店内は、壁に沿ってぐるりとL型のベンチソファがあり、テーブルは5つ。ひとり用のテーブル3つ、2人用のテーブルがふたつ、L字のコーナー部分にも1人分、8人が定員だ。全員、カウンターに向いて座り、対面に椅子はない。

カウンター席には、回転式の椅子が5客あるが、黒のテープで、×印がしてある。聞けば、コロナ禍の頃、×印をするように言われたそうだ。

でも、元々、コロナ禍とは関係なくカウンター席には座ってはいけないらしい。カウンターの中で作業しながら向いのソファ席の客と話すとき、視線が遮られて、声が聞こえくなるからだ。一番奥の作業台にミシンがあり、手芸品を製作中のようだった。

創業は、1958年(昭和33)、店主女性の母親がはじめたお店だ。ソファのひとり席に座り、カウンター頭上の壁面、オレンジのボードに印字されたメニューを、読んでみる。

DRINK、
コーヒー、紅茶、ミルク、カフェオレ、ココア、こぶ茶、アイスコーヒー、アイスティー、アイスミルク、アイスカフェオレ、アイスココア、コーラ、メロンソーダー、クリームソーダ―、レモンスカッシュ、レモンフレッシュJ、バナナフレッシュJ、バニラアイス、ビール(中びん)、レモンサワー、ウーロンハイ、

FOOD、
トースト、チーズトースト、ハムトースト、ホットサンド、玉子サンド、野菜サンド、ハムサンド、ミックスサンド、ピラフ、ドライカレー、カレーライス、オムライス、焼きうどん、焼きそば、オム焼きそば、なべ焼きそば、なべ焼きうどん、お茶漬け、おにぎり(3コ)、磯部巻き(3コ)、ミックスフライ、しょうが焼き定食、たまご焼き定食、オムレツ定食、コロッケ定食、アジフライ定食、カキフライ定食、メンチカツ定食、ピーマン肉詰め定食、ハム目玉焼き定食、焼き魚、ホッケ、サバ、シャケ定食、各定食(ごはん、みそ汁付)、

壁に貼られたイラスト付きポスターには、「かけそば orうどん 温 冷 トッピング お好みに合わせて追加トッピング♪ かきあげ のり 玉子 冷むぎ そうめん もございます」とある。

店主の女性が、ひとりでやっていて、各種定食は、家庭の味がして好評のようだ。

ドア付近のソファに座っている男性は、わたしの父、昭和8年(1933)生まれ、と同年代、

なんとはなしに、広島出身で、広島では、1965年「ひろしま駅ビル」開業に合わせて出店した「カフェ 風車」が有名で、今も、市内の中心部に店があること、

かつて「風車」と名の付く喫茶店や食堂などは全国に多くあり、現在も、あちこちに点在していることなど、を話したら、

店主の女性は、母親が開いた「喫茶 風車」だから、店名の由来は知らない、と言い、

そのやりとりを聞いて、「なるほど」と頷きながら、ご自分の事も話してくださった。

ひとり暮らしで、毎日ここに来るのが日課、この店にアルコールが置いてあるのは嬉しい、とおっしゃる。

わたしの父は、喫茶店に行くと、周りが、「ホットひとつ」と頼むなか、ひとりだけ「わし、ホット酒」と、のたまい、店員を困惑させていた。男性は父とは対照的で、終始ニコニコ穏やかな佇まいである。

しばらくして、女性2人が入店、イベント用の仕出しサンドイッチを頼んだ後、わたしのとなりに座った。

その日は夏日、30度近くまで気温が上がり、座ったとたん、片方の女性は、コーラを注文し、反射的に、レモンの輪切りが乗っかったシュワシュワの飲み物が思い浮かんだ。

店内は、あっというまに、店主を含めて、総勢6人になった。

カウンターの隅には小型の薄型テレビが据え付けてあり、相撲の中継をやっていて、チラチラ見ながら、あれこれコメントをしたり、次々、世間話が滑らかに転がっていき、わたしも、ウンウン、と頷きながら、店内を眺めまわした。

「喫茶 風車」は、「オーケー国分寺店」の裏手にある。

「オーケー」は、創業1958年、「高品質・Everyday Low Price」がモットーのディスカウントスーパー、関東1都3県に160店舗以上展開している。

1975年、世界初の無人スーパー実験店舗を通商産業省と共同開発し、国分寺で開店したが、来店客には不評で、短期間で従来形式へ改装された、という経由がある。時代が最先端システムに追いついていなかった。

参考:「Wikipedia オーケー」
NEWSポストセブン/「無人スーパー、オーケーは43年前に世界初の店舗を展開していた」

1975年当時は、「オーケー」と同じ敷地内に、ボーリング場の「国分寺パークレーン1968(昭和43)~2008」があった。

wikipedia、その他のネット情報によると、週末には、月ごとの市民ボウリング大会や、「オアシス」杯、「龍栄」杯など、パークレーン内の店名を冠した大会があり、

毎年5月に開催のNHK杯全日本選抜ボウリング選手権大会の会場としても有名で、ボウリングの聖地として、地元民に長年愛された施設だった。

Wikipediaを見ると、最盛期には、
卓球場、ビリヤード場、ゲームセンター、カフェテラス オアシス、バッティングセンター、国分寺ラドン温泉センターもあったらしいが、

2021年3月に完了した「国分寺駅北口再開発」に先立って、2008年に閉鎖された。

しかし、「国分寺パークレーン」は、なんと、現在は「国分寺ガチャタマ」としてキーホルダーになっている。「ミーツ国分寺(三越伊勢丹グループ)」で販売されているのだ。

参考サイト「三越伊勢丹グループ、ミーツ国分寺」
https://www.isetan.mistore.jp/common/mi-ts/event_calendar/event010.html

「喫茶 風車」の斜め向かいの角地には、赤い看板、1977(昭和52)年創業「自家製洋菓子の店 ファンフル 」がある。

人気の「たぬき」ケーキは、バタークリームを使っていた。どっしりとしたバタークリームケーキが大好きだ。長い間食べていない。テイクアウトすれば良かった、と激しく後悔、後の祭りである。

「ファンフル 」のすぐ目の前には、「電車開通・札之丘十五年 記念道路碑」の石碑がたっている。

東京都国分寺市公式ホームページに以下の記述があった。

「明治22年(1889年)に、新宿・立川間で開通した甲武鉄道(現在の中央線)が政府に買収され、その後大正11(1922年)に国分寺駅まで電化が進み、電車が通ることになったのを記念して、同年11月21日に建てられた碑です。」

参考:URL/https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/shisetsu/kouen/1005196/1004248.html

碑が建っているのは国分寺駅から北方に約400m離れた場所、なぜこの場所に立っているのか、謎のようだ。

★「喫茶 風車」 *全席 喫煙可。
国分寺駅北口から徒歩5~8分。
東京都国分寺市本町3-12-12

★「自家製洋菓子の店 ファンフル 」
国分寺駅北口から徒歩5~7分。
東京都国分寺市本多2-1-1