今回のゴー!ゴー!
『フレッシュフーズオオキタ ポルト牟岐店』(徳島県牟岐町)
徳島市内から車で南に2時間、いくつもの長いトンネルをくぐった先の牟岐町にある『フレッシュフーズオオキタ ポルト牟岐店』。山の中のご当地スーパーと勘違いしそうですが、海に面した港町・牟岐の駅前です。
『オオキタ』の先代社長・大喜田由広(おおきたよしひろ)さんら、町の商店で共同出資して設立したという、町唯一の『ショッピングセンター ポルト牟岐』の中核をなすこの店。人口3700人足らずの静かな町の主要食料スーパーには、いつでも買い物客の姿があります。
ただ、過疎の進むほかの地域と同様に、牟岐町近隣が抱える悩みは「買い物難民」問題。断崖絶壁の海岸線が続くエリアなだけに、年配者が自分で車を運転して買い物に行くのが難しい。そこで“移動スーパー”として知られる徳島発祥の「とくし丸」を導入し、「スーパーが家のすぐ近くに来てくれる」と喜ばれていたのです。
「明日から二人で『とくし丸』で回ります」と真新しい「とくし丸」を見せてくれた池田美香社長と福山昭仁常務。実は「とくし丸」の運営は個人事業主。前事業主が車の故障を機に廃業したため、みずから、商品を待つ地域に商品を届けることになったとか。
大変な状況なのに、穏やかな笑顔の『オオキタ』の2トップ。やわらかな物腰の池田社長ですが、先代社長の娘として生まれ、高校時代から家業を手伝ってきた筋金入りの商売人なのです。
店もそんな社長の醸すやさしい空気が漂う空間です。多くのナショナルブランドも並びますが、目に入るのは地元の味。総菜、弁当売り場の地域を代表する味「ボーゼの姿寿司」が目を引きます。むかしはどこの家でも作られていたものを商品化。毎日、社長のお母さんが手づくりしている『オオキタ』の味です。
そして、いずれの寿司も隠れた主役は「ゆうのす」と呼ばれるユズ果汁。そんな地元ならではの味や定番商品で満杯にして、『オオキタ』のとくし丸は今日も、海の近くの山道を走っています。
オオキタ手づくり。郷土の味わい
魚売り場に並ぶ新鮮な魚介も魅力ですが、恵まれた海の幸を手間隙かけてハレの日のごちそうにしてきた、海の町の知恵たっぷりの地元の味が滋味深い。地元産の素材を生かした新しい味も。
徳島と牟岐町、地元の定番品
牟岐町だけでなく、徳島全域で愛される県民食も多くそろいます。インパクトある商品を選びだしたら、海にまつわるものばかりに。でも、そのバリエーションは豊富で、いずれも名品です。
「ゆうのす」の棚に注目!
牟岐町も属する海部郡は、種から育てられ15年以上の樹齢のユズ「実生(みしょう)ゆず」の栽培地。その香りと風味は一般的な接木栽培のものより優れているとされる。ユズ果汁100%の「ゆうのす」(ゆず酢)を酢飯、焼き魚、飲料などに多用する。
『フレッシュフーズオオキタ ポルト牟岐店』の詳細
取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2024年3月号より