はしご湯できる、知る人ぞ知る2つの名湯

まずは美又温泉街へ。源泉かけ流しの足湯に入ると、熱くて驚く。おそらくこの日の湯は45度近い。とろりとした湯で、湯上がりは足がすべすべに。早くも、美肌の湯の実力を実感した。

2026年12月には、日帰り入浴施設『美又温泉うるる』が開業予定。温泉街の楽しみがさらに増える。

今夜の宿は『なごみ湯宿 かなぎ』。こちらは肌に吸いつくような湯で、全身が化粧水に浸かっているかのよう。

昼は緑、夜は星空と露天風呂からの景色も旅情を誘う。夕食は石見和牛が主役。希少な未経産雌牛はきめこまやかな肉質で、上品な甘みが広がる。湯も食も、期待以上の満足感だった。

小さな旅館が並び、むかしながらの風情が残る美又温泉街。
小さな旅館が並び、むかしながらの風情が残る美又温泉街。

翌日は旭温泉『隠家(かくれや)ゆかり』へ。露天風呂付き客室では、自慢の湯をかけ流しで楽しめる。

美又温泉とはまた違うさらりとした浴感で、湯上がりはしっとり肌に。

夕食は部屋でゆっくり味わい、夜は三宮(さんくう)神社での石見神楽の公演へ。神々の物語を勇壮に舞う姿に心を奪われる。

美肌の湯と歴史や文化。その両方に出会えたことが、この旅を忘れられないものにしてくれた。

白角川(しろつのがわ)のせせらぎに寄り添う温泉地・旭温泉。
白角川(しろつのがわ)のせせらぎに寄り添う温泉地・旭温泉。
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美又温泉、どんなお湯?

約150年前に開湯した全国屈指の「美肌の湯」。pH9.8の弱アルカリ性の湯は、とろりとした湯ざわりが心地よく、古い角質を落とす効果も。さらに豊富なメタけい酸が新しい角質の形成を助け、しっとり肌へ導いてくれる。

入口にある公衆浴場『美又温泉会館』は夕方になると地元の利用客でにぎわう。入浴料500円。
入口にある公衆浴場『美又温泉会館』は夕方になると地元の利用客でにぎわう。入浴料500円。

『なごみ湯宿 かなぎ』とろみの湯で美肌日本一を実感

10人ほどが入れる岩造りの露天風呂。
10人ほどが入れる岩造りの露天風呂。
旬の果実を漬け込んだ自家製果実酒は1杯770円。
旬の果実を漬け込んだ自家製果実酒は1杯770円。
地元食材をふんだんに使い、洋のテイストも取り入れた石見和牛のどぐろ会席。
地元食材をふんだんに使い、洋のテイストも取り入れた石見和牛のどぐろ会席。

美又温泉で唯一、露天風呂を備える宿。緑豊かな山々と川音に包まれながら、とろりとした湯を満喫できる。春は桜、秋は紅葉など、四季折々の景色も魅力。石見和牛やノドグロなど、山陰の旬を盛り込んだ会席も評判だ。

☎0855-42-1000
1泊2食1万9800円~
水休(祝と長期休暇の場合は営業)
泉質/単純温泉
島根県浜田市金城町追原39-1
JR山陰本線浜田駅から車25分

泡立て洗顔セット1100円など、美肌のお土産も充実。
泡立て洗顔セット1100円など、美肌のお土産も充実。
総支配人の佐々木健久さん。「年間わずか200頭の未経産牛をどうぞ!」。
総支配人の佐々木健久さん。「年間わずか200頭の未経産牛をどうぞ!」。
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旭温泉、どんなお湯?

pH8.5の弱アルカリ性の湯は、無味無臭でさらりとなめらかな肌ざわり。湯上がりはしっとりの心地よさが続く。昭和50年(1975)の開湯以来、神経痛や関節痛、冷え性などにもよいとされ、多くの人を癒やしてきた。

元湯の『あさひ荘』は県産材100%の建物で、ほのかな檜の香りが広がる。入浴料500円。
元湯の『あさひ荘』は県産材100%の建物で、ほのかな檜の香りが広がる。入浴料500円。

『隠家ゆかり』客室露天で自分だけのかけ流し

特別室には御影石の露天風呂が。
特別室には御影石の露天風呂が。
しまね和牛やノドグロの煮付けなどが入ったちょこっと贅沢会席。
しまね和牛やノドグロの煮付けなどが入ったちょこっと贅沢会席。

全15室のプライベート感あふれる宿。半数の客室は露天風呂付きで、加温のみのかけ流しを独り占めできる。夕食は部屋食で、地元の味覚を使用した会席をゆったり堪能。月に一度、土曜の20時から石見神楽公演もある。

☎0855-45-1180
1泊2食2万4800円~
火休(祝と長期休暇の場合は営業)
泉質/単純温泉
島根県浜田市旭町木田1006-1
JR山陰本線浜田駅から車30分

ラウンジでは生ビールやワインなどを無料で提供。
ラウンジでは生ビールやワインなどを無料で提供。
源泉を配合した旭温泉せっけんは1個770円。
源泉を配合した旭温泉せっけんは1個770円。
スタッフの長本礼央さん。「露天風呂付き客室は3種類ご用意!」。
スタッフの長本礼央さん。「露天風呂付き客室は3種類ご用意!」。
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「浜田の夜神楽公演」艶やかな衣装と迫力の舞が魅了する

石見神楽を代表する演目「大蛇(おろち)」。幾重にも絡み合う大蛇が見どころ。写真=(C)浜田市観光協会
石見神楽を代表する演目「大蛇(おろち)」。幾重にも絡み合う大蛇が見どころ。写真=(C)浜田市観光協会

浜田市では夜になると各地で石見神楽が上演され、毎週土曜には三宮神社で定期公演を開催。市内約50団体が週替わりで約1時間、神話の世界を勇壮に演じる。静寂に包まれた神社で観る夜神楽は、格別の趣だ。

☎0855-24-1085(浜田市観光協会)
毎週土曜(一部休演日あり)と5月3~5日、9~11月の金曜の20:00~21:00(演目によって延長の場合あり)
1500円
島根県浜田市相生町1571
JR山陰本線浜田駅から車5分

写真=(C)浜田市観光協会
写真=(C)浜田市観光協会

取材・文=前岡侑希 撮影(美又温泉会館、あさひ荘を除く)=中野一行
協力=島根県
『旅の手帖』2026年10月号より

島根の温泉といえば、東部の名湯を思い浮かべる人が多いだろう。しかし西部にも魅力ある湯が点在する。山口との県境に接する津和野、そして海沿いの町・益田で、美肌の湯浴みと縁起のいい神社へ。心も体もたっぷり満たす旅はいかが。
宍道湖(しんじこ)のほとりを走り、出雲方面へと向かう一畑電車、通称「ばたでん」。時代を超えて人々の日常と祈りを運んできた路線には、いまもゆっくりとやさしい時間が流れている。