今回のゴー!ゴー!
『八百津松茸市場「後藤食品」』(岐阜県八百津市)
地元商品を扱い、野菜も大量販売で格安と、近隣の住民にとって、毎日の生活になくてはならない店。一方で遠方からも、観光客が名物を目指してやってくる個性派スーパー、それが岐阜県八百津町にある『八百津松茸市場「後藤食品」』です。
店の前の国道418号を進んだ先は、いわゆる“酷道”として有名で、名古屋方面から来て恵那方面に抜ける道は、車のナビで表示されなくなります。つまり、どこかに行く途中で偶然見つけるのではなく、わざわざこの店を目指してやってこないと辿り着けない、辺境の店。
入るとまず、半露天な市場のエリアが広がります。ほぼ無人で自由な箱陳列のため、どこに何があるのか把握するのに、しばらく探検の時間が必要です。
季節の野菜が箱ごとや山盛りで置かれているだけでなく、昭和なユーズド食器などの雑貨も無造作に置かれている、魔境感あるエリア。ハマると夢中になるけど、ハマらない人には一個もハマらない、ディープな魔力を秘めたお店です。
続く建物の入口を開けると、シーズン中なら、松茸の香りのシャワーを浴びることになるでしょう。見たことのない量の松茸がびっしり。地元・八百津周辺のものが一番人気。近隣の産地や海外からも入荷しているので、予算や好みに合わせて選べます。
ただ、ここ数年は夏の酷暑のせいで不作が続いているため、今年の出来はまだわからないと、社長の後藤靖武さん(87歳)も心配中。
さて、本当の魅力はここからです。
山のごちそう素材のヘボ、鮎、松茸を惜しげもなく使った、自家製おかずがお宝級。さらに山の中とは思えない鮮魚にもびっくり。
現在、店を切り盛りするのは社長の息子夫婦・英昭さんとさちこさん。腕のいいベテランスタッフと一緒に作る名物は、秋においしいものばかり。ヘボめし、鮎の甘露煮、松茸ご飯!
地元で大事にされてきたご当地の味、わざわざ買いに行く価値ありなのです。
知る人ぞ知る八百津の名物
八百津町は木曽川と飛騨川が流れ、面積の8割が森林という自然豊かで静かな町。農業のほか、川の流れを利用した酒、味噌、醤油、酢などの醸造業が発達。戦後は「八百津煎餅」で知られるようになりました。
山のごちそう! 自家製おかず
店がにぎわうのは、春と秋。特に実りの季節には、秋だけの自家製商品が並びます。その「山のごちそう」を目当てに、遠方からやってくるファンも多いのです。
市場エリアの「生ヘボ」に注目!
蜂の子「ヘボ」は秋の味覚。10~11月、ヘボ名人たちがクロスズメバチのヘボを巣ごと持ち込む「生ヘボ」と出会えたらラッキー。「生はちょっと……」という人には、店の看板商品・自家製「ヘボめし」がおすすめ!
取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2024年11月号より







