今回のゴー!ゴー!
『スーパーさかい』(青森県鰺ヶ沢町)
店主の葛西姫子さんが夫の民三(みんぞう)さんと切り盛りする、『スーパーかさい』。店先の「名物・笹餅」と「やきそば」の幟が強い潮風に、はためいています。
北を日本海、南は白神山地に隣接する、町の面積のおよそ8割が山林という青森県鯵ヶ沢町にあるスーパー。人口約8500人の半数が高齢者のため、地元客が減少の一途をたどります。
一方で地元テレビや動画サイトで紹介され、国内外からもファンを呼ぶ人気店に。姫子さんが早朝から手作りしているたくさんのお総菜と津軽弁トークが名物です。
「姫子って名前は父が名づけだが、母は“60歳すぎで姫子ってどうするのっ!”て怒ったんだよぉ。でも、かわいがったんだろうな」と独特な語り口に、みな惹きつけられてしまいます。
66年前、農家だった両親が現在の場所で小さな食料品店を開業。当時は人口2万人以上、陸奥(むつ)赤石駅から徒歩3分の好立地と、商売を始めてすぐに大繁盛。店も拡張しスーパーになりました。
創業時3歳だった跡取り娘の姫子さんは「蝶よ花よ」と育てられ、20歳でお見合い結婚。子育ては両親の助けを得て、商売に邁進した半生です。
年々人口の減る町での商売は楽ではなく、総菜に使う野菜は自宅で育て、低価格に抑えます。名物の笹餅も夏のうちに笹を山に採りに行き、1年分を冷凍保存。
さらに人気商品「焼そば」は、牛肉使用なのに破格の値段。年金暮らしの高齢者を案じた価格設定ですが、誕生のきっかけはちょっとした失敗から。
「テレビの取材が来だのに豚肉ねくてぇ。仕方なく牛肉を使ったら、それ以来お客さんが病みつきになってぇ」と説明。この経験から得た法則は「失敗や間違いからヒット商品は生まれる」だそう。
こんな元気が出る金言集で来店客を楽しませ、来られない高齢者の家へは商品一つから配達料なしで届け、話し相手になる姫子さん。『スーパーかさい』は地域を見守り、世界から注目される存在なのです。
手作り総菜人気ランキング
すべて姫子さんの手作り。青森の郷土の味から『かさい』オリジナルの味まで、安くてたっぷりの人気商品ぞろい。『まんが日本昔ばなし』に登場しそうなおかず、最高です。
地元と『かさい』名物共演!
地元の常連さんも納得の、青森の定番ご当地食もしっかり網羅。さらに手作りバッグや服は、鯵ヶ沢町で集めた不要な布を再利用した同店のオリジナル品です。
「『かさい』の配達」に注目!
午後は自ら運転して注文品を配達。連絡がしばらくない常連さんの様子を確認することも。玄関先の雪かきができない家のために、冬は車にスコップをのせて走る。名所「千畳敷海岸」の雄大な景観は姫子さんの元気の素。
取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2025年12月号より







