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旅の手帖 2026年11月号
旅の手帖 2026年11月号
奈良は通うほどに底が知れなくなる——。ただスポットをめぐるだけではない、奈良を深く味わうための視点を提案。新しい世界遺産「飛鳥・藤原の宮都」はもちろん、日本文化の“はじまり”という切り口をベースに、一歩奥にある奈良へ案内します。

日々の煩雑さがほどけていくおおらかな門前街

彌彦神社をイメージした弥彦駅。
彌彦神社をイメージした弥彦駅。

弥彦山ロープウェイとわが足で、彌彦神社御神廟のある山頂まで登る。標高634m、弥彦山山頂からは東に越後平野、西に日本海を一望できた。

「弥彦山には、県庁の防災無線や民放のTVアンテナが立っています。ここなら県内全域に電波が届くからでしょう。古の神様も弥彦山なら越後を見渡せると思い、鎮座されたのかもしれません」と彌彦神社権禰宜(ごんねぎ)の高橋孝至さん。

門前では今も、弥彦山の山頂に雲がかかると、神様が山に降りてきたという人がいるほど信心深い。

彌彦神社の神様がお渡りになる玉の橋。
彌彦神社の神様がお渡りになる玉の橋。
弥彦山山頂付近から越後平野を一望。
弥彦山山頂付近から越後平野を一望。

一の鳥居の近くで門前にそよぐ風を音に変えているのが、『TAKU GLASS』。多重奏の音を楽しめるくらげ風鈴や、米どころらしいおむすび風鈴が人気だ。

スタッフの軍司(ぐんじ)友里絵さんは「秋冬は縁起物・干支(えと)もののガラス製品も。お米を鏡餅形のガラス容器に入れてお供えし、鏡開きの日に中のお米をいただく『お米の入るかがみもち』もおすすめです」とニッコリ。

弥彦公園のもみじ谷は、東屋横の池から望む逆さもみじが見事(写真=弥彦観光協会)。
弥彦公園のもみじ谷は、東屋横の池から望む逆さもみじが見事(写真=弥彦観光協会)。

門前で創業65年の『酒屋やよい』は『弥彦ブリューイング』と銘打ち、2019年からクラフトビールを醸造開始。JAから規格外の枝豆やブドウを割安価格で譲り受けて副原料に使うなど、地元食材が生み出すフレーバーがおもしろい。

醸造長の姉・羽生(はにゅう)久美子さんが麦汁を煮て待っている間、代表で弟の雅克さんが山で採ってきたフキノトウを副原料に使ったふきのとうエールは——力強い苦みと香りで、つまみいらずのうまさ!

弥彦からほど近い三条市で開業し、2024年にこちらへ移転したのがチーズケーキの店『goûter(グテ)』。「三条市で育ちましたが、小さい頃、毎月父と彌彦神社・湯神社に参拝していました。燈籠まつりは昨年初めて参加しましたが、家々の軒先に提灯が灯り、彌彦神社の氏子さんがたくさんいて、村全体のお祭りなんだなと実感しました」と店主の金子陽子さん。

『弥彦スイーツ』の団子。左からラムネあんや桃あんなどとチョコのキャラクターがのるカラフル団子に、桜からふる団子、ヨモギからふる団子。各2本売りで550円。
『弥彦スイーツ』の団子。左からラムネあんや桃あんなどとチョコのキャラクターがのるカラフル団子に、桜からふる団子、ヨモギからふる団子。各2本売りで550円。
『弥彦スイーツ』店長の小黒有紗さん。「月の弥彦菊まつり開催時期限定のあんをのせた団子もお楽しみに!」。
『弥彦スイーツ』店長の小黒有紗さん。「月の弥彦菊まつり開催時期限定のあんをのせた団子もお楽しみに!」。

翌早朝は、弥彦観光協会に「一般の方も参列できますよ」とすすめられた、彌彦神社の御日供祭(おにっくさい)へ。毎朝、御祭神に米・酒・塩などを献じる祭典で、拝殿内の神前に座ると、凛とした空気に満ちる。

神職の祝詞(のりと)と、虫の声、時おり拝殿前から聞こえる参拝者の柏手以外は静寂。日々の煩雑に追われる身と昨日の深酒に疲れ気味の体が、一気に清らかになった気がした。

