3月の末、有楽町駅近くでの用事が終わったのは、11時半ごろ。
ふと頭に浮かんだのは、自分へのご褒美ランチにぴったりな〈オステリア ダ アダ〉だった。

お店に着くと、すでにたくさんのお客様で活気にあふれていた。
ひとりでの来店と伝えると、「窓際のお席ではありませんが、よろしいですか?」と確認され、奥のテーブルへと通された。
どうやら予約で満席だったようで、スタッフの動線を確保するために空けていた席を、わざわざ用意してくださったみたい。

メニューに目をやると、以前より少し値段が上がっていて、ランチの種類も少し増えたようだった。
その中から、以前から何度も選んでいるお気に入りのセットを迷わずオーダー。

こちらのお店でぜひ味わってほしいのが、約10種類のタパスと生ハムサラダが盛り合わさった前菜プレート。
彩りも華やかで、少しずついろんな味を楽しみたい人にはたまらない一皿だ。

メインはパスタ。
このお店のスペシャリテである「鯖のスパゲッティ レモン風味」や、「クルミのクリームソーススパゲッティ」を久しぶりに食べたい気持ちもあったけれど、ふと目に留まったのは、以前は見かけなかった“数量限定”のメニュー。

それは、私の大好きな菜の花を使った、イカスミ入りのスパゲッティ。
「数量限定」や「今日しか食べられない」──そんな言葉に、つい心が動いてしまう。

今回は、デザートセットも頼んでみることに。
すべてを食べ終えた頃、オーダーしていないハーブティーと小菓子が運ばれてきた。
「慌ただしくてすみませんでした。ゆっくりしていってくださいね」
そう声をかけてくれたのは、いつも見かけるオーナーらしき方。さりげない心遣いが、胸に沁みた。

実はコロナ禍、このお店は開けたり閉めたりを繰り返していた。
静まり返った店内でひとりきりになったあの日、同じようにオーダーしていないメロンがそっと出され、「明日から、またお店を閉めるんです」と告げられたことを、今でも鮮明に覚えている。

今回店を出る頃には、平日にもかかわらず、立ち飲みスペースでワイン片手にタパスを楽しむお客さんの姿がたくさん。

このお店が、こうして賑わっているのが本当にうれしい。
今度はわたしも、立ち飲みデビューしてみようかな──
そんなことを思いながら、ほっこりとした気持ちでお店を後にした。