角が無くなったコの字型のカウンターテーブル、酒で磨かれていいツヤを放つ四人掛けテーブル。そこで歴史を共にし、それを見ればその酒場の魅力が解るのが〝酒場のテーブル〟なのだ。

赤坂にある老舗町中華『珉珉』のテーブルもまた、名テーブルのひとつだ。店に入ってすぐの年季が入ったカウンターもいいが、店の奥の小上がりに並ぶ紅(あか)色のテーブルがとにかく必見。

吸い込まれてしまいそうな紅色はどこまでも深く、その肌触りはまるで上質な絹のよう。長きに渡り油で磨かれた表面からは独特の輝きが放たれ、それは宝石のように美しい

テーブルが目的であれば、もちろん料理もテーブルに合わせるのが流儀。ここの『焼き餃子』は、ムッチリと張り裂けんばかりの迫力ボディだ。

断面には挽肉とニラの餡が、ギュウギュウとひしめき合い、その合間を肉汁が伝う様子が背景の紅色テーブルとまた合う。

『青椒肉絲(チンジャオロース)』
こちらも、ピーマンの緑が紅色テーブルにドンピシャ! さらに、タケノコと豚肉の細切りが見事な色合いを見せてくれる。ザクッと箸を挿して、大きくすくって口いっぱいに入れる──ウマいっ!! そこへビールをキューッ……嗚呼、なんて幸せなんだと、またテーブルを撫でる。


酒場にあるテーブルは、ただ料理を置くだけのものではない。舌だけではなく、目にもおいしく楽しませてくれる、その酒場の魅力を知る上で必要不可欠なものなのだ。
さぁ今こそ、自分だけのお気に入りのテーブルを求めて、あの暖簾を引いてみてはいかがだろうか。