しゃれた街なんかじゃない
この街に住み始めたのはおよそ11年前。
本当は、吉祥寺とか、高円寺とか、阿佐ヶ谷とか、石神井とか、ちょっと下って国立とか、そういう所に住みたかった。二子玉とか下北とか、ちょっとやらしいっていうか、 まあ、住めるわけがないですので、ちょっとそこからははずして、都内の会社に通勤しやすくて、そこらじゅうにいい感じの飲食店とかサブカル(死語)っぽいちっちゃい本屋とかあって、よくわからんしゃれた雑貨とか植物とか売ってる店がわんさかあるような街に住みたいな、なんて夢を見ていた。
でもいざ探してみたらそんな「ちょっと感じいいってみんなが思ってる街」なんて、人間が払える値段で、人間が複数住めるような家を売ってない。あれもこれもだめだめ高い、払えない、死んじゃう、なんて言いながら私鉄をどんどん下って下って、やっと人の住める(値段の家を売っている)街にたどり着いた。それがこの読売ランド前、川崎市多摩区および麻生区だった。
ここは本当に普通の街。あるのは駅にくっついてる小田急OXと、小さな商店街だけ。しゃれた店なんてひとつもない。本屋もない。雑貨もない。でも、意外に上品なお味のケーキ屋さんだとか、すごい小さいのに何でも売ってるスーパーとか、目の前で焙煎してくれる珈琲屋さんとか、出来立てのビーフジャーキーが食べられるお肉屋さんとかが点在していて、なかなかどうして、住み心地は悪くないのだ。
ご褒美は甘い。甘いはうまい。
小学校は若干遠い。しかも暑い。もおおお半袖着てくればよかったよおおおおと汗をぬぐいながら歩いて歩いて、目指すビルに到着する。
不動産屋に整骨院、動物病院。スナック。こんなビルに今年に入って突如登場した喫茶店。名を「SCENT」という。外から見たら全然わからない。営業している日は階段にちょこんと簡素な看板が出ている。
質素な看板。素朴なお店。内装はシンプルながらちゃんとおしゃれ(びびりなので撮影できなかった。今度喫茶を利用する時に撮ろうと思っている)。
お菓子もフランス菓子のようにカラフルではないしなんなら全部茶色い。堅実で優しい、けどそこはかとなくおしゃれなのである。インスタが可愛いから見て。
https://www.instagram.com/scentnonaoko/
今日の私が私へのご褒美として選んだのは、「パンドルージュ」。
この白いうすーいしゃくしゃくしたお砂糖をフォークで「さくっ」ってするのが小さな楽しみ。調べてみたら「グラスアロー」と呼ぶそうな。ネットによると、「粉糖、あるいはフォンダンを湯で溶いた半流動体のもの」。これ、おいしい。グラスアロー、おいしい。
生地はしっとりと身が詰まってる感じ。口に含むとアーモンドの香りがじゅわーっと。生地とグラスアローの間にうすーく敷かれたラズベリージャムが爽やかでございます。
ああ、せっかくだからおいしい珈琲豆を買うとか、なんならイートインで珈琲(「SCENT」さんは珈琲もおいしい)飲みながら食べれば良かった。
でも今日は、1人でこっそりひっそり食べたかったから、これでいい。
春が完全に終わる前にもう一回くらい食べようっと。
お菓子・喫茶 セント
〒2140037川崎市多摩区西生田4-3-29マイタウン西生田
小田急線読売ランド前駅南口から徒歩3分
11:00〜19:00 (LO18:30)火・水休み
www.scentnookashi.com