初めて飲んだのは、大阪梅田の「阪神梅田駅ジューススタンド」だった。

ミックスジュースと聞いたときは、甘ったるくてくどい、ベタッとしたものを思い浮かべていた。

でも実際は、甘味と酸味が絶妙に合わさり、さらに混ざった氷の粒々が清涼感をかもしだしていて、夏でもグイグイ飲めてしまうめちゃくちゃ美味しい飲み物だったのである。

その時から、大阪を訪れると必ずスタンドでグイっと立ち飲みするようになった。
関東で生まれ育った自分にとっては、今まで巡り合ってこなかった、とても素敵で美味しい「大阪の味」となった。

その忘れられない、しあわせの一杯がなんと!地元神奈川で味わえると知り、訪れたのが「千成屋珈琲店」。

本店は大阪・新世界にあって、ミックスジュース発祥の店と言われている。
創業昭和23年の老舗喫茶店。

その店の2店舗めが、じつは神奈川県に出店されていたのである。

老舗喫茶店なだけあり、メニューも昭和を感じるものばかり。

千成屋オムライスは串カツ付き、卵サンドの卵は厚焼き、冷コー(アイスコーヒー)と、大阪をビンビンに感じるラインナップもツボをはずさない。

ミックスジュースは、果物のジューシーさを感じる濃厚な味わいながら、後口はスッキリ。量もたっぷりでゆっくり楽しめるのもいい。しあわせだな〜…

そして、「レトロプリン」も無視出来ず注文。
シルバーの食器に乗せられているだけで、ご馳走感が増す。プリンは生クリームとのバランスが最高で、奇をてらわず王道の趣。

さらに上に乗ったシロップ漬けのサクランボは、昔家族で行ったデパートの食堂にタイムスリップしたような、ノスタルジー。

甘い+甘い組み合わせの相性はどうかと思いながら、口にしたミックスジュースは、プリンの味を損ねず優しく包み込んでくれる。

最後の晩餐に何を食べたいか、という話題を友人とすることがあるが、最後の飲み物はミックスジュースがいい。

…そんなことを考えてしまうほど、しあわせな一杯なのである。