『千鳥ヶ淵緑道』は、皇居のお堀に沿った緑道で、都内有数のお花見スポットでもある。さて、訪れてみると……ははぁ、やはり地面は大量の花びらで埋め尽くされている。さらに雨で地面のコンディションは最悪だ。これではお花見なんか出来ない……いいや、このコンディションだからいいのだ。先に進もう。
緑道を進んでいると、少し開けたところに建物がある。そう、そこが目的地の『千鳥ヶ淵ボート場』である。お目当ては、もちろんボートに乗ること。そして、雨で桜の花びらが散った今だからこそ、このボートに乗る価値があるのだ。
むむっ! あった、あそこだ! お堀に浮かぶ〝桜色の絨毯〟──あれは、前日の雨で散った桜の花びらが流されて集まったものだ。そう、目指すはあの桜の絨毯!
ボートに飛び乗り、ギーコギコ。慣れないオールを漕いで、いざ、お桜見の開始だ。
ボートの船首が桜の絨毯に突入したところで、そっと漕ぐのを止める。すると……何という美しい眺め! 桜色が、自分のボートをみるみる取り囲んでいくのが分かる。
そこを惰性で、ゆっくりとボートが進む。僅かに香る桜の匂い、空からはチラチラと花びらが舞う──この〝儚さ〟こそ、お花見の醍醐味だ。
その年に一度の儚さは、ここまで桜との距離が近いからこそ肌で感じることが出来るのである。
もちろんシートを敷いて、お酒を飲みながらドンチャンするお花見も大好きだが、来年も桜の散る頃が楽しみで仕方がない。
取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)