〈本と玄米カレー ヨスカ〉は、まるで物語の中の幻の喫茶店のようである。出てきた店主は山猫ではなく、優しい雰囲気の男性だったが、店内には帽子をかぶったゾウや、蝶ネクタイをしたキリンがのほほんとコーヒーでも飲んでいそうな、のどかで秘密めいた和やかさがある。壁と窓に沿って木のカウンターと椅子があり、壁の上部の棚には本がぎっしり詰まっている。本の種類はバラバラで、旅の本、料理の本、漫画、小説、写真集や詩集もある。自由に読んでいいし、お客さんがおすすめの本を持ってきて、ここにある本と交換することもできるという。

食事のメニューは、丁寧に出汁をとり、繊細にスパイスを効かせた店主手作りの玄米カレー。定番のチキンカレーと週替わりのカレーがある。2種類を合わせ盛りすることもできる。そこに季節によって変わる副菜が付き、11種類の中から5種類選べる。カレーも副菜も野菜がたっぷりで、体を労わるような優しさに溢れた滋味深い味わいだ。そしてなんと、酒にも合う。店の冷蔵庫には店主がこだわってセレクトしたクラフトビールや日本ワインが各種並んでいて、ひっそり静かに一杯やれるのだ。健康的なつまみだからあまり罪悪感がない。

お酒を飲まなくても、コーヒーや紅茶、自家製チャイやジンジャーエールなどがある。デザートは店主の友人だという、SUMI BAKKE SHOPのうっとりするような見目麗しき焼菓子。これを目当てに来る人も多いようだ。

ドキドキしながらようやく辿り着いた先に、こぢんまりと居心地のいい空間。そこにカレーも甘いものも、酒も本もあるなんて、震えと笑いが込み上げてくる。毎回この独特な雰囲気をコソコソと楽しみつつ、小さな幸せを噛み締めに、一人でくるのがおすすめです。