「散歩の達人」でも度々取り上げられている日本橋兜町。(個人的に)上戸界で最もオールブラックコーデが似合う吉田類さんが表紙の2021年5月号でも特殊されていたエリア。飲食店からオフィスビル、はたまたマンションまで、新旧さまざまな息遣いを感じられるこちらのエリア。
今回は、2021年5月号の41ページ【日本橋マップ】にて紹介されたなかったエリアをぶらりと散歩。
恒例になりつつあるゴールは、勿論和菓子屋さんです。

スタートはこちら、「中央区日本橋兜町8-8」。末広がりや無限を意味する数字が並び、縁起の良いはじまりまです。私事ですが、誕生日が8月8日なので不思議なご縁を勝手に感じついパシャリ。
左手にちらりと見える、素朴ながらもセンスが光る煉瓦の外壁は、光世証券兜町ビル。街の雰囲気に溶け込むデザインに、兜町への愛を感じながらいざ奥へ。

丁度お昼時ということもあり、ドアの開閉と共に手招きをするいい香り。焼肉のような脂が焦げた匂い、反対側からは中華鍋とお玉が本領発揮する軽快な音、刺激的なスパイスの香りと交錯する、仄かながらも豊かな珈琲の薫香。
少し足を進めれば、複雑ながらも凝った洋食のソースとお出汁の異色のハーモニー。
狭い路地という名のステージは、太陽の高さと共に最高潮の盛り上がりをみせておりました。
足よりも鼻をフル稼働させた散歩もいいものですね、お腹の虫もつられてテンションマックスです。

さて、来た道を戻り千代田橋へ。昔は楓川という川が流れていたようですが、高速道路建設のため1960年代に埋め立てられ橋だけが取り残されております。
千代田橋を渡ってすぐ、楓川の名残を感じられる江戸・もみじ通りに佇む「ときわ木菓子店」さんへ。

昭和43年創業「ときわ木菓子店」さんは、SNS等は一切ございません。ですが、現在の3代目ご主人まで代々受け継がれていくその美味しさと職人の手仕事が評判を呼び、和菓子好きにはかかせない銘店です。
「ゆっくり選んでくださいね」と柔らかくて気持ちの良い奥様の声と、暖簾の奥に垣間見えるご主人の寡黙で力強い背中にほっとする空間。
私が決まって購入するのは「黒饅頭」。
はい、白いけれども黒なんです。
「黒」の焼き印がトレードマークの薯蕷饅頭の中には、黒糖が配合されたこしあんが。
華やかな黒糖の香りとまったりとした皮の香りと質感に、舌も胃袋も満たされます。ご馳走様でした。

実はときわ木さん、御菓子を選ぶスタイルがちょっと特徴的なので、ぜひお伺いなさって体験してみてくださいね。

デザートと食事があべこべになってしまいましたが、それもまた、自由に選べる大人の特権。
回れ右をして、再び兜町の路地裏へ戻ったとある日のお昼なのでした。