人形町駅A4口より徒歩3分ほど。観光客にとってもありがたい立地のホテルの2階にそのカフェはある。
「PASSAGE COFFEE NIHONBASHI」は、ホテルの宿泊客だけではなく一般の方も利用できる、ホテルフロントに隣接されたカフェ。
エリアはふたつに分かれており、B5版~葉書サイズの絵が蜜ながらも綺麗に整列したギャラリーのような、テーブル席が3つのエリア。そして、和食器やカトラリー、書籍が配置された畳の小上がりやコンセント利用が可能なベンチがぐるりと壁沿いに設置されたエリア。
レジ前で注文をするのだが、珈琲豆を選択できる。この日はケニアの「ガトンボヤAA」をチョイス。耳慣れない言葉につい惹かれてしまう性…相棒はチョコチップスコーンを。
「1℃違えばコーヒーの味わいが全く違うんです。」
「何でも美味しかったら、楽しかったらそれでいいと思います。いちばん良くないのは何もしないこと。」
というプロの温かい言葉に耳を傾けながら、温度をチェックしつつ手際よく濃い飴色の液体を操る所作に釘付けに。
畳の小上がりへ腰かけ、いざ実食。
コーヒーはジューシー、フルーティーを通り越してジューシー!
ライトな色合いそのままに、心が弾むように口の中で華やかに南国的な風味が膨らみます。なんだろう、とってもご機嫌な気分。
リベイクしてくださったチョコチップスコーンは、きちんと織り込まれた証の層が大胆なホームメイド感。このざくっとしっとりとした食感と、指に痕を残すバターの煌めきとチョコレートの足跡もまた美味しさのエッセンス。
満たされる…
幼少期、ホテルは私にとってスタートでありゴールだった。
両親が選んだ風光明媚な観光地も、地元の特産品を使用した料理がカウンターに並ぶ居酒屋も、両親には申し訳ないほど魅力は皆無。
今思えば、少し背伸びをしてでももっと満喫しておけばよかったなと仄かな寂しさも覚えるのえけれど、5、6歳だった一人っ子の私が、大人の非日常をどう楽しんだら良かったのか。
その中でやはりホテルは格別だった。
エレガントでスマートな微笑みのお姉さん達、同じような年頃の子達が興奮しておふざけしている姿、どこかで見たことあるようなキーホルダーが並ぶ売店…そして、夢のような夕食と朝食のバイキング!(部屋食や宴会場でのコース料理だった時のショックはどうぞお察しください。)
ホテルこそがワンダーランド、全てがそこではじまり完結する理想のお城。
けれど時代は変わり、ホテルは旅の中継地点もしくはセーブポイントとへと変化していく選択肢もできたような気がする。
くたびれたスニーカー諸共腰を落ち着け、世界共通の嗜好品のひとつでもある美味しいコーヒーと共に思い出を整理する。
やや疲労や緊張で張りつめていた子供たちも、腰を下せば安堵の表情。つられて私の頬もほんのりゆるむ。
PASSAGE COFFEE NIHONBASHI さんではモーニングも利用可能だとか。
何気ない一日の一食目を、あえて出発点の自宅ではなく、中継地点のPASSAGE COFFEE NIHONBASHI さんでいただくのもありかも?