一丁目から八丁目で町会で構成されている銀座という街。特にこの季節、観光客向けにメディアでクローズアップされるのは、中央通を彩るイルミネーションやブランド店の装飾。
けれども、ちょっとそこから離れた銀座と京橋の境目にあるのが銀座一丁目。

大型雑貨店などが軒を連ねる並木通りと銀座レンガ通りの間に佇む「幸稲荷神社」。なんとも縁起の良い、そして潔い名前の守り神。
以前は並木通りに鎮座していましたが、土地開発諸々の事情により移設。移設しても尚、こうして綺麗な佇まいを引き継ぐところから、銀座一丁町会の方々からの愛情や信仰心の厚さがひしひしと伝わってきます。

この反対側、銀座八丁目方面は芸者さんなどが集う芸能の街ですが、日本橋や京橋といった商人がせわしなく行き交う街と、今は無き京橋川を隔てて隣接していた銀座一丁目は商業の街だったとのこと。
特に刀や脇差等を扱う人達が多かったことから、幸稲荷神社は「太刀売稲荷神社」と呼ばれていたとか。
商売繁盛や人とのご縁を大切にする街ならではの名称だったんですね。

残念ながらいつ頃どのような経緯で太刀売稲荷神社から幸稲荷神社へと変化したのかは不明ですが、【火事と喧嘩は江戸の華】という言葉が残るよう、少しでも穏やかに過ごせますようにという願掛けがなされたのも理由なのではと推測。
さて、その幸稲荷神社の社殿は、柔らかな木目と洗練された都会のスタイリッシュさを兼ね備えた外観。
日中でもさほど日の当たらない路地裏でも、ぽわり、と慈愛が滲み出るようなライトアップがなされています。

その社殿が開放されるのが、年に一度11月頭に開催される「銀座八丁神社巡り」と2月の初午の日。近道としての路地裏も、その日はより賑わいを見せてくれます。

手を合わせる人、案内する人、どの人をみても皆さん笑顔だったりはたまた真剣な面持ちだったり、嫌な顔で帰る人は見当たらず。
銀座の路地裏で、「幸」の文字に秘められた先人たちの思いや願いに触れたような気になれた、ある11月の日でした。