オーダーした樽生ビールよりも先に、「お通し」が届いた。
一見すると「メンマ」のようにも見えるが、これは「エリンギ」。
ピリ辛の味付けがビールに合いそうだ。
日中、暑い中を動き回った日は、何よりも身体がビールを欲している。
早く、美味いビールが飲みたい。

そんな心の声が漏れていたかのようなタイミングで、生ビール(中)が到着。
他所のお店なら大ジョッキと呼ばれるようなサイズ。
澄み切ったジョッキに注がれた【サッポロ生ビール黒ラベル】はどこまでも爽快で、キメの細かい泡はどこまでもクリーミー。
「この一杯の為に生きている」
幼い頃に大人がこう口にしていた理由が、自分も大人になるとわかってくるものだ。

今日の肴は「煮込」
暑くたって寒くたって、美味いものは美味いのだ。
少なくとも私の中で、「煮込」を食べるのに季節や気温は関係ない。
大串で有名な『鳥竹 総本店』だが、「煮込」の具材もデカい。
大振りのモツと大きくカットされた大根、人参は煮込まれて溶けてしまったようだ。
上に盛られたネギのシャキシャキ感もたまらない。
そして何より、それらをまとめている煮汁が素晴らしい。
味噌仕立てのさらさらとした煮汁だが、しっかりとコクもあり旨味が溢れている。

それにしてもお隣さんが串を食べる食べる。
一体、何本食べているのだろう。
今日こそは1杯1皿のつもりだったのに、妙に串が食べたくなるじゃないか。
これは「追加オーダーをしろ!」というバッカスの指令に違いない。
え? “酒場の流儀”はどうなったって?
こだわりがない男はつまらない。
しかし、時には直感に素直に行動することも必要だ。
迷って後手を踏むぐらいなら、すぐに動いて先手を取る。
これが私の“男の流儀”だ。

定番の「やきとり」にするか「つみれ(ピーマン肉つめ)」にするか。
はたまた「ボンボチ」か。
パリッとした「皮」も捨てがたい。
だとすれば「タレ」にするか「塩」にするか。
10秒ほど考えてオーダーしたのは「つくね(タレ)」。
誤解を恐れずいえば、『鳥竹 総本店』の「つくね」はフワフワ食感の「つくね」とは一線を画す。
肉の密度が濃く、ギュッと詰まったイメージの「つくね」。
この肉々しい食感、嫌いじゃないね。
そしてやっぱり「つくね」はタレに限る。
ちなみに、最後までどちらにしようか頭を悩ませた存在は、「つみれ(塩)」だった。

ふと顔を見上げれば、車だん吉さんの色紙が飾られている。
「鳥竹の
 やきとりは旨い
 このやきとりを
 食べられる人は
 幸せである
食べられない人は
残念ながら
残念である。」
そう、私は幸せである。
そろそろ、次にこの幸せを味わう人のために、この席を空けなければならない。
もう少し飲んでいたいときに席を立つのが、私なりの“酒場の流儀”。