遍照寺は成田山新勝寺(千葉県成田市)を本山として、その教えや宗派に従う末寺です。仏教寺院の組織には階層があり、「末寺」とは中心となる「本山」や「本寺」に属している小さなお寺のことなのだそう。

石畳を進んでいくと、商店街の喧騒が次第に遠ざかり、正面には本堂、右手には書院が建っています。まだできて日が浅いのか、書院に入るとほんのり木の香りが。正面にはテーブル席があり、低い位置に設けられた窓からは庭の緑が見えました。右手の小上がりには座敷席も用意されています。小さく音楽が流れ、柔らかな照明が心地いい空間を作っています。

靴を脱いで上がると、「心が落ち着く席を自由に選んでください。」と着物の女性が案内してくれました。お茶も自由に飲んでいいそうです。13時を少し過ぎたころに伺いましたが、先客が2人いたので、どちらも視界に入らない隅っこの座敷席を選択しました。

ガラスの文鎮に映りこんだ青紅葉がきれいでした。お手本の上に半紙がのせてあり、それを筆ペンでなぞっていきます。
結構な文字量だなと思いつつ、よしっと気合を入れてまずは一行。なんだかドキドキ。意外にうまくかけたぞ。二行目、来る途中に見たおにぎり屋さんが頭をよぎり文字がぐにゃる。いかん。三行目あたりから集中力が増してきてスピードアップ。疲れたら首を回したり、庭で揺れる葉っぱをみたりしながら、少しずつ筆を進めます。

余計な力が入っていたのか、最後の二行はいっぱいいっぱいになりながら、何とか書き上げました。ふぅと一息。充実の1時間でした。最後に2か所判子を押して、箱に納めます。後日お坊さんがお経をあげてくれるそうです。知らずに持って帰りそうになりました。

空調はやや涼しめなので、夏場は羽織ものを持っていくのがおすすめ。
それにしても、こんなに集中したのはいつぶりだろう。おなかすいた。

写経中に頭をよぎったおにぎり屋さん「板五米店~旅とお結び~」は遍照寺のおとなりさん。1914(大正3)年に建てられた木造×レンガの珍しい建物の1階にあります。2階ではたまにワークショップをやっているようです。

テイクアウト専門ですが、軒先のベンチで食べていくことができます。

明太チーズと迷った末にサバ味噌おにぎり(260円)を注文。ビニールから取り出してみると、あったかーい。ラベルを見ると材料名が、米、昆布、油、味噌、サバ、のりとシンプルなのも安心です。出来立てはすぐに食べねば。ベンチに座ってさっそく頂きます。

ほどよくほぐれるホカホカご飯と、上品な味のサバ味噌。あったかいおにぎりってこんなにおいしかったっけ。米一粒一粒の味をかみしめながら完食しました。もうコンビニおにぎりじゃ物足りなくなりそう。

静かな書院で心を整えあとの手作りおにぎり。心とおなかにやさしい余韻が残る、5月の午後でした。