今回のゴー!ゴー!

『Bハイマート』(和歌山県新宮市)

2022年夏、業界最大級のお弁当コンクールにエントリーするため、商品を考える集団がいました。和歌山県新宮市、太平洋に面した自然豊かな町のスーパー『Bハイマート』を運営する企業、ハイマートの料理人たちです。

実はこの会社にとって初出品。締め切り2カ月前からの急ごしらえの応募でしたが、なんと、ハイマートオリジナルの「熊野産あまごのオイル煮(コンフィ)きゅうりのサルサ弁当」は、「お弁当・お惣菜大賞2023」で優秀賞を獲得!

地元産素材のアマゴを頭からまるごと使うアイデアと、フレンチの調理法を採用したメニューは高評価を得て、和歌山の小さなスーパーの名は、日本中に知られることとなったのです。

こぢんまりとした店内左側が弁当惣菜コーナー。外食事業とスーパー事業を融合させ評価を上げた、和洋中の料理人が開発する人気弁当が並ぶ。
こぢんまりとした店内左側が弁当惣菜コーナー。外食事業とスーパー事業を融合させ評価を上げた、和洋中の料理人が開発する人気弁当が並ぶ。

なぜ短期間で、そんなオリジナリティーあふれるメニューを開発できたのか?

同社は神﨑竜司社長の家業、古城寿司(現・和の食彩 古城)からスタートした、もとは外食事業の企業。神﨑社長が東京で服飾関係の仕事をしていた2002年、実家の寿司店が火事に遭ったことで、不本意ながら帰郷します。

寿司店を立て直し、「もっと事業を大きく!」と考えているなかで出会ったのは、和歌山市で一番はやっているイタリアンの店でした。寿司店の休業日に車で3時間かけて週1回の修業に出かけ、ピザ専門店を開店。

その経験が、令和5年度プレミア和歌山(和歌山県優良県産品推奨制度)にも認定された「熊野ピッツァ」の開発につながっています。

社長の神﨑竜司さん。「日により弁当が異なるので、電話でご確認ください」。
社長の神﨑竜司さん。「日により弁当が異なるので、電話でご確認ください」。

2019年以降、スーパーマーケット業界に参入。コロナ禍で外食産業が落ち込むなか、『Bハイマート』ほか複数の店舗を構え、住民の生活を支えました。

同社の歴史には飲食店や食品製造業も含まれるため、スーパーと連携して、和洋中のプロのシェフが地元食材を使い、その腕を振るえる環境が整っていました。だからこそできた、初出品での優秀賞受賞。その後も毎年、連続受賞を果たし、その評価はさらに確実なものになっています。

売り切れ御免! 個性派の自家製弁当や総菜、近隣の貴重な地元食は数量限定だ。
売り切れ御免! 個性派の自家製弁当や総菜、近隣の貴重な地元食は数量限定だ。
南紀珍味「うつぼ揚煮」を肴に、熊野の米と水で造る純米酒「太平洋」で乾杯!
南紀珍味「うつぼ揚煮」を肴に、熊野の米と水で造る純米酒「太平洋」で乾杯!
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『Bハイマート』光る地元素材

地元素材を生かしたオリジナル弁当を開発。むかしながらの味だけでなく、新感覚な商品も評価が高い理由は、最後のひと振りのスパイスが「地元愛」だからなのかもしれません。※弁当の販売は週替わりのため、要確認。

令和5年度プレミア和歌山にも認定された「熊野しらすと大葉ジェノベーゼのオリジナル熊野ピッツァ」。冷凍で販売し全国へも発送。
令和5年度プレミア和歌山にも認定された「熊野しらすと大葉ジェノベーゼのオリジナル熊野ピッツァ」。冷凍で販売し全国へも発送。
「とりみそ二色丼★」は新宮醤油醸造の「ときわみそ」を使った2種の鶏肉丼。
「とりみそ二色丼★」は新宮醤油醸造の「ときわみそ」を使った2種の鶏肉丼。
「熊野産あまごのオイル煮(コンフィ)きゅうりのサルサ弁当★」と「めはりさんま寿司★」。
「熊野産あまごのオイル煮(コンフィ)きゅうりのサルサ弁当★」と「めはりさんま寿司★」。
「ときわみそ」をベースにした韓国風ダレにサバを漬け込んで煮た、『Bハイマート』自家製弁当「ときわみそ香る!彩り豊かなさばの味噌煮弁当★」。「熊野の豊かな食材をお弁当箱に詰め込みました!」と惣菜主任の打越美香さん 。
「ときわみそ」をベースにした韓国風ダレにサバを漬け込んで煮た、『Bハイマート』自家製弁当「ときわみそ香る!彩り豊かなさばの味噌煮弁当★」。「熊野の豊かな食材をお弁当箱に詰め込みました!」と惣菜主任の打越美香さん 。

★がついたお弁当はすべて「お弁当・お惣菜大賞」の受賞作品。

未来に伝える熊野のご当地食

和歌山県南部と三重県南部を合わせた地域「熊野」。世界文化遺産の熊野古道に熊野三山など、自然と文化に抱かれたエリアです。先人たちが残した食の遺産も未来に伝えましょう。

「あやこさんが作った なれ寿し」(右)と「あやこさんが作った さんま寿し」。酢を使わずにご飯と魚を発酵させて酸味を醸す、古来のすし「なれずし」と現代の「押しずし」の食べ比べを。
「あやこさんが作った なれ寿し」(右)と「あやこさんが作った さんま寿し」。酢を使わずにご飯と魚を発酵させて酸味を醸す、古来のすし「なれずし」と現代の「押しずし」の食べ比べを。
最新の人気弁当情報を! 地元の老舗フレンチレストラン『イル・ド・フランス』が作る「イルド弁当」。
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右から。本宮(ほんぐう)産「ほうじ釜茶」、じゃばら果汁入り「北山村のじゃばらウォーター」、近くのベーカリー『フォレスト』の「クッペパン」。
右から。本宮(ほんぐう)産「ほうじ釜茶」、じゃばら果汁入り「北山村のじゃばらウォーター」、近くのベーカリー『フォレスト』の「クッペパン」。
「熊野市産さんま丸干し」は、冬に脂が落ちやせたサンマをまるごと寒風に干して作る熊野名物。
「熊野市産さんま丸干し」は、冬に脂が落ちやせたサンマをまるごと寒風に干して作る熊野名物。

「地元の調味料」に注目!

日本の醬油発祥の地とされる和歌山は、むかしから醸造業が盛んです。「紀州の味 ぽん酢しょうゆ」「 丸大豆しょうゆ 那智のほまれ」「 丸正(まるしょう)酢」は、いずれもこだわりの製法の地元の味。地物の魚料理に合わせてどうぞ。

取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2025年6月号より