飲食店から雑貨店まで、多種多彩なジャンルの店舗が軒を連ねる東京駅八重洲地下街。
雨の日も安心して「お散歩」できる美味しくて楽しい地下街は、訪れるたびに何かしら変化しているような気がします。

そんな八重洲地下街にお店を構える「アロマ珈琲」さんは、50年以上もの間そこに在り続ける最古参。

この日お伺いしたのは平日の15時頃でしたが、席の埋まり具合は3割ほど。改札からやや距離があるためか、大きなキャリーケースと共に訪れる方よりも、近隣オフィスビルの方が多くいらっしゃる印象です。
お目当てが決まっていたので、着席してすぐに注文。ふふふ、わくわく。

店内を彩る音色は80年代~90年代アメリカンポップス。心躍る昭和のダンスナンバーにさえ、「落ち着く」「癒される」と思ってしまう私。これは疲労度が高めでしょうか。
その疲労を払拭するためにお伺いしたことを思い出します。
そう、お目当ては「サイフォン珈琲」と「プリン」。

東京は西荻窪の工房にて、直火焙煎で丹精込めてローストされたこだわりの豆。そちらを丁寧にじっくりとサイフォン式で淹れた珈琲は、やや濃いめの苦味と香り。ですが、その苦味もふくよかなので、心地よさを覚えます。

そしてお待ちかね、こちらのプリンは王道ともいうべき、喫茶店の固めプリン。平日限定のプリンは、慌ただしい時間へのご褒美。

滑らかながらも、しっかりと保形力が宿ったプリンは喉越しも滑らか。卵の味がダイレクトに伝わります。
酸味が効いたストロング系カラメルはたっぷりと。添えられたレモンと生クリームの組み合わせも、ひと味違う気分転換。こちらはこちらで、スイーツと言っても過言ではなく。

意外とボリュームたっぷりなので、大きな口で頬張るなんていうのもあり。ホイップクリーム、ビターカラメル、たっぷりプリン。三位一体の贅沢を思い切り。

50年を超える歴史ですから、そのころ家族と一緒に訪れていた子供たちも、両親になり、更に祖父母になっている方も沢山いらっしゃることでしょう。
ジュースやソーダフロートのアイスクリームを舐めていた子供たちが、アイスラテ、そしてブラックコーヒーを嗜み、今度は小さな子供の手を引いてやってくる。止まることのない時間の中で、彼らの悲喜こもごもを見守ってきた八重洲地下街の年長者は、何を思うのでしょうか。
変化していくことへの喜びか、はたまた景色が変わっていく一握の寂しさか。


さて、行きましょうか。と立ち上がれば、プリンのカラメルと同じくらい、濃厚で艶めく木の椅子が軋む音。
根を生やしたくなるお尻との別れを惜しんでくれているのでしょうか。
そう遠くはないうちに再訪することを誓いながら、再び慌ただしい時間の中へ。勿論次回も、「平日」に。