高級ブティックが並ぶ通りに、突然と〝庶民風〟を醸し出すのが『ささもと』だ。渋い縄のれん、〝牛もつ〟と大書された暖簾……完全にこの銀座風情では畑違いだ。
店内は意外とセレブリティ……ということは全くなく、純・大衆酒場のそれである。
いささか拍子抜けでもあるが、ここは大いに大衆酒場を楽しもうと思うのだが、ここは
なんといっても銀座だ。ほんのちょっとだけ、リッチな気分でいつもとは違う『黒ビール』をいただく。
ゴクリと、じんわり舌に沁みる焙煎のコク。普段飲むことはないし、そもそも大衆酒場自体でも扱っていない。だからこそ、こんな街で飲むのがいい。
ささもと、といえば都内に何軒もの姉妹店があるが、共通して出す料理のひとつに『串煮込み』がある。汁ダクの皿に、串に刺さったモツ煮がなんとも珍しい。串から抜いて食べてみると、蕩けるような柔らかさがたまらない。
『キャベツ煮込み』も、串煮込み同様にたっぷりと汁を吸っており、キャベツの甘味が存分に引き立った逸品。そこへクーッと黒ビールを流し込めば、いつもと何一つ変わらない、庶民の酒場の時間があるのだ。
「ごちそうさまでした」
銀座で飲む黒ビール、ウマかったな……店を出てハッと気が付く。ここはセレブの街、銀座なのだと。でも、こんなセレブ街なら、またすぐにでも来ますとも。
取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)