ところで今日は、水元公園に来ています。
江戸時代に農業用水を確保するためにつくられた「小合溜(こあいだめ)」がルーツであり、
23区内とは思えない広い空と海のような湖が見られます。
その風景はどこか新印象派のジョルジュ・スーラ作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を思わせる、瀟洒な明るさです。
今は菖蒲が見頃でした。
真っ直ぐな濃緑の茎の上に、江戸紫の花が潔く鮮やかに乗っています。
いま、「江戸紫」という言葉を使いましたが、
赤みを帯びた京紫に対して、
青みがかった江戸好みの紫をこう呼ぶのだそうです。
菖蒲の色はまさに江戸紫に冴えています。
強くなり始めた太陽に対してすくっと立っている様子を見ると、何だかこちらも元気がもらえるような気がします。
園内には茶店が出ていたので、
菖蒲が群生する池に面した床几に座って、
甘酒と塩煎餅をいただきました。
今はすっかり緑の藤棚の下、冷たい甘酒を飲みながら、
実際の気温というより気分の面で、
非常に涼しいことに気が付きました。
そういえば以前、明治〜昭和を生きた日本画家である鏑木清方の随筆を手に取ったのですが、
これを読むと昔の人は暑さ寒さをテクノロジーではなく、暮らし方で解決していたことがよく分かるのです。
夏には糊のきいた浴衣を着て、色はクリーム色に紫や水色。
夕方に銭湯へ行き、手拭いをかけたままその足で、路傍で麦湯を飲む。
いかにも涼しげですね。
今日、私は菖蒲を鑑賞し、藤棚の木陰で煎餅を茶請けに甘酒を飲むことで、
見るものや食べるもの、時の過ごし方によって涼を取っていた江戸人の心を、少しばかり感じられた気がします。
だから今夏は甚平を買って、流水のように透明なガラスの器も買って、
水饅頭でも食べてみたい、そんなことを考えました。




