昼夜問わず車が走り、会社という現実の世界や某夢と魔法の国へ向かう人たちで溢れる新大橋通り。
ちょいと京橋方面へ体を向けると、日が沈んだ頃にはご機嫌な声と美味しそうな香りが漂うすずらん通り。

喧騒と喧噪の間には、シーンと静かな細い路地。
オフィスビルの滑らかな外壁と、年代を感じさせるざらついた外壁が向かい合うその場所では、正面だけではなく左右上下へ視線を走らせる。

急かされるような気配はどこにもなく、かといってもの珍しいものがあるわけでもないのに自然と歩幅が狭くなる。
誰もかれもがせわしなく歩く中、ここには私ひとりだけ。
ひとさじの優越感が消える頃、なにやら作業をしている姿がちらり。
すずらん通りの方へ曲がると、路地の出口には「伊勢屋商店」さんという和菓子屋さんが。

すうっと体が吸い込まれ、なんとなく直感で購入した「くるみ饅頭」。無類の和菓子好きな私(特にお饅頭)は、軽やかな足取りで近くの桜川公園へ。

黄金色の艶やかな焼き饅頭と、ドライな胡桃のコントラストからはアットホームな温もりが。
ぱくり、と歯を立てれば、ほろほろとほぐれていく皮と粒あん。小豆の風味が立った粒あんに、軽やかな胡桃のアクセント。

地図アプリの経路通りもいいけれど、私の定番経路はあの路地にしようかな、と思った昼下がりとお饅頭でした。