代々木の麺恋処「いそじ」の味噌らーめん。
冷たい雨が降る金曜日。味噌ラーメンが食べたいと立ち寄る代々木。スクランブル交差点を渡り、今はもう学生のいない代ゼミに添う路地を下る先の住宅と併用店舗の一階の一角に小ぶりの紫の暖簾を掛ける麺恋処「いそじ」。
『自家製麺、つけめん、中華そば、専門店』と謳う2007年に50歳を前にイタリアンから転身する(大木凡人に似る)店主が、「50歳からの道」と言う意味を込めて「いそじ」と名付けたというお店。
その店主はその後、新橋に麺恋処「き楽」を立ち上げ、代々木は一番弟子が引き継ぐ。
アルミの引戸を開けてこんにちは。厨房を囲う10席ほどのLのカウンター。その奥に鎮座する製麺機。余白ある凛とした空気に満ちる店内。
券売機で味噌らーめんをポチとして、同じ値段の並盛か中盛かと聞かれ、並盛でと伝えお冷の用意された席に着く。
厨房にグレーのポロシャツに黒のタオルを頭に巻くいつものスタイルで揃う一番弟子さんと店員さんズ。
流れるラジオを聴きながらのんびりと待つ。
少しして「スープに柚子を入れてもよろしいですか」と丁寧に聞かれ、「お願いします」と受け応える。
お待たせしましたと配膳される味噌らーめん。白磁に青のイチョウの葉のような模様が並ぶ柄の器に茶濁のスープと顔を出す艶やかな麺に整い載るモヤシとチャーシューと海苔とナルトの凛々しい麺顔。
いただきますとレンゲを取る。啜る味噌スープはふわり味噌が薫る円やかな甘みとやさしいコクと深みにほんのりと唐辛子の刺激。じわり喉と胃に沁みる。おいしい。
啜る自家製麺はもっちりみっちりのすべすべの中太のストーレート。滑る喉越しとぱっつんとした歯切れの良さ。いそじのこの麺がずっと好き。
細めのカリコリと身がしまるメンマとむっちりな肉肉しいチャーシューを噛みしめて、飲み干すスープの底に薫り立つ柚子の欠片。
ほっこりと温まるやさしさと謙虚と丁寧が詰まるらーめん。
ごちそうさまでした。