だいぶ不安になる。

あれ、11時半からじゃない。とか、もしかして休み。なんて押し寄せる不安の波。慌ててX(Twitter)を眺めてみるもなにも投稿はされていない。

歩道で戸惑っていると、少しシャッターが上がり、店主が出てきて、黒板に今日のカレーを書きだした。

何時からですかと聞くと11時半からです。安堵して、外に並ぶ椅子に座りオープンを待つポールポジション。

ぽつぽつと後ろに並ぶ人々

11時半。お待たせしましたと招かれて、靴を脱いでお上がりください。

4人座れるカウンターと2人掛けが2つのテーブル席。
ほの暗いが居心地につながるような使い込まれた木の温もりを感じる店内。

すぐに満席。

黒板に本日の3種。

ラムキーマ
ポークビンダルー
魚(ブリ)

小はどれぐらいですかと聞くと普通盛りぐらいです。
ポークとブリの小にする。

柔らかな人柄だろうが滲む店主がフルスロットルで、お冷を出し、オーダーを聞き、調理にかかる。その合間に電話を受けてテイクアウトのオーダーまでこなしてる。そのやり取りも穏やかで丁寧。

視線を上げたら、さりげなくドリッパーがぶら下がるのを見つけた。うん、いいね。

流れる曲のテンポと歌詞が気になりつい調べる。U-zhaan, 環ROY & 鎮座Dopenessというラッパーとタブラ奏者による音楽グループ。なんか癖になるミュージックに静かにノル。『朝から眠いなー、でも仕事にいくよ、貯金ゼロだから、まだ火曜日だな』なんて楽しい。

しなやかに孤軍奮闘する店主。フライパンを包むように上がる炎。スパイスがふわりと立ち込める心地よさ。とんとんとんと並べたお皿から湯気が上がる。さりげないそんな気遣いがカッコいい。

スプーンとフォークとお手拭きが入るグラスが高台に置かれて、カレーが届く。

黄と白が交じるターメリックライスがなんだか柔らかな雰囲気を醸す艶やかな色取りのワンプレートにココロがオドル。小さな器に黄と赤のそれぞれのカレー。

黄色のサバから。
さらさらのカレー。酸味がふわとして感じる柑橘、紫蘇の爽やかが深み。
ブラックペッパーの軽やかな刺激に沈む肉厚なサバのやさしいカレー。
そのやさしさに浸っていると、底からレモンピール。これか。

赤色のポーク。
一口め。辛い、うん、辛み。
ほろほろの豚がゴロと器に詰まる嬉しさ。
肉の旨みがぎゅっとつまるオイリーなカレーがさっぱりと紫蘇で浄化されるバランス。
ピンクペッパーを嚙み潰すと爽やかな酸味が広がる。

どちらも深い。
カレーという食べ物の斜め上左を行くような、いい意味でスパイス然していないのに舌に広がるスパイス感にやり込められた。

うん、満足。

あちらのテーブルへドリップするコーヒーの薫りも良い。
頼めばよかったと後悔。

お待たせしてすいませんと声を掛けられるお会計。
どれもこれもすてきで虜になる心。

お店を出ると待つ人の列。
正解だったなと西とこを巡る。