世界で女性初エベレストの登山家が訓練した山

毎年、お互いに誕生日を祝う友達がいる。
昨年の4月も「誕生日はどこへ行きたい?」と聞いてくれた。

普段、山登りに縁がない私が希望した場所は、日和田山だった。

自宅から車で向かうこと20分ちょっと。
こんなに近いのに一度も登ったことがなく、大人になるまで山の名前すら知らなかった。

日和田山の登山口にある駐車場に停めると、石碑に目が止まった。

「日和田山からエベレストまで」

日和田山は、女性で世界初エベレストを登頂した登山家の田部井淳子さんが何度も訓練に励んだ山だと記されている。

初心者でも登れるという山に、世界のエベレストを目指す人が来ていたとは。
この山で足腰を鍛え、命懸けで登った登山家がいると思うと、神秘さが増すのであった。

日和田山の始まりは、とてもはなだらかな道が続いている。
前日に大雨が降っていたので、多少地面が濡れていたが、慎重に登り始めた。

10分後には険しい男岩・女岩にルートに別れ、私たちは、迷うことなく女岩で登ることを即決。

しかし、それでも決して楽勝とは言えない場面がいくつかあった。
スニーカーで行ったので、踏ん張れないことはないけど、これ以上レベルの高い岩を登るとなると不安があった。

「なるほど登山靴がこういう場面で必要なのか」と知る。

女岩を登りきり、もう金刀比羅神社の鳥居が見ていた。

振り返ると何度もネットで見ていた絶景が目の前に広がっていた。
ここまでの登頂時間たったの20分。

神聖で美しい、日高、飯能に続く街並みや山々を見渡し、「わぁ!」と声が出て、自然と口角が上がっていた。

思わず手を合わせて祈りたくなる。

なぜ、こんなに美しいのにもっと早くこなかったのだろう。

この後、数ヶ月後には全国で熊出没情報が...日和田山は出没していないかもしれないが、次はいつ登れるだろうか。

絶景を見た後は、さらに頂上へ。

灯篭がある見晴らしの丘でお昼ごはんにした。

日和田山に向かう途中のスーパーで、ビビンバ弁当を買い、食べるのを楽しみにしていた。

私たち以外には60代くらいのおばさんグループが2組が先に座ってお弁当を広げていた。
耳を澄ますと話題はもっぱら健康のことばかり。

私も実はこの頃、家族に病気が発覚し、ビビンバ丼を食べながら彼女に話を聞いてもらった。
一瞬、「え?!」とビックリしていたが、静かに聞いてくれる友達の存在は本当にありがたい。

青空の下で、味の濃い美味しいビビンバ丼を頬張り、お茶を飲んで、いろんな話をしているうちに「きっとこの先もなんとかなる」と思えたのも日和田山のおかげだ。

下りも慎重にゆっくり足を踏ん張って降りた。
こんな場所で怪我したら元も子もない。

そろそろスタート地点が見えて、辿り着こうとした瞬間、景色がガラッと変わったのだ。
キリシマツツジ?なのか、ピンクと白のツツジのような花がいくつも咲いて、つい見惚れてしまった。

行きは通らなかった山道で、ご褒美のような瞬間だった。

「天国みたい〜!」とスマホを取り出して撮影開始。

ところが気が緩んだのか、突然その場でズルッと滑り落ちた。

「ぎゃあ!」と小さく叫んで、その瞬間に履いていたジーンズが真っ黒に....あーあとちょっとで下山できたのに。

前日の雨で完全に道が渇ききっていなかったみたいだ。

でも、忘れられない誕生日になった。

そんな日和田山だが、あれから一年が経ち、また誕生日がやってくる。

今年はどこへ行こうかな。