弥彦観光協会ではEV-TトゥクトゥクUKTUKを貸し出し。60分コース4000円~、Webサイト「弥彦ぷちたび」予約フォームから前日17時までに要予約。
弥彦観光協会ではEV-TトゥクトゥクUKTUKを貸し出し。60分コース4000円~、Webサイト「弥彦ぷちたび」予約フォームから前日17時までに要予約。
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「越後一宮 彌彦神社」越後を開拓された、おやひこさま

一の鳥居は高さ約6m。
一の鳥居は高さ約6m。
大正5年(1916)再建の本殿・拝殿は、国登録有形文化財。御日供祭は3~12月の一部日程を除き、一般の参列も可能(6:50に御祈祷受付前集合)。
大正5年(1916)再建の本殿・拝殿は、国登録有形文化財。御日供祭は3~12月の一部日程を除き、一般の参列も可能(6:50に御祈祷受付前集合)。
参列者には福米を授与。
参列者には福米を授与。

御祭神は日本海を渡って住民に漁業や製塩、農業の技術を伝えたとされる伊夜日子大神(いやひこのおおかみ)。二の鳥居脇の御神木は、もともと御祭神の杖だったとも。背後の弥彦山山頂には御祭神と、その妃神の御神廟が祀られている。

☎0256-94-2001
境内自由(授与所は8:30~16:30)
新潟県弥彦村弥彦2887-2
JR弥彦線弥彦駅から徒歩15分

拝殿は東京・明治神宮も手がけた伊東忠太の設計。
拝殿は東京・明治神宮も手がけた伊東忠太の設計。

『四季の宿みのや』創業325年の老舗に新客室!

男性展望露天風呂。
男性展望露天風呂。
「2025年はカフェも開業しました」と女将の白崎陽子さん。
「2025年はカフェも開業しました」と女将の白崎陽子さん。

2023年、6階の客室が温泉露天風呂付きの「四照花(ししょうか)」にリニューアル。8階には大浴場と露天風呂を備え、男性の露天からは弥彦山が目の前に! 絶景を眺めつつ、古い角質を落とすといわれる美肌の湯を堪能したい。

☎0256-94-2010
1泊2食1万9950円~(四照花は3万950円〜)
日帰り入浴/11:30~15:00、不定休。1000円
部屋数/66室
泉質/アルカリ性単純温泉
新潟県弥彦村弥彦2927-1
JR弥彦線弥彦駅から車3分(宿泊客は送迎あり、要予約)

「四照花」は全4室ともシモンズのベッド。
「四照花」は全4室ともシモンズのベッド。
雪会席夕食の一例。市場のセリ権をもっており、鮮魚が自慢。この日は銀鮭のお造り、のどぐろの塩焼きなど。10月からは弥彦の新米も。
雪会席夕食の一例。市場のセリ権をもっており、鮮魚が自慢。この日は銀鮭のお造り、のどぐろの塩焼きなど。10月からは弥彦の新米も。

『弥彦ブリューイング』ゴクリのあと、弥彦食材の風味がふわり

代表の羽生雅克さん。「弥彦のブドウや柏崎のワサビを副原料にしたビールも醸造しています」。
代表の羽生雅克さん。「弥彦のブドウや柏崎のワサビを副原料にしたビールも醸造しています」。
先代女将のミユキさんの接客が温かいタップルーム。
先代女将のミユキさんの接客が温かいタップルーム。

『酒屋やよい』の羽生さん姉弟で7年前からビール造りを開始。なるべく地元の農産物・食材を副原料に使い、その個性が出る味わいに。弥彦桜酵母IPAは弥彦山に自生するヤヒコザクラの酵母を用い、フローラルな香りも!

☎0256-94-5841(酒屋やよい)
11:00~17:30
火・水休
新潟県弥彦村弥彦934
JR弥彦線弥彦駅から徒歩10分

伊彌彦米(いやひこまい)を使った伊彌彦エール(手前)や伊彌彦スタウト(奥)などハーフ3種飲み比べ1700円。瓶ビール330mlは各880円。
伊彌彦米(いやひこまい)を使った伊彌彦エール(手前)や伊彌彦スタウト(奥)などハーフ3種飲み比べ1700円。瓶ビール330mlは各880円。
樽生は約6種。代表の姉・久美子さんが醸造を担当。
樽生は約6種。代表の姉・久美子さんが醸造を担当。

『TAKU GLASS』門前でKAWAIIガラス発見

「グラスは飲み口を炎で炙り直してあり、口あたりやわらかです」とスタッフの軍司友里絵さん。
「グラスは飲み口を炎で炙り直してあり、口あたりやわらかです」とスタッフの軍司友里絵さん。
当たるところで音が違う、六本足のくらげ風鈴2500円など。
当たるところで音が違う、六本足のくらげ風鈴2500円など。

弥彦村の工房で、職人がガラス製品を制作。型を使わず、吹き竿で息を吹き込み成形する宙吹(ちゅうぶ)き製法のため、一品一品模様や形が微妙に違うのが味わい。花子グラス1300円ほか、やわらかなフォルムやかわいらしい雰囲気が魅力。

☎0256-78-7741
9:00~17:00
水休
新潟県弥彦村弥彦3022-4
弥彦駅から徒歩14分

「弥彦公園」晩秋の朱色を愛でながら散策

もみじ谷の紅葉と観月橋の共演(写真=弥彦観光協会)。
もみじ谷の紅葉と観月橋の共演(写真=弥彦観光協会)。
大正時代に造られた歩行者用トンネルは国の登録有形文化財。トンネル内から望む紅葉は絵画のよう。
大正時代に造られた歩行者用トンネルは国の登録有形文化財。トンネル内から望む紅葉は絵画のよう。

約4万坪の広さを誇る彌彦神社外苑。例年11月上~中旬は紅葉が見頃を迎え、特に一面にモミジが植えられたもみじ谷は色艶やかに。10月31日~11月30日の17:00~21:00はライトアップも行われる。

☎0256-94-3154(弥彦観光協会)
見学自由
新潟県弥彦村弥彦667-1
JR弥彦線弥彦駅下車すぐ

『goûter(グテ)』古民家の引き戸の先に濃厚ケーキ

「暮らしの雑貨も扱っています」と店主の金子陽子さん。
「暮らしの雑貨も扱っています」と店主の金子陽子さん。
手前からno.1と、そこにマスカルポーネを加えたno.2は定番で、1カット各600円。
手前からno.1と、そこにマスカルポーネを加えたno.2は定番で、1カット各600円。

築約100年の古民家でチーズケーキを手作り。「製法は丁寧に、味はシンプルに」を大切にし、ゴムベラで気泡を出さないようやさしく素材を混ぜたベイクドチーズケーキは、断面が美しく食感なめらか。週替わりのケーキも4種用意。

☎0256-78-8935
10:00~16:00
不定休
新潟県弥彦村麓6014
JR弥彦線弥彦駅から車6分

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取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年11月号より

岩手と青森に県境を接する“北東北のへそ”、秋田県の鹿角。物資配給など周囲の鉱山を支える商業地として栄えた市街中心部と、紅葉色づき始めた八幡平(はちまんたい)のある南部をめぐる旅へ。迫力ある火山の熱と、地元愛の深い人々の熱にほだされ、長居必至?
栃木との県境近くにあり、面積の約80%が国有林の福島県天栄村。鳳坂(ほうさか)峠より東の地域にはおいしいお米や野菜の育つ田園が広がり、峠から西は良質な温泉が豊富に湧く。村を旅すれば、これぞ日本の田舎!という宝のような風景が待っていた。
龍野藩の城下町として栄え、江戸時代から昭和初期の町家や蔵が残る、龍野の重要伝統的建造物群保存地区。その東に流れる揖保川(いぼがわ)の恩恵を受け、うすくち醤油が生まれ、手延べそうめんの一大生産地となった。目と口で涼を求めて、白壁の連なる町へ。
2時間も歩けば、9つの商店街すべてを回れるほどコンパクトな群馬県前橋の街なか。シャッター街に活気をもたらす若手の出店や老舗ホテルの再生で、中心街がいま熱い。と思いきや、赤城山周辺にも新施設が続々と生まれ、地域全体の旅先の魅力が急上昇!
『アドベンチャーワールド』の人気者・パンダが返還されちゃった……南紀白浜。が、町長が原点回帰を謳い、温泉やビーチといったもともとある魅力を改めて磨き上げ。一方で、新たな施設やお店を展開する老舗も。海開きの初夏を迎える白浜が、いまおもしろい!
日本標準時の基準となる東経135度線。その経線=子午線が通り“時のまち”の愛称をもつ明石は、昼網で有名な明石浦漁港を抱える“魚のまち”でもある。ピンクの桜鯛が春の訪れを告げる明石へ。
東海道五十三次の42番目の宿場として栄え、いまもおおよそ1㎞四方のめぐりやすい範囲に史跡が点在する桑名。ハマグリをはじめ、名産品も多い美(うま)し国・三重の玄関口で“新旧のいいもん”を訪ねた。