神宮前の「時田屋」でパンチな背油。
原宿駅を降り、ユナイテッドアローズの本店の前の路地を進む空きっ腹の昼下がり。その路地のT 字にぶつかる手前で見つける濃淡のオレンジのストライプのテントに「八百辰」。
話に聞く片側のシャッターが下り片側が開いている様。14時40分。調べでは15時まで。近づく扉にかかるopenの札。
間にあったとホッとして原宿的なイカすステッカーがペタペタと貼られるアルミの引き戸を開けてこんにちは。
飲める大衆食堂な生業で夜な夜なこのあたりの方々が集まり賑わうと噂を聞く「時田屋」。棚にずらりと並ぶキープの黒霧島といいちこがそれを物語る。
ユナイテッドアローズの側に在った「元祖札幌や」が店を終い代替わりをしてお母さんの実家の八百屋を居抜きでラーメン屋を始めたというところ。
簡素なままの店内。コンクリートの床に並ぶテーブル。奥にある大きくない調理場にご主人とお母さん。
目を引くバイクにまたがる男子と女子の可愛いイラストの壁画。どうやらご主人と奥さまらしい。
席に着きお冷を貰い棚にかかるメニューを眺めるも、あれ、背油が見当たらない…。頭の中は昨日の夜からネットで眺めた背油一択。
お母さんに背油はと尋ねると、少し戸惑い、厨房のご主人に伺いを立てる。間髪置かず大丈夫と通るオーダー。
良かったとトッピングでたまねぎもお願いする。
あらためて眺めると背油を隠す紙に気付き、本日品切れだったに気が付く。ありがとうございます。
+と主張する半チャーハンもと思うけど今日はお腹と相談し我慢する。
しばらくしてお母さんがゆっくりと大切に両手で包み運ぶどんぶり。半熟のたまごの黄身の黄が美しく際立つ背油と玉ねぎで埋まる淡く白な水面のそそる麺顔。
背徳溢れる背油ごと啜る汁。満る深みある甘味に潜む荒々しい獣とにんにく。ひゃー、おいしい。
絡むみじんの玉ねぎのほんのり広がる辛みと爽快感を一緒に噛みしめるしあわせ。
トロける肉肉しい豚を頬張り、細く縮れた麺に纏わりつく脂と汁と玉ねぎごと質感を感じただただ啜り込む。うん。おいしい。
だめだと思いつつもいつまでも止まらないレンゲ。ほぼ最後まで汁を掬いここまでとする。満たされるラーメン。
ごちそうさまとお会計。古さとナウが同居する居心地の良い八百屋の居抜き。今度は家族とと心に思う。
ありがとうございます。とご主人とお母さんに伝え店を出る。