日々の煩雑さがほどけていくおおらかな門前街
弥彦山ロープウェイとわが足で、彌彦神社御神廟のある山頂まで登る。標高634m、弥彦山山頂からは東に越後平野、西に日本海を一望できた。
「弥彦山には、県庁の防災無線や民放のTVアンテナが立っています。ここなら県内全域に電波が届くからでしょう。古の神様も弥彦山なら越後を見渡せると思い、鎮座されたのかもしれません」と彌彦神社権禰宜(ごんねぎ)の高橋孝至さん。
門前では今も、弥彦山の山頂に雲がかかると、神様が山に降りてきたという人がいるほど信心深い。
一の鳥居の近くで門前にそよぐ風を音に変えているのが、『TAKU GLASS』。多重奏の音を楽しめるくらげ風鈴や、米どころらしいおむすび風鈴が人気だ。
スタッフの軍司(ぐんじ)友里絵さんは「秋冬は縁起物・干支(えと)もののガラス製品も。お米を鏡餅形のガラス容器に入れてお供えし、鏡開きの日に中のお米をいただく『お米の入るかがみもち』もおすすめです」とニッコリ。
門前で創業65年の『酒屋やよい』は『弥彦ブリューイング』と銘打ち、2019年からクラフトビールを醸造開始。JAから規格外の枝豆やブドウを割安価格で譲り受けて副原料に使うなど、地元食材が生み出すフレーバーがおもしろい。
醸造長の姉・羽生(はにゅう)久美子さんが麦汁を煮て待っている間、代表で弟の雅克さんが山で採ってきたフキノトウを副原料に使ったふきのとうエールは——力強い苦みと香りで、つまみいらずのうまさ!
弥彦からほど近い三条市で開業し、2024年にこちらへ移転したのがチーズケーキの店『goûter(グテ)』。「三条市で育ちましたが、小さい頃、毎月父と彌彦神社・湯神社に参拝していました。燈籠まつりは昨年初めて参加しましたが、家々の軒先に提灯が灯り、彌彦神社の氏子さんがたくさんいて、村全体のお祭りなんだなと実感しました」と店主の金子陽子さん。
翌早朝は、弥彦観光協会に「一般の方も参列できますよ」とすすめられた、彌彦神社の御日供祭(おにっくさい)へ。毎朝、御祭神に米・酒・塩などを献じる祭典で、拝殿内の神前に座ると、凛とした空気に満ちる。
神職の祝詞(のりと)と、虫の声、時おり拝殿前から聞こえる参拝者の柏手以外は静寂。日々の煩雑に追われる身と昨日の深酒に疲れ気味の体が、一気に清らかになった気がした。
「越後一宮 彌彦神社」越後を開拓された、おやひこさま
御祭神は日本海を渡って住民に漁業や製塩、農業の技術を伝えたとされる伊夜日子大神(いやひこのおおかみ)。二の鳥居脇の御神木は、もともと御祭神の杖だったとも。背後の弥彦山山頂には御祭神と、その妃神の御神廟が祀られている。
☎0256-94-2001
境内自由(授与所は8:30~16:30)
新潟県弥彦村弥彦2887-2
JR弥彦線弥彦駅から徒歩15分
『四季の宿みのや』創業325年の老舗に新客室!
2023年、6階の客室が温泉露天風呂付きの「四照花(ししょうか)」にリニューアル。8階には大浴場と露天風呂を備え、男性の露天からは弥彦山が目の前に! 絶景を眺めつつ、古い角質を落とすといわれる美肌の湯を堪能したい。
☎0256-94-2010
1泊2食1万9950円~(四照花は3万950円〜)
日帰り入浴/11:30~15:00、不定休。1000円
部屋数/66室
泉質/アルカリ性単純温泉
新潟県弥彦村弥彦2927-1
JR弥彦線弥彦駅から車3分(宿泊客は送迎あり、要予約)
『弥彦ブリューイング』ゴクリのあと、弥彦食材の風味がふわり
『酒屋やよい』の羽生さん姉弟で7年前からビール造りを開始。なるべく地元の農産物・食材を副原料に使い、その個性が出る味わいに。弥彦桜酵母IPAは弥彦山に自生するヤヒコザクラの酵母を用い、フローラルな香りも!
☎0256-94-5841(酒屋やよい)
11:00~17:30
火・水休
新潟県弥彦村弥彦934
JR弥彦線弥彦駅から徒歩10分
『TAKU GLASS』門前でKAWAIIガラス発見
弥彦村の工房で、職人がガラス製品を制作。型を使わず、吹き竿で息を吹き込み成形する宙吹(ちゅうぶ)き製法のため、一品一品模様や形が微妙に違うのが味わい。花子グラス1300円ほか、やわらかなフォルムやかわいらしい雰囲気が魅力。
☎0256-78-7741
9:00~17:00
水休
新潟県弥彦村弥彦3022-4
弥彦駅から徒歩14分
「弥彦公園」晩秋の朱色を愛でながら散策
約4万坪の広さを誇る彌彦神社外苑。例年11月上~中旬は紅葉が見頃を迎え、特に一面にモミジが植えられたもみじ谷は色艶やかに。10月31日~11月30日の17:00~21:00はライトアップも行われる。
☎0256-94-3154(弥彦観光協会)
見学自由
新潟県弥彦村弥彦667-1
JR弥彦線弥彦駅下車すぐ
『goûter(グテ)』古民家の引き戸の先に濃厚ケーキ
築約100年の古民家でチーズケーキを手作り。「製法は丁寧に、味はシンプルに」を大切にし、ゴムベラで気泡を出さないようやさしく素材を混ぜたベイクドチーズケーキは、断面が美しく食感なめらか。週替わりのケーキも4種用意。
☎0256-78-8935
10:00~16:00
不定休
新潟県弥彦村麓6014
JR弥彦線弥彦駅から車6分
取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年11月号より







