この一杯を飲むために、今日も一日頑張った自分にご褒美をあげたい。
そんなとき、私はお気に入りの酒場へと足を運ぶ。
それにしても、歴史ある酒場には「サッポロ生ビール黒ラベル」が良く似合う。
『斎藤酒場』の壁に貼られたレトロポスターは、復刻版ではなく当時の物だという。
“レトロ風”ではない。
本物の“レトロ感”とともに、美味いビールをいただこう。
そんな一杯とともに味わう肴は「もつにこみ」に決めた。
味噌仕立てでコクのある「もつにこみ」は、「もつ」と「こんにゃく」の上に「ねぎ」を散らしただけの潔さ。
しかしその一杯には、お店の「歴史」と「安心感」が溶け込んでいる。
今日は一日暑かったからか、とにかくビールの吸い込みが早い。
「お代わり、いただいてましたかしら?」
女性スタッフの問いかけは、まるで「追加オーダーをしろ!」というバッカスの指令に聞こえた。
え?“酒場の流儀”はどうなったって?
こだわりがない男はつまらない。
しかし、女性の誘いを断るような男にはなりたくない。
妻や子を裏切らない誘いなら尚更だ。
これが私の“男の流儀”だ。
2杯目に頼んだお酒は「清酒(冷)」。
銘柄は指定しない。
もちろん、名のある地酒を飲みたい夜もあるが、雰囲気ある酒場では、お店の定番酒が飲みたくなる。
もう一品追加した肴は「カレーコロッケ」だ。
サクッとした食感で、お芋のホクホク感もある。
カレー味はもちろんだが、トウモロコシの甘味と、手作りならではの「優しさ」が衣の中には詰まっている。
1つ目はそのまま、2つ目とキャベツはウスターソースをかけ、辛しを少しつけていただくのが私の定番だ。
お会計をしつつ、私は1つの質問をしてみた。
『斎藤酒場』と『大衆酒場 斎藤』、正式な店名はどちらなのか?
返ってきた答えはこうだ。
「どっちでもいいのよ。呼びやすい方で。元々が『斎藤酒店』だし、『斎藤酒場』の方が呼びやすいかしら。『斎藤道場』なんて呼び方するお客さんもいるし、あなたはどっちが呼びやすい?呼びやすい店名でいいですよ!」
世の男たちは、やれ「妻(彼女)の束縛が強い」だの「妻(彼女)がいちいち細かい」だの口にする。
しかし、本当に細かいことを気にしているのは、いつだって男の方だ。
そんなことを教わり、、家路につくのであった。