これまでの遊び方と、これからの遊び方

小学生の頃、連日この池を訪れていた時期がある。もちろん、泳ぎに来たわけではない。
目的は、人面魚。
世間のブームから数年経った1994年頃、この界隈で「後谷公園の池に人面魚がいる!」と話題になったのだ。
私の通っていた小学校はもちろん、蕨市内の別の小学校、戸田市の小学校からも人面魚を探しに子どもが集まっていたと記憶している。
後にも先にも、ここまで集中して「後谷公園」で遊んだ記憶はない。

池に水が流れ込む川や森(というほどでもないが…)には、特に夏の思い出がいっぱいだ。
当時は近くに畑や田んぼもあったけど、豊かな自然があるわけではない。
そんな土地で遊ぶ小学生にとって、木々に囲まれたこの場所は貴重だった。
夏休みはザリガニ釣りや虫採りの人気スポット。他校の子どもたちとどっちが大物をゲットしたか競ったものだ。

中学校の3年間は野球一筋。
高校は部活もやらず、フラフラしていた。
この頃は、夜のランニングコースとして、公園の横を走り抜けた。
たまに芝生広場でストレッチをしたり、ボクシングをやっていた頃はシャドーボクシングもしたりなんかしてね。

酒を飲むようになってからは、毎年春になると「後谷公園」が巨大な宴会場と化していることに気づいた。
すごく近いわけではないが、スーパーやコンビニが徒歩圏にある。
トイレもある。
芝生エリアを囲むように桜の花が咲く「後谷公園」は、確かにお花見にはピッタリだ。

結婚し子どもが生まれてからは、幼い我が子を連れて「後谷公園」へ行くようになった。
芝生広場をよちよち歩く我が子の姿は、それだけで白飯3杯、いや、ビール3Lは飲める。
子どもの友達家族と一緒にピクニックなんかも楽しんだものだ。

最近の「後谷公園」では、私が子どもの頃にはなかったイベントも行われるようになった。
それが2023年も11月26日(日)からスタートする「トダイルミ」だ。点灯式後の「後谷公園」は、2024年2月末まで数多くのイルミネーションが輝き続ける。

イルミネーションももちろん素晴らしいのだが、それ以上に40歳を過ぎた私の心を躍らせたのが、昨シーズンからスタートした「トダイルミmarche」だ。
「トダイルミ」開催期間中の第2第4土曜日に、イルミネーション輝く「後谷公園」に複数の飲食店がブースを出して、ナイトマルシェが行われるようになったのだ。
冬の夜に外で遊べるなんて、私が子どもだったら確実に毎回参加しているに決まっている。いや、昨シーズンも子どもを連れて毎回参加したんだった。
子どもたちも大好きなイベントだし、きっと今シーズンも毎回参加するんだろうな。

「みんなが楽しめる公園」とは何か?

ちょっと俯瞰して「後谷公園」を見てみると、私が子どもの頃にやっていたことと同じ遊びをしている小学生がいる。
以前の私と同じように、公園の周辺を走っている若者がいる。
小さな子どもを連れてピクニックを楽しむ家族がいる。
ウォーキングや、ベンチに座って談笑する先輩方もいる。
ちなみに、「後谷公園」には遊具もなければ、お洒落なカフェがあるわけでもない。そこには芝生があり、池があり、森があり、適度に離れたベンチがあるだけだ。
そういえば、この敷地内で唯一足を踏み入れたことがない茶室「不言亭」もある。
奥深く、おもてなしの精神や侘び寂びを心得た者のみが嗜める茶の道は、私がもう少し品のある大人になったときには是非とも触れてみたい世界ではある。

「後谷公園」では、みんな同じ敷地内で遊んでいるのに、子どもも、パパも、ママも、先輩方も、みんなそれぞれ違うことをして楽しんでいる。
もしかしたら、「みんなが楽しめる公園」に最先端の遊具や特別な施設は必要ないのかもしれない。
スペースがあり、そのスペースを自由に活用できるルールさえあれば、みんな好き勝手に遊ぶんじゃないか。「後谷公園」で遊んでいると、なんだかそんな風に思えてきた。