおひるめむち)神社。約1300年の歴史をもつとされる大日堂舞楽を、毎年1月2日に社殿内で奉納。
大日堂の名前で親しまれる大日靈貴(おおひるめむち)神社。約1300年の歴史をもつとされる大日堂舞楽を、毎年1月2日に社殿内で奉納。
『とうふ処 奈良亀』のおからドーナツ(奥)150円はやさしい甘み。
『とうふ処 奈良亀』のおからドーナツ(奥)150円はやさしい甘み。
一周徒歩約40分の大沼自然探勝路も紅葉の名所。後生掛自然研究路に近く、見頃もほぼ同じ。
一周徒歩約40分の大沼自然探勝路も紅葉の名所。後生掛自然研究路に近く、見頃もほぼ同じ。
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『旧関善酒店』2階から見ても美しい圧巻の木組み

「見学ご希望の方は中で建物の特徴をご案内します」と、ここで働く勝山さゆりさん。
「見学ご希望の方は中で建物の特徴をご案内します」と、ここで働く勝山さゆりさん。
間口は約27mで「木組みは釘を一本も使わない免震構造です」と勝山さん。
間口は約27mで「木組みは釘を一本も使わない免震構造です」と勝山さん。

高さ10m以上ある主屋の吹き抜けは木組みが壮観。豪雪時も歩きやすい軒下通路“こもせ”では、花輪朝市や週末フリマを開催する。カフェスペースもあり、各種スイーツに加え、市日限定で比内地鶏だしのうどん・そば各500円も!

☎0186-23-7799
10:00~17:00(11~3月は~16:00)
木(3と8が付く「花輪朝市」開催日の場合は翌日)休
500円
秋田県鹿角市花輪上花輪85
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩11分

家主が使っていたケヤキの一枚板のそろばんなど、貴重な商売道具や民具を展示。
家主が使っていたケヤキの一枚板のそろばんなど、貴重な商売道具や民具を展示。
酒粕入りの花輪ばやしジェラート400円。
酒粕入りの花輪ばやしジェラート400円。

『とうふ処 奈良亀』ひと口目は醤油をつけず濃厚な風味を

甘みの強い大豆・ミヤギシロメを使い、敷地内に湧くクセのない軟水で仕込む4代目の奈良正意(まさい)さん。
甘みの強い大豆・ミヤギシロメを使い、敷地内に湧くクセのない軟水で仕込む4代目の奈良正意(まさい)さん。
もめんときぬごしは各250円。
もめんときぬごしは各250円。
肉豆腐や寄せ豆腐などを味わえる奈良亀とうふ定食1500円。
肉豆腐や寄せ豆腐などを味わえる奈良亀とうふ定食1500円。

創業は大正4年(1915)。2022年からすべての豆腐を手作りに切り替えた。それによって濃い豆乳を作れるようになり、甘みと大豆の風味が豊かな豆腐に。その場でおいしさを堪能できる食堂も、2023年にオープン!

☎0186-23-2516
10:00~18:00(食堂は11:30〜14:00)
木休
秋田県鹿角市花輪下花輪76
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩13分

『後生掛温泉』山の力を浴びるような湯でポッカポカ

加水控えめで濃厚な湯を楽しめる神経痛の湯。
加水控えめで濃厚な湯を楽しめる神経痛の湯。
夕食の一例。
夕食の一例。

後生掛自然研究路の噴気孔から引いた源泉をかけ流し。気泡が噴き出す火山風呂や、美肌効果を期待できる泥湯で湯力を実感! 夕食はきりたんぽ鍋などの郷土料理のほか、旬の野菜のジュレといった彩り豊かな料理も。

☎0186-31-2221
1泊2食1万9000円~
23室
泉質/単純硫黄泉
日帰り入浴/10:30~14:00受付、不定休。800円
秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林内
JR花輪線鹿角花輪駅から完全予約型送迎車ドラゴン号(※)57分の後生掛温泉下車すぐ

(※)ドラゴン号はHP(https://www.con-vigore.jp)または電話(☎090-2449-2419)で利用2日前の16時までに要予約。鹿角花輪駅〜後生掛温泉は2500円

天然蒸気で温まる箱蒸し風呂。
天然蒸気で温まる箱蒸し風呂。
併設の「ごしょカフェ」では、自家製ソーセージを竹炭パンで挟んだ八幡平ポーク黒ドッグのセット1200円を提供。
併設の「ごしょカフェ」では、自家製ソーセージを竹炭パンで挟んだ八幡平ポーク黒ドッグのセット1200円を提供。
女将の阿部愛恵さん。「9月下旬から八幡平山頂より紅葉が徐々に下りてきます」。
女将の阿部愛恵さん。「9月下旬から八幡平山頂より紅葉が徐々に下りてきます」。

『ホルモン幸楽 花輪本店』坑内員たちが愛したスタミナ食

ホルモン2人前780円、キャベツ260円、豆腐一丁330円。
ホルモン2人前780円、キャベツ260円、豆腐一丁330円。
「尾去沢鉱山の方々の口コミでお店の評判が広がりました」と聖恵さん。
「尾去沢鉱山の方々の口コミでお店の評判が広がりました」と聖恵さん。

毎朝さばく新鮮な豚・牛のホルモンを味噌ベースのタレに絡め、ジンギスカン鍋で焼く。「昭和26年(1951)の開業時に祖母が作ったタレのレシピは一切変えていません」と会長の中島聖恵さん。旨味を吸った豆腐やキャベツも絶品!

☎0186-23-3736
9:00~21:30LO
無休
秋田県鹿角市花輪堰向5
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩6分

『フルフルッタ』かぶりつけば完熟果実そのもの

フレーバーは18種。甘酸っぱいイチゴとみずみずしい桃のソルベなどダブルは600円。
フレーバーは18種。甘酸っぱいイチゴとみずみずしい桃のソルベなどダブルは600円。
米田さん(中)をはじめ、スタッフには現役農家も。
米田さん(中)をはじめ、スタッフには現役農家も。

代表の米田敦子さんは直売会の代表経験が20年以上あり、誰が何をいつ作っているかを知りつくす。「だからこそ農家さんの作った旬の果実を大切にしたい」と、名産のリンゴや“かづの北限の桃”を使ったジェラートも味わい濃厚。

9:00~16:00
不定休
秋田県鹿角市花輪新田町11-4 道の駅かづのあんとらあ内
JR花輪線鹿角花輪駅から徒歩14分

「後生掛自然研究路」火山のエネルギーを散策路から間近に

噴湯・噴気の活動が盛んな大湯沼。秋は乳青色の水面と紅葉の対比が美しい。
噴湯・噴気の活動が盛んな大湯沼。秋は乳青色の水面と紅葉の対比が美しい。
泥湯がボコボコと沸き上がるマッドポットも点在!
泥湯がボコボコと沸き上がるマッドポットも点在!

後生掛温泉の源泉でもあるオナメ・モトメや、噴煙が沸き上がる紺屋地獄、周囲約1㎞の大湯沼など、舗装された散策路から“活きている”火山活動を観察できる。10月中旬まで補修工事のため一部通路は通行止め。

散策自由
11月中旬~5月中旬休
秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林内
JR花輪線鹿角花輪駅からドラゴン号(※)57分の後生掛温泉下車すぐ

(※)ドラゴン号はHP(https://www.con-vigore.jp)または電話(☎090-2449-2419)で利用2日前の16時までに要予約。鹿角花輪駅〜後生掛温泉は2500円

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取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年10月号より

栃木との県境近くにあり、面積の約80%が国有林の福島県天栄村。鳳坂(ほうさか)峠より東の地域にはおいしいお米や野菜の育つ田園が広がり、峠から西は良質な温泉が豊富に湧く。村を旅すれば、これぞ日本の田舎!という宝のような風景が待っていた。
龍野藩の城下町として栄え、江戸時代から昭和初期の町家や蔵が残る、龍野の重要伝統的建造物群保存地区。その東に流れる揖保川(いぼがわ)の恩恵を受け、うすくち醤油が生まれ、手延べそうめんの一大生産地となった。目と口で涼を求めて、白壁の連なる町へ。
2時間も歩けば、9つの商店街すべてを回れるほどコンパクトな群馬県前橋の街なか。シャッター街に活気をもたらす若手の出店や老舗ホテルの再生で、中心街がいま熱い。と思いきや、赤城山周辺にも新施設が続々と生まれ、地域全体の旅先の魅力が急上昇!
『アドベンチャーワールド』の人気者・パンダが返還されちゃった……南紀白浜。が、町長が原点回帰を謳い、温泉やビーチといったもともとある魅力を改めて磨き上げ。一方で、新たな施設やお店を展開する老舗も。海開きの初夏を迎える白浜が、いまおもしろい!
日本標準時の基準となる東経135度線。その経線=子午線が通り“時のまち”の愛称をもつ明石は、昼網で有名な明石浦漁港を抱える“魚のまち”でもある。ピンクの桜鯛が春の訪れを告げる明石へ。
東海道五十三次の42番目の宿場として栄え、いまもおおよそ1㎞四方のめぐりやすい範囲に史跡が点在する桑名。ハマグリをはじめ、名産品も多い美(うま)し国・三重の玄関口で“新旧のいいもん”を訪ねた。