話は変わるが、〝湖〟というものはいい。とにかく〝心が洗われる〟のだ。水のある自然はどれもいいけれど、海と川が〝動〟であれば、湖は〝静〟だ。山々の緑と空を背に静寂の時間が流れ、湖面には優雅なボートが点在し、湖を囲む歩道では散策を楽しむ人々。海や川にはない、その独特な雰囲気が湖の魅力である。ぜひとも『散歩の達人』さんでも〝湖さんぽ特集〟をお願いします。
さて、なんだか世の中、暗いニュースが多いが……そんな時こそ、湖に行って心を洗おうじゃないかと『相模湖』までやってきたのである。私は車でしか来たことがなかったが、電車で来てみるとゆっくりした旅行気分で、都心からも約一時間と快適だ。
駅前のウエルカムゲートを潜り、ひたすらまっすぐに進むのみ。道しるべは必要ない、迷わず進めば広大な湖から迎えてくれるというもの。なんだか、かの有名プロレスラーの言葉に似ているが……ほら、見えてきた。
山々を映し出す湖には、スワンボートが本物の白鳥のように優雅に浮かび、釣り客らがのんびりと竿を出している。海の家ならぬ〝湖の家〟たちが湖畔に並び、店内では忘却の昭和ゲーム機が控えめに鳴らすBGMで客の懐古を待っているようだ。
いいなぁ……本当に心が穏やかになる。時刻は午前十時を回ったくらいだが、時間なんてどうでもよくなってくる。ただただ、この静寂の中に包まれていたいのだ……おや?
ふと目をやった湖の反対の国道沿いに、レストランがあるのを見つけた。なぜすぐにレストランと分かったかというと、とにかく〝レストラン〟だったからだ。
右から見てもレストラン、左から見てもレストラン。真ん中からなら、なおさらレストランだ。レストランの主張がこんなに強いレストランは初めてだ。こんなレストラン……入ってみるしかあり得ない!
おぉっ、これぞ心の中にある通りのレストランの店内! 広々とした店内に、温もりのあるテーブル。温かみのある照明が店内を優しく照らす。あとは何といってもレストラン特有の〝匂い〟だ。入った瞬間にお腹が減ってくるような、あの香りだ。さすがここは〝レストラン〟だ、それらを完璧に抑えている。
さぁ、注文といきましょう。
[その2]へつづく