例えば、家の近くの踏切あたり。
「そろそろツクシンボが出てきているかな」と、毎年、春の始まりを探す場所です。
 遮断機の横の金網には、フウセンカズラのツルが絡まって育ち、夏にはふわふわのフウセンがたくさん実ります。電車の通過を待ちながら、実を一つちぎって中に入っている種を手のひらにのせて眺める。丸薬のような黒い球体に白いハートのマーク。かわいい。
 夏から秋にかけては、周辺にはオシロイバナが咲き、とくに夕方はよい匂い。30メートルぐらい前方には、夏みかんがたわわに実る大きな木が、手前には濃い紫色のアジサイが咲く植え込みがあります。雨の日の外歩きもなかなかいい。
 春に、毒性があって土壌を荒らすから抜くべきなのに、大切にされがちなナガミノヒナゲシがたくさん咲く一画も。可憐な薄いオレンジ色のあの花です。

※みなさま、ナガミノヒナゲシ駆除のご協力をお願いします。



 家から南に20分ほど。坂道をしばらく歩いて登り切ったところ、左手にあるお宅の玄関の横にはツツジの仲間のカルミアが植えてある、といった類のデータも頭の中に入っています。花が咲く5月は、あの辺りの散歩に行くといいよ、と気づく自分に驚きます。
 カルミアは金平糖をイメージさせる可愛らしい花。ツボミが取り分けかわいい。砂糖菓子なの? という雰囲気。
 めしべの周りにあるおしべを触ると、ぴょんぴょんぴょんと動くのを目視できます。花に虫がとまっておしべを触ったときに受粉する仕組みらしい。



 近隣に、へんてこな実がなるなあ、なんだろう、と思う木がありました。実の形から、もしかしたらカリンではないかしら、と。当たりでした。
 かわいいピンクの花が終わった4月下旬、何故か幹は鮮やかな迷彩柄になり、驚きます。脱皮か?
 二年前、このカリンで果実酒をつくってみましたが、失敗。少しえぐみが出てしまった。



 ここを通るとメロンみたいな匂いがするなあ、という体験を数年くり返していた道で、今年もメロンの匂いが‥‥。
 ついに理由が分かりました。モクレンの仲間のカラタネオガタマという樹木の花の匂いだったのです。朝よりも夕方が匂うなあ、と思っていたのですが、調べたら、夜、匂いで虫を惹きつける虫媒花。
 文面には、メロンではなくバナナの匂い、とありました。この匂いには他所では会わないので、珍しい樹木なのかもしれません。いや、匂いがする季節が限られているから、見つからないのかなあ。
 気になり調べると、神社に植栽されていることがあるらしい。縁起のいい木、だとか。知らないことって、いっぱいあるなあ。

 自分の散歩の楽しみ術を書いていると、あっちの話もこっちの話もと、ネタがあふれ出してきて止まらない。このへんで‥‥。散歩は楽しいですね。