茶餐廳の定番「パイナップルパン」

早朝便で香港に到着した私は、まず朝ご飯を探した。その時に出会ったのが「茶餐廳(チャーチャンテン)」と呼ばれる、ファミレスと喫茶店の中間のような形態のお店だった。朝早くから開いていて気兼ねなく入りやすい雰囲気だ。
大抵店員さんはせっかちで、ゆっくりオーダーを考えることは許されない。私は考える間も無く目に留まった「港式奶茶」(香港式ミルクティー)と「菠蘿油(ポーローパーウ)」、つまりパイナップルパンを注文した。それが初めての出会いだった。
パン上部の生地はサクサクで中はホクホク。見た目から言われているだけで、パイナップルは入っていない。要は日本のメロンパンの親戚のような代物だ。ただメロンパンより一まわり小さく、サクサク感が強い。そしてメロンパンとの最大の違いはなんといっても色んなものをサンドするところだろう。バターのみならず、チキンやチャーシュー・・・と挟むものも幅広い。
パイナップルパンの甘さは、しっかり煮出された香港式ミルクティーとの相性も良い。さらに茶餐廳ではパイナップルパンと麺のセットもあり、出前一丁のインスタント麺なんてものもあったりする。これまた塩味と甘味のバランスが素晴らしかった。

香港の町を歩いていると、日本以上の暑さと湿度ですぐに体力が限界を迎えてしまう。そんな時、冷房ギンギンの茶餐廳に駆け込み、パイナップルパンを頬張るだけで身体が軽くなっていく。“パイナップルパンは食べる点滴”と言えるだろう。

北千住での再会「香港工房 ホンコンパン屋」

北千住駅東口から歩いて2分ほど、商店街のレンガ調の建物に巨大パイナップルパンがへばりついていた。ついに見つけたパイナップルパン。高鳴る鼓動を抑え、冷静を装いながら店先のメニューを覗く。
まず、そのラインナップの多さに驚かされる。パイナップルパンだけでも、シンプルなものから、バターサンド、ピーナツジャムサンド、チーズサンド、チャーシュー入り・・・と5種類もあった。その他にもエッグタルトや月餅など、香港でよく見かけたお菓子もまた沢山売られていた。
私は、悩んだ挙句、シンプルなポーローパオとチャーシュー入りのポーローチャー、そして香港式ミルクティーを注文してみた。

店先の小さなテーブルで食べられるとのことだったので、腰を据えて早速実食。ポーローパオのサクサク感とその先の優しい甘さが懐かしい。そして濃いめのミルクティーが絡み合う。北千住を行き交う人達を見ながら香港の思い出が完璧に再現されていく。
そしてチャーシュー入りのポーローチャーは、甘さと肉の旨味が重なって複雑な味わいだ。日本人がまだ到達できていない甘じょっぱさの奥地に連れていかれたような気がした。

唯一、香港と違ったのは気温だった。当時、酷暑の疲れを癒してくれたパイナップルパンとミルクティーは、今回肌寒くなってきた秋風から身体を温めてくれたのだった。そうか、寒い時期でも最高なのか…。

きっと今はパイナップルパンブーム前夜。店先でゆっくり味わえるのは早く気付けた人の特権だろう。いち早く北千住で実食することをお勧めいたしたい。