東京メトロ半蔵門線「水天宮前」駅と、東京メトロ日比谷線・都営浅草線「人形町」駅の丁度間。
直線距離にして約230メートル、徒歩3分程の路地探訪へ。
路線バスや車が行き交う水天宮通りの喧噪とはまたちょっと質が異なる賑わいを見せるのが、今回の散歩道。散歩、というよりも、寄り道といった方が正しいのかもしれないような…
なぜなら今回は、お目当ての目的地があるから。
いつもなら一段飛ばしで軽快に昇り切る駅の階段も、この日ばかりは雨模様だったので慎重に。
横断歩道を横切り、以前散歩の達人POCKETシリーズの「東京おやつ図鑑・和菓子編」にも掲載されていた甘味処、初音さんの前を通過。
美味しいあんみつや、レトロ可愛いあんずのかき氷がスッと脳裏に浮かぶのは、和菓子好きの性でしょうか。
数歩あるいてチラリと左を向けば、そこには味のある路地が。一方からは胃袋を鷲掴みするような中華の刺激、かたや一方からはお蕎麦のかえしや出汁が胃袋を優しくさすり、その複雑な香りのハーモニーに酔いしれます。
曇天の下、くすんだ視界に映えるのはビールケースの黄色や手招きするようなのぼりの赤。
ゆっくり10歩ほど進み、日が沈んでからの人の流れを思い浮かべながらまた戻る。
今回のお目当ては、この隣。もう一度来るかどうかはわからないけれど、心の中で「またね。」と手を振り1本となりの本命へ。
提灯、串、ステーキ、酒という心躍る文字の中見つけた本日の目的地、「御菓子司 東海」さん。
タイムスリップしたような、というよりも、ここだけ時間が止まっているのではないかと錯覚するような店構え。心が落ち着くと同時にそわそわするのは、さりげなく漂う威厳故でしょうか。
以前は奥様もいらっしゃいましたが、現在は80歳を超えても尚現役のご主人がお一人で切り盛りしています。
「今日はね、これからあんこを炊くんだよ。」とおっしゃるご主人から、定番とその日の気分で2個ほど購入。
また来ます、と一礼をして雑踏の中へ。なぜか眩しく感じたのは、雨が上がったからなのか何かしらの魔法が解けたからでしょうか。
散歩の締めくくりは、東海さんでお迎えした「レーヅン饅頭」。レーズン、ではなく、レーヅンなのがまたぐっときます。大好きな私の定番のひとつ。
たっぷりと卵を纏って焼き上げられたお饅頭は、きらりと煌く黄金色。薄くややさくっとした皮に練りこまれた、たっぷりのレーズンの甘酸っぱさが、ほっこりしながらもしゃっきっと甘い粒あんにベストマッチ。小ぶりながらも食べ応えがあるのも特徴的です。
ごちそうさまでした。と時計を眺めれば、15分以上経過しているではありませんか。徒歩3分の道を、5倍の時間をかけて巡るちょっとした贅沢。
傘だけではなく、美味しいお土産の重みも感じながら、人形町駅へと向かいましょうか。