20年前の誌面をめくりつつ、一番街を歩いてみる。

もちろん、20年も経てば街は変わる。誌面に載っていた店がいまもそのまま残っているところもあれば、すでに姿を消した店もあり、当時はなかった新しい店も増えている。けれど、そんな新旧をひとつずつ確かめるように歩くのも、川越では面白い。

一番街を歩いていると、昔から見慣れた蔵造りの町並みのなかに、ときどき「こんなのあったかな」と思う景色が現れる。

蔵造りの町並みには浴衣がよく似合う。そこへクルマが通り抜け、少し先には昔からある店と新しい店が同じ通りに並んでいる。20年前の誌面と見比べているうちに、どちらが昔で、どちらが今なのかを確かめるよりも、その両方が混ざっている景色のほうが気になってきた。

2006年の誌面に登場していた場所を訪ねてみると、あいにく定休日だった店もあれば、20年という時間のなかですでに姿を消してしまった店もある。

人の流れに少々押された私は、いつものように一本、路地へ入った。菓子屋横丁へ向かう、昔から何度も歩いてきた道である。

その途中に、豆を売る店がある。コーヒースタンドも併設されている「豆蔵」だ。

ここは変わらない。2009年に写真を撮ったころには、まだ新しい店という印象があった。それから17年。久しぶりに前を通っても、何となく以前と同じ空気が残っている。

そのまま路地を進み、養寿院を右に曲がって菓子屋横丁へ入ると、かなりの人だかりである。

何だろうと思って近づいてみると、「ちいかわもぐもぐ本舗 川越店」である。

私のなかでは、菓子屋横丁といえば昔ながらの駄菓子屋が並ぶ、どこかノスタルジックな印象が強い。それだけに、たくさんの人で賑わう「ちいかわ」の店がそこにある景色は、なんとも新鮮に映った。

菓子屋横丁をあとにして、再び一番街へ戻り、南へ歩く。

しばらくすると、白いタイル張りの大きな洋館が見えてくる。かつて銀行として使われていた建物は、いまでは「りそな コエドテラス」として新たな役割を担っている。

昔から見慣れた建物なのに、中で流れている時間はもう違う。


さらに一番街を南へ歩いていくと、保刈歯科の前あたりで、たくさんの風鈴が目に入った。大きな木組みから、色とりどりの風鈴と短冊が吊るされ、夏の風に揺れている。

足を止め、何枚か写真を撮る。

帰宅してから調べてみると、これは小江戸の七夕「ムスブオモイ」という催しで、その木組みには名前がついていた。

「時の架け橋」。

この「時の架け橋」には、市内の小学生300人が「家族」をテーマに絵付けした風鈴と、川越氷川神社の短冊が飾られている。そこに込められているのは、いまの子どもたちが成長した10年後、20年後も川越を好きでいてほしいという願いだ。


20年後。

その言葉が心に残る。私がこの日、川越へ連れてきた『散歩の達人』も、ちょうど20年前の一冊である。

振り返ってみれば、今回も変わらないものに安心し、新しいものに足を止めながら、昔から馴染みのある道を進んでいた。どうやら私のお気に入りは、川越のどこかひとつではなく、この街で繰り返してきた「歩き方」そのものかもしれない。

2046年の川越には、どんな景色が待っているのだろう。そのときもまた、この一冊を片手に、この街を歩いてみたい。