逆に、南千住に他の用事で行ったことはないです。

それくらい、その場所は私の日常経路とは近い場所にはないのですが、
行かずにはいられないのです。
その場所、それは、cafe Bach(カフェバッハ)。

友達と遊ぶ、デートをする(相手はいないが)、ショッピングを楽しむ、などで、
利用したことのなかった南千住駅。
お隣の北千住駅は電車やバスの乗り換えでよく利用したり、
時々買い物や友達と待ち合わせ。。。などをしたりもするのですが、
なかなかそのようなご縁がなく、南千住に行ったことがありませんでした。

ですが、珈琲の本を読んでいると、やれバッハ、やれバッハと、
よく目にするその店名。
しかも、珈琲の東京四天王ということなので、
いつかは行かねばという使命感(誰にも頼まれてない)に燃えていたのが数年前。

以来、時々足を運んでおりました。

しかしコロナ禍になり気づけば2年ぶり位に、珈琲のメッカ・バッハ(韻踏めてる)へ行ってまいりました。

駅を降り、昭和の風情の街並みを味わいつつ、
スカイツリーを前方に眺めつつ、ひたすら聖地を目指します。

この交差点あたりの「泪橋」という地名と、
レトロな街並みと路地と、
簡易宿泊所がたくさんあったり、
たくさんあった簡易宿泊所が減っていたり、綺麗になっていたりと、
このあたりを歩くだけでとても趣深いのですが、
ひたすらすら聖地を目指します。

あれ?道間違えたかな?と、不安に思った頃に聖地到着!

1人で巡礼(店に行く)すると、大抵アリーナ席へ案内してくださいます。
アリーナ席とは、珈琲を淹れるところを見られるカウンター席のことを勝手にそう呼んでいるのですが、この日もアリーナ。
しかもセンターやや左というナイスポジション。

ちょうどこの位置は、珈琲を挽く機械が置いてあって、
ドリップする店員さんが配置されてるので、
余すことなく、珈琲を淹れる一連の様子を見る事ができるのです。

豆を挽いて、パッとフィルターをドリッパーに置いて、お湯の温度を調節したり、
腰に手を当ててくるくるお湯を注いだり、その注ぐタイミングが意味ありげだったり、
アイスコーヒー用のグラスやクリームをカウンター外の店員さんが用意したり、
淹れ終わった珈琲を、サーバーの注ぎ口ではなくて横の縁からガーッと一気に注いだり。

腰に当てた手にも、お湯を注ぐ量やタイミングにも、サーバーの敢えて横から注ぐのにも、
きっと理由があるに違いあるまい。。。と、わかった人のように推察しながら見ているのがとても楽しいのです。


店内はいつも満席で、テイクアウトや豆だけ購入する方も待っている状況。
そんな中、私はアリーナのセンターへしずしずと通されるのですが、
こころの中では「やったー!アリーナだ!」と狂喜乱舞しています。

以前は喫煙可の店内が全面禁煙となって、それも煙草を吸わない私にはありがたいのですが、煙草を吸われる方は、さぞ残念だったことでしょう。

それはさておき、季節は夏。
暑い中、駅から歩いてきたので、まずはつい、アイス珈琲を注文してしまいます。

すると!
わざわざ豆を挽いてくださり、一杯ずつドリップして、氷の入ったグラスに注ぐ、
を、店員さんが実に見事な連携仕事で運んでくださいます。

サインも出さない、声も出さない、お互いの動きを見て次の仕事をして、ゴールへつないでいく全員野球(喫茶)は圧巻です。

トーストも頼んだのですが、珈琲ドリップ係の店員さんが、珈琲を淹れてる途中で何か、
トースト焼く係の店員さんに言葉を発していました。焼くタイミング的なことだと思います。

トーストは、バタートースト、ジャムトースト、両方、と3種類の中から選べるのですが、
私はもちろん両方。
当たり前じゃないですか、両方楽しみたいじゃないですかと、
心の中で一人、メニューと会話しています。

両方とは、
イギリスパンが6等分にカットされていて、全体にバターが塗られていて、
真ん中の列の上に、ベリーのジャムが塗られています。

カリッとサクッとトーストされたイギリスパンは、
フワッともしているがしっかりとした生地でもあり、
理想的じゃないか!と、ココロ荒ぶります。

まずは余裕でバターのみで食べ、
次も余裕でバターのみで食べ、
次は我慢できずにジャムの部分をいただきます。

気になる転校生を遠巻きに眺めつつも、
こらえきれずに一気に話しかけてしまう、
そんなかんじです。

トーストが6等分にカットされているので、
バターとジャム部の食べ進み方のペース配分をさほど気にすることなく、
こころに余裕を持って食べ進めることができるのがありがたいです。

塩と胡椒のミルが添えられてくるのですが、
私の我慢がいつも足りなくて、
ジャムとバターのみで完食してしまいます。

今度は勇気を出して、トーストお代わりしてみようかな。といつも思います。

肝心の珈琲ですが、
薫りも奥行きも味わいも、別格!
なのです。
うまく言葉にできないのですが、別格です。

アイス珈琲も、ガムシロップとクリームを入れるタイミングを逃すのですが、
泣く泣く今回は入れてみました。
泣く泣く、というのは、そのまま飲み干したいところを、
味変も楽しみたい、ということで、
入れてみたのでした。

これは、これも、美味しいのです。


一気に、これらを胃の腑におさめたところで、
シメのバッハブレンドをホットで注文。

満たされた口と胃の腑に迎え酒ならぬ迎え珈琲は必須で、
また一連の珈琲の淹れられる様子を眺めて小休止。

運ばれてきたバッハブレンドを味わいながら、
なんて良い日なのだろう・・・と、
しあわせに満たされるのでした。

1日は24時間ありますが、そのうちの23時間に大変なことがあったとしても、
このバッハ珈琲一杯とこのひと時があれば、
大変な23時間は帳消しとなって、
「なんて良い日なんだ!」と、しあわせな1日になるのです。

満たされた心持ちの帰り道、
路地をキョロキョロ眺めつつ、
この路地の先も今度は散歩してみたいなぁと、
ふらふら眺めたり立ち止まったりしながら、駅へと向かうのでした。