興福寺北円堂とは
奈良・興福寺の境内北西に位置する北円堂は、藤原不比等の追善供養のため、奈良時代の721年に元明天皇と元正天皇によって建立されたと伝わります。その後、二度の火災にあい、現在の建物は鎌倉時代初頭に再建されたものです。1210年頃に堂が整い、1212年頃には、氏長者・近衛家実の命により、運慶一門が仏像を造立しました。
内陣には同じ八角形の須弥壇(しゅみだん)があり、本尊・弥勒如来坐像をはじめとする9軀の仏像が安置されています。現在に伝わるのは、弥勒如来像と無著・世親菩薩立像の3軀。北円堂の四天王像 は長く失われたと考えられてきましたが、近年では中金堂に安置されている四天王像がこれに該当する可能性が高いとされ、運慶一門の作とみなされています。
(画像上) 弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像
四天王立像は、正面からは邪鬼を踏みしめる力強さや鋭い眼差しが印象的で、背面からは翻る天衣や裳の流れにより、後ろ姿までも迫力と美しさを湛えています。
(画像上)国宝 四天王立像(多聞天) 鎌倉時代・13世紀 奈良・興福寺蔵 中金堂安置
360度どの角度からも造形の巧みさと神将としての威厳が感じられ、写実と精神性が融合した“生きている彫刻”としての魅力が際立ちます。
国宝 四天王立像(多聞天) 鎌倉時代・13世紀 奈良・興福寺蔵 中金堂安置
運慶芸術の神髄にふれる
本尊・弥勒如来坐像は、2024年度の修理を経て、今回の展覧会でおよそ60年ぶりに東京で公開されます。穏やかな表情としなやかな肉付きは、運慶晩年の境地を物語る傑作です。
これらの仏像は、奈良で限られた期間にしか公開されない貴重な存在です。
本展では、北円堂の弥勒如来像 、無著・世親像に中金堂の四天王立像を加え、鎌倉復興期の北円堂内陣を現代に再現している点も見どころの一つです。
都心にいながら“祈りの空間”を体感できる、またとない機会。
静謐な展示室で、運慶一門が刻んだ造形と祈りの世界を、ぜひご堪能ください。
特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
東京国立博物館 本館 特別5室
2025年11月30日(日)まで
毎週金・土曜日、および11月2日(日)、11月23日(日)は午後8時まで開館いたします(入館は閉館の30分前まで)。
休館日10月27日(月)、 11月4日(火)、10日(月)、17日(月)、25日(火)
本展は事前予約不要です。
一般 1,700円
大学生 900円
高校生 600円
JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分
050-5541-8600(ハローダイヤル



