「コーヒーハウスぽえむ」用賀店のオープンは1976(昭和51)年、現在の店主は、1989(平成元)年に一代目のご夫婦から引き継いだ二代目だ。ほぼ1976年のオープン当時の内装のままで、床は張り替えたそうだ。
「コーヒーハウスぽえむ」は、100%アラビカの豆を使い、高知の熟練職人たちの工場で、職人の腕がもっとも発揮できるように、あえて小釜の直火焙煎機を使い焙煎、
ペーパーフィルターによるハンドドリップで一杯ずつコーヒーを淹れている。日本で最初にペーパードリップを採用したコーヒーチェーンでもあるのだ。
ブレンドコーヒーの「ジャーマンロースト」を注文した。
店主が、ノズルの長~いステンレスのドリップポットで、赤い目盛り付きビーカーに、わたし用のコーヒーを落とす様子を見ていると、母さんのコーヒーを思い出した。
わたしがコーヒーを飲みはじめた70年代後半は、インスタントコーヒーが家庭コーヒーの主流だったが、ガラスのサイフォンやペーパーフィルターでコーヒーを淹れる家庭もそれほど珍しくはなかった。
喫茶店を持つのが夢だった母さんはコーヒーを淹れるのが上手だった。カップ&ソーサ―のコーヒーカップに、3つ穴カリタのドリッパーを載せペーパーフィルターをセット、グラグラ沸騰した年季の入ったヤカンで入れる姿が、目に焼き付いている。
お店で飲んだジャーマンローストは、濃すぎもせず薄すぎもせず、癖のない飲みやすい味だった。ブラックで半分味わい、残りは、ピッチャーのミルクを入れつつ飲む、純乳脂肪性ミルクだ。
飲みなれているマシン抽出のコーヒーとは明らかに味が違う。わたしは母さんが一杯一杯淹れたコーヒーの味を忘れかけていた。
お店に入ったのは17時過ぎ、店内では、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」が流れた。「エリカの花散るとき」と並んで、彼女のカラオケの大定番だ。
この店のことを書きたい、という気持ちがフツフツ湧いてきた。
おそるおそる、ここはチェーン店なんですか?と聞いてみる。
そう、日本初のコーヒーチェーン店なんですよ、と教えてくださる。
個人のお店みたいですね?
チェーン店だけど、店によって色々違うのですよ。
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「さんたつ by 散歩の達人」に投稿してよいですか?と打診してみた。
わたしはSNSとかパソコンとかいっさいやらないから、どうぞ、と言ってるのですよ、
しかしよくよく話を聞くと、近年スマホばかり見て、ますます街に会話がなくなっている現状を憂いていらっしゃる。
電車に乗ると多くの人はスマホに目を落としていて、視線を交わすことはほとんどない、ベビーカーに乗った赤ちゃん連れのお母さんがいて、わたしは頭にキャップをかぶりマスクをして、目だけ出している顔のまま、赤ちゃんに笑いかける、すると赤ちゃんがニコ~ッとするんですよ、
挨拶すると戸惑う人もいる、 喫茶店にいるのに、と残念そうにおっしゃる。
その通り!と思う。
でも、そういうわたしも、パソコン作業してないときでさえ、スマホを握りしめたまま手放さない。寝る時はスマホで動画を見ながら寝落ち、という一日を繰り返す日々。
店主は、大分県佐賀関(さがのせき)半島の出身、地図で見ると、四国、最西端である、愛媛県 佐田岬(さだみさき)半島とすごく近い。
5人きょうだいの末っ子で、父は早くに亡くなって、母は食料品店を経営して子供たちを育て上げた。
10才のとき、姉や家族など周囲にすすめられ日本舞踊をはじめた。師範の舞踊家でもある。
大分の学校を卒業後、高級洋食器メーカーのNARUMIに就職、東京に配属され26年勤め、その後、「コーヒーハウスぽえむ」用賀店の二代目を引き継いだ。
店内に飾られた女形を舞っているお姿と、目の前の店主のお顔を、無遠慮に見比べているわたしにニコニコなさる、目がキラキラしている。
痩せ型で、ダークグレーぽい縞模様、スタンドカラーシャツの一番上までボタンを留め、縁なしキャップ、黒のスラックスにエプロンの出で立ち、舞踊家らしくとても姿勢が良い。
通りに面した店内の窓からは、道行く人の姿がくっきり浮かび上がる。
最近は、ダボダボの服を着てる人が多いね、日本人はお尻が扁平だから、
長年、カウンター越しに人間観察、 言われていることはすごく分かる。
なぜなら例えば、一度食事をすれば、どんな人なのか大体わかる。食べ方、喋り方、仕草、所作、で人となりが露呈してしまう。わたしもそういう視線を痛いほど感じてきた。
こういうお店と出会うために日々アンテナを張ってる。
◎コーヒーハウスぽえむ 用賀店
東京都世田谷区用賀4-31-2
月・火・水・木・金 12:00 - 18:00
土・日・祝日 13:00 - 18:00
*営業時間は変更となる場合あり。
◎コーヒーハウスぽえむ
運営会社/株式会社 日本珈琲販売共同機構
https://www.nikkahan.co.jp/
東京都世田谷区松原3-41-16